表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/84

第40話 セララ・エン・メルサ

 黒薔薇の街は、徐々に豊かになっていった。


 そんな中、ダークエルフたちが、自治区の返上を申し出たのには驚かされた。


 ダークエルフ自治区の長だったファメロン=カルカトスが言う。


「オルセリオン様。この街の皆様は、私たちのことを受け入れてくださいました。もはや、疑う余地などございません。それなのに、私たちが自治区を維持し、皆様のことを拒絶するのは違うということになりました」


 オルセリオンが、それを受け入れて


「ありがたいです。では具体的に、どのように解放を進めますか?」


「これから私どもは、自力で街の不動産物件を購入したり、借りたりしていくつもりです。無償で自治区にいられるのを2年後までとし、その後、自治区の不動産はサリオンドレル家にお返しします」


「森を開拓して、そちらに住居を建設するという手もありますよ?」


「いえ、それではまた、ダークエルフだけで固まってしまうでしょう。街の人々の中に、私たちも溶け込んで行きたいのです。もちろん、開拓するケースもあるでしょうが」


「なるほど、わかりました。溶け込むのでしたら、一つ、提案があります」


「なんでしょう?」


「ダークエルフの皆様も、スープ・パスタ選手権に出てもらいたいのです」



 黒薔薇の街には、幸せな空気が立ち込めるようになった。それに呼応し、死霊は現世への未練を断ち、その数を減らしていった。特に、死霊たちの成仏を加速させたのは、スープ・パスタの存在だった。


 黒薔薇の街では、何故か、レストランというレストランがスープ・パスタの味を競い合い、いつしか街の名物になっていた。メリシエルも、エルシアナに連れられて、スープ・パスタを食べた。


「なにこれ? え? なんなの? エルシアナ姉さん。こんなに美味しいものって、他にある?」


「ね、メリシエル。いった通りでしょ? もっとお姉ちゃんのこと、信じなさいよ」


 領主の婚約者、斬橋のメリシエル=サリオンドレルが、こうしてスープ・パスタにハマった。それが大きかったのかもしれない。


 それから、メリシエルを審査員としたスープ・パスタ選手権が何度も開催された。これが、街の賑わいを絶頂まで高めていく。


 しかし死霊たちは、食事ができない。死霊たちは、動植物から「味のしない精気」を吸って暮らしている。でも、死霊だってスープ・パスタを食べてみたい。


「死んでる場合じゃない!」という掛け声と共に、死霊たちは次々と冥府へと帰り、強く再生を願った。


『サリオンドレル家に使えしもの。永遠なる黒薔薇の民(ノワリエン)の誇りとともに、ここに眠る』


 黒薔薇の民たちは、街の中央に立つこの石碑を大切に磨き、周囲を黒薔薇で囲んだ。それから。それぞれがお気に入りのスープ・パスタを、一口分だけコップに入れて捧げる風習が生まれた。


 スープ・パスタが捧げられる時は、必ず、古代エルフ語で次のような祈りの言葉が添えられる。


「セララ・エン・メルサ(一緒に食べましょう)」


 この街の歴史に疎い観光客には、おかしな風習かもしれない。だが、黒薔薇の街の住民の間では、今も大切な文化として続いている。


 今では全世界に広がるスープ・パスタの巨大チェーン「セララ・エン・メルサ」の名は、共に街の未来を築いた死霊たちへの感謝をその背景としている。


 かつて、ダークエルフ自治区の長だったファメロン=カルカトスこそ、この巨大チェーンの創業者である。



第40話でした。ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


少しでも、読めるところがあったなら、是非とも☆評価をお願いしたいです。執筆の励みになると同時に、明日もまた頑張っていこうという気持ちになります。


さて。


スープ・パスタ。要するにラーメンです。なお、メリシエルはコッテリ系が好き。のちに、独特というレベルを超えたコッテリ系のスープ・パスタは「魔王系」と呼ばれ、「セララ・エン・メルサ」とは別の形で世界に広がることになります。でもそれはまた、別のお話。


引き続き、よろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ