第37話 エルシアナの運命
以前、オルセリオンは、グランディエル家の禁書庫で奇妙な体験をしていた。(16話)
魔法の属性に関する、複数の禁書。「線対称属性」への適正を同時に示すこと関する項目。「火と水」「土と風」のページはある。しかし「光と闇」への同時適性に関するページだけが、全て、切り取られていた。
さらに光と闇への同時適性に関するページは、禁書庫の中で切り取られ、持ち去られている。おそらくは、王命により、光と闇の同時適性に関する事実が隠されてきた。
そして。
国王からアレクサンドラに託された大量の文書。オルセリオンへの「エルシアナ=ゼルドレルを監視せよ」との王命。全てがつながりそうな予感がする。
大量の文書は、やはり、世界中から集められた光と闇の同時適性に関する記述ばかりだった。どれも、どこかの本から切り取られたものだ。
これら文書の内容は、こうだ。
光と闇の同時適性を持つ者だけが、超位階梯魔法「絶対神の鉄槌(ヴァラル=セラエ)」を使用できる。この魔法は、敵味方を超えて、この世界そのものを終わらせる魔法である。
光と闇の2主属性持ちが現れるのは、絶対神が、世界のあり方に天威している(怒りを感じている)証拠である。つまり絶対神が、世界が終わりを望んでいることを示す。
ただ、この魔法の習得にはかなりの時間を要する。なので、光と闇の2主属性持ちは、エルフまたはダークエルフにしか現れない。
——エルシアナは、絶対神からこの世界を終わらせるために遣わされていた。
光と闇の2主属性持ちを殺害したら、終わりを止められるのか。止められない。そうすれば、倍の数の2主属性持ちが誕生するのだという。
そもそもエルフやダークエルフは、異種族との交流を嫌い、ひっそりと暮らしていることが多い。そのため、光と闇の2主属性持ちがいること自体、把握するのは困難である。
ただし。光と闇の2主属性持ちが現れたからといって、世界は必ず終わる訳でもないようだ。2主属性持ち本人の意思。それから世界の状況によっては、絶対神の鉄槌は発動されないとのこと。
とはいえ過去には、少なくとも2度、絶対神の鉄槌が顕現したことがあるのだという。一番近い過去で、2.4万年前。地中深くには、今もその時代の遺跡があるらしい。
2.4万年前。世界は終わった。しかしどうして今はまた、こうして世界が存在するのか。絶対神の鉄槌が顕現すると、全ての輪廻は一度、破壊され「ソース」と呼ばれる一塊になる。
絶対神は、ソースを細かくちぎり、それに受肉させ、新たな世界に遣わすのだという。
——なんという運命。一人の少女に、そんな運命、背負えるのか。
オルセリオンは、まず、アレクサンドラに相談した。この事実を知ったアレクサンドラは、迷わず、この事実をエルシアナに伝えるべきと判断する。
新しい黒薔薇城、食堂での夕食の席だった。
「エルシアナ=ゼルドレル=セリオンドレル。お話があります」
エルシアナは頬を赤らめて
「はい。なんでしょう。アレクサンドラ様、なんだか固いですね。それと、セリオンドレルって言われると、なんだか照れ臭いです」
「あなたは、私の娘です。なので、アレクサンドラ様というのは、おやめなさい」
「はい。お、お母様。でも、私の方がずっと年上——」
「これから、とても重要な話があります。オルセリオン=サリオンドレル。お願いします」
オルセリオンは、これまでの経緯も含めて、全て、つつみ隠さず伝えた。
エルシアナは、あまり驚いていないようだ。実際にエルシアナは、これに笑顔で切り返した。
「なるほどね。それで、先生方が色々と秘密ってことにしたんだね。でも、私なら大丈夫よ。『絶対神の鉄槌』を使う理由、ないし。それに、そんなハイレベルな魔法……。使えるようになるまで、2,000年くらいはかかりそう」
オルセリオンは、さらに、自分が王からエルシアナの監視を命じられていることも話した。
「そういうわけなんだ、エルシアナ姉さん。でも、気にしないで。陛下は監視を命じただけ。報告しろとまでは言ってない。陛下らしいご配慮があるんだよ」
エルシアナは、平気そうだ。
「ううん。大丈夫よ、オルセリオンさ……オ、オルセリオン。私なら、大丈夫だから」
第4章の始まりです。第37話までお読みいただきました。ありがとうございます。
少しでも、読めるところがあったなら、是非とも☆評価をお願いしたいです。執筆の励みになると同時に、明日もまた頑張っていこうという気持ちになります。
さて。
エルシアナの運命が明かされました。すぐにどうこうという訳ではなさそうです。それでも、重たい運命ですね。でも運命だからといって、それに従う必要はありません。これから、エルシアナが時間をかけて考えていくことなのでしょう。
引き続き、よろしくお願い致します。




