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第36話 黒薔薇の民の誇り

 ヴァルディス王国のはるか北方に、不浄の森と呼ばれる場所がある。


 そこには、960年前に実在したとされる「魔王」の廃城が残されていた。廃城下には、かつては栄えていたであろう街も、廃墟としてある。


 サリオンドレル家は、ここを新たな「家」として整備していた。


 廃城と廃墟には、当然のように、多数の死霊がいた。主人を失っていた死霊たちにとって、メリシエルとアレクサンドラは、大いなる希望と誇りになった。


「魔王様!」


 死霊の一人が、思わず、メリシエルにそう話しかけた。


 メリシエルは、それに笑って返す。


「私は、魔王じゃないよ。サリオンドレル家の当主になるのは、オルセリオン様だし。私は、オルセリオン様の妻になるの。だから私たちのこと、魔王とかじゃなくて、ちゃんと名前で呼んでね。名は神を宿すんだから、注意しないと」


 メリシエルは、死霊たちを使役していない。しかし死霊たちは、サリオンドレル家を尊敬し、共にありたいと願った。



 そうして、サリオンドレル家が不浄の森にやってきて半年が過ぎた。


 春。不浄の森と呼ぶにはどうかと思えるほど、麗らかな日。


 廃城は十分に補修され、城下街も人が住めるような感じになってきた。


 エルシアナはそんな城内を見て感心し、


「うわぁ、すごい。しかも綺麗。このお城、かなり大きいね。みんなの部屋は、近くにしようね。じゃないと寂しい気持ちになりそう」


 メリシエルは、少し悲しそうに言う。


「エルシアナ姉さんと一緒に寝られるのも、あと数ヶ月なんだね……」


 エルシアナは、感慨深そうにして返す。


「もうすぐ、メリシエルも15歳だもんね。いよいよ結婚だ。早く赤ちゃんに会いたいな」


 真っ赤になるメリシエル。つい忘れそうになるが、メリシエルは人間だ。


 もうすぐメリシエルは15歳。オルセリオン18歳。エルシアナ約150歳となる。


 エルシアナは、しかし、人間で言うと12歳程度にしか見えない。三人で一緒に育ったはずなのに。まるで、大きくなったメリシエルとオルセリオンの妹のよう。


 エルシアナは、それを気にしている。だから周囲は、その話題には決して触れない。ダークエルフのエルシアナは、いずれ、こうして愛する家族に先立たれていく。


 エルシアナは、いつか必ず訪れるその離別の悲しみを、少しも想像したくない。だから、自分だけが成長に置いていかれることを、認識したくない。


 そうしたわけで、エルシアナは病的に鏡が嫌いなのである。



 使用人エリックとパトリシアは、多くの部下を得て、またそこらじゅうを黒薔薇で満たしていた。


 新しい黒薔薇城(カルナ=ノワリエル)、そして黒薔薇の街(ヴァレン=ノワリエル)。そこに暮らす人々は、自分たちのことを黒薔薇の民(ノワリエン)と呼ぶようになった。


 黒薔薇城と黒薔薇の街が整った頃。満足したのか、いくつかの死霊が輪廻へと帰って行った。


 メリシエルは、そんな死霊たちに、こんな言葉を送っている。


「みんな、ありがとう。どうか、安らかに。次の生も、よかったらここにきてね」


 街の中央には、いつの間にか死霊たちによって石碑が作られていた。


 そこには、今もこう刻まれている。


『サリオンドレル家に使えしもの。永遠なる黒薔薇の民(ノワリエン)の誇りとともに、ここに眠る』



第36話。第3章が終了しました。これから第4章に突入です。まずは、ここまでお読みいただき、ありがとうございました。これからも、お楽しみいただけたら幸いです。


少しでも、読めるところがあったなら、是非とも☆評価をお願いしたいです。執筆の励みになると同時に、明日もまた頑張っていこうという気持ちになります。


さて。


魔王ではなく、サリオンドレルであること。名に神が宿る世界のことです。ここは譲れないでしょう。同時に今後は、魔王として恐れられることを利用します。しかし、名前を安易に利用しても大丈夫なのでしょうか。手段として、割り切っても良いものでしょうか。


引き続き、よろしくお願い致します。

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