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第34話 古い戦争の終わり

 日が傾きかけた、ある春の日。


 サーレ=サリエン王国軍、総勢8,000の兵が、ヴァルディス王国の西方10kmのところに布陣していた。それを、サリエン第一王子が率いている。


 先方の要求は、関税の完全撤廃と特定スパイスの麻薬認定の解除。第一王子が率い、通るはずのない要求をしている。戦って勝つ自信があるのだろう。


 オルセリオンは、国王も参加する軍議で、思い切った発言をする。


「先鋒として、我々サリオンドレルを出していただきたい。我々だけで、8,000を駆逐します」


 国王が、流石にそれはと口を挟む。国王の話を遮るオルセリオン。


「時代が変わります。その象徴として、この戦を歴史に残したいのです。軍事力など、無力だと示します。もちろん、我々がしくじる前提で、後軍の準備はお願いします」


 軍議が荒れる。決断の問題になる。


「ヴァルディス王国、国王オルフェリウス=ヴァルディスが命ずる。やってみよ。未来の可能性を見てみたい。後方から、拝見させてもらおう」


 サーレ=サリエン王国軍は、加護キャンセラーを8個も準備していた。メリシエルを無力化できれば、侵略の第一波としては成功だと考えていたのだ。


 そしてメリシエルの無力化が成った暁には、南北からサーレ=サリエン同盟軍が、ヴァルディス王国への侵略に加わる算段だった。


 夕刻。


 そんなサーレ=サリエン王国8,000の兵前に、少年と少女、オルセリオンとエルシアナ(本当は+霊体2)が歩いてくる。最初は、誰もが使者だと思っていた。


 しかし、オルセリオンが叫ぶ。


「宣戦布告、確かに受け取りました! それでは、始めましょうか!」


 サーレ=サリエン王国の兵たちは、状況がよく理解できない。兵たちは、お互いに顔を見合わせている。


 エルシアナは、すでに加護キャンセラーを発動していた。アレクサンドラとパトリシアは、ずっと前から「死の予告(セレン=モール)」の呪いを乱発している。


 死の予告は、一部のアンデッドだけが使える呪いである。呪いは祝福の一種で、加護とは無関係。魔法ではない。相手を即死させる強力な呪いではあるが、成功確率は0.3〜2%程度とされる。


 滅多に当たらない。しかし何度も唱えれば、どうか。今回は、パトリシアによる28回目の詠唱が、敵の第一王子を即死させた。


 本当は、この時点で戦は終わっていた。


 敵軍は、加護キャンセラーの効果によって、攻撃魔法はもちろん、防衛魔法も使えない。防衛魔法の効いていない前線が、オルセリオンの大剣によって破壊されていく。


 メリシエルは、望遠から生活階梯魔法の「洗濯」で攻撃する。エルシアナはオルセリオンに防衛魔法をかけた後、攻撃魔法を連射していた。


 敵軍はさらに、治癒魔法や浄化魔法も使えない。


「エリック叔父様。こっちは大丈夫みたいだから、前線に向かって」


「お嬢様。かしこまりました」


 逃げまとう敵軍。


 その中でも馬に乗った偉そうな人物に、物理攻撃の通らないアレクサンドラとパトリシアによる死の予告が容赦無く降り注ぐ。なかなか当たらないが、時間の問題で必ず当たる。


 遅れて前線に加わったエリックが、精神攻撃の呪いで、敵軍に「恐怖」と「混乱」を与えていく。逃げようとして、同士討ちを始める敵軍。


 アレクサンドラ、パトリシアとエリックの呪いの効果は、強力なネクロマンサーによって底上げされている。さらに尽きることのない精神力が、追加供給されていた。


 まだ、敵国兵の血が動脈から噴き出しているとき。サリオンドレルのメンバーは、南北に配置された伏兵の情報を得て、すでにワイバーンで南方に向かっていた。


 戦果報告を待っていた南方のサーレ=サリエン同盟軍も、同様に撃破された。同じ足で、北方のサーレ=サリエン同盟軍も撃破された。


 総勢、1.5万の敵兵が、わずか3名(+霊体3名)のパーティによって、1日のうちに壊滅させられたのである。


 派手に見えるのは、オルセリオンだ。しかし、実際に成果を挙げていたのはアレクサンドラとパトリシアである。


 ピンポイントに、敵国の指揮官を狙える死の予告は、軍事的な常識を無効化した。


 軍にネクロマンサーがいること。アンデッドが計画的に戦争に関わること。それがどのような意味を持つのかが、歴史上、初めて理解された戦争だった。


 ネクロマンサーが、死の予告を打てるアンデッドの数を増やしたら、どうなるだろう。死の予告以外に、他にも恐ろしい呪いもたくさんあるのだろう。


 今回の戦争は夕方に行われた。これが、アンデッドが得意とする夜間の戦争になれば、もっと絶望的な結果になる。


 戦争の概念が変わった。ネクロマンサー相手に、通常軍は無力だ。そしてこの世界に、ネクロマンサーはメリシエル以外にはいない。



第34話まで来ました。ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


少しでも、読めるところがあったなら、是非とも☆評価をお願いしたいです。執筆の励みになると同時に、明日もまた頑張っていこうという気持ちになります。


さて。


通常軍は、ネクロマンサーと相対してはならない。今後の世界は、どう変わるでしょう。加護キャンセラーは、むしろ、ネクロマンサーの力を強化するのかもしれません。


引き続き、よろしくお願い致します。

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