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第28話 王国最強のパーティ

 放浪の義務を得てから1年。


 メリシエルは13歳に。オルセリオンは16歳になっていた。エルシアナは約150歳。


 小型だが高速のワイバーン3頭。その3頭にまたがり、監視を避けるように低空飛行で移動する。彼らは神出鬼没で、恐ろしく強いパーティとして有名になっていた。


 それは、3人の子どもで構成されたパーティ。速度重視の軽装……というよりも普段着で、前衛2人、後衛1人で構成されている。


 前衛の銀髪少女は、格闘系。もう一人、義手の前衛、黒髪少年は軽量の剣を二刀流で使う。そして後衛の魔法使いは、光と闇の魔法を同時に使える。


——サリオンドレル。


 いつしか、サリオンドレル家の名前は、パーティ名として王国中で知られるようになっていた。その実力を疑うものも、初めのうちは少なくなかった。しかし。


 3人の子ども。各地の冒険者ギルドを訪れ、国王公認のS級認定証をみせ、冒険者登録をする。S級なのに誰に対しても分け隔てなく礼儀正しい。そして懸案の重大案件を受け、次々と解決していた。


 ただ……その爽やかな見た目とは裏腹に、なぜか、極端に恐ろしい。彼らのにこやかな挨拶は、その場を明るくさせるはずなのに。彼らを前にすると、誰もが、どうしても恐怖に凍りついてしまう。


 強い加護を持つ者たちは、一様に、彼らの周辺には強烈な悪霊がいると主張する。古代エルフ語で「影に隠された高貴」というパーティ名も、よく考えると不気味だ。


——サリオンドレル。強くて、礼儀正しくて、可愛い子どもたち。ただ、パーティには悪霊もいる。



 サリオンドレルは、加護キャンセラーの影響下での戦闘を想定していた。


1. メリシエルの行動


 その時、メリシエルは、ネクロマンサーを失う。その代わり、人類最強と言われる筋力が現れる。


 ここで、大きな分岐がある。


 ネクロマンサーが失われたとき、アレクサンドラが「大丈夫!」と叫べた場合。その場合は、メリシエルは格闘系、アレクサンドラはレイスとしてオルセリオンの指示に従って戦う。


 問題は、アレクサンドラの意識が飛んでしまう場合。「大丈夫!」の声も出せない場合だ。この場合は、まず、メリシエルが格闘術を用い、自力で突破口を作る。


 メリシエルは、アレクサンドラを捕まえる。そして自ら作った突破口から、加護キャンセラーの効果範囲外まで、一気に逃げる。可能ならワイバーンを使って。無理なら走って。


 効果範囲外に出たらネクロマンサーを発動し、アレクサンドラと共に望遠から魔法を放つ。ただし、味方まで消滅させないように注意すること。


2. オルセリオンの行動


 オルセリオンは、加護キャンセラーがあろうとなかろうと、前衛である。実は、オルセリオンに対する加護キャンセラーの影響は小さい。


 だからオルセリオンは、いかなる場合も、サリオンドレルの指揮を取る。


 リスクとして想定しておくべきなのは、雁鉄の召喚が切られる、もしくは間に合わない場合だ。つまりオルセリオンは、雁鉄なくしても強くあらねばならない。


 そのためには、結局、加護の力を鍛えに鍛え、それがカットされた時に現れる筋力を高めておくことが重要だ。また剣技を磨くことも、前衛として当たり前のこと。


 加護の力は、身体の成長とともに大きくなる。オルセリオンにとっては、よく食べ、よく眠ることが大切な仕事なのである。


「オルセリオン様。もう寝ないとなりませんよ」


 メリシエルは、こうしてオルセリオンの名前を呼べるだけでも嬉しい。しかも、相手を心配しての言葉を発せられることも格別だ。もう、婚約しているのだ。ニヤける。


 オルセリオンは、やはり学者だ。寝ないといけないのはわかっている。けれど、この本を区切りのいいところまで読んでからにしたい。


「もうちょっとだけ。もうちょっとだけだから」


3. エルシアナの行動


 最後にエルシアナ。


 絶対神の加護を持つエルシアナには、加護キャンセラーは通用しない。なので、素直に光と闇の魔法をぶっ放す。その訓練を積む。一見、まっすぐだ。


 しかし加護キャンセラーが発動した場合、前線は、オルセリオンとエルシアナの2人だけになる可能性も高い。その場合、交戦続行か撤退かの判断が、非常に難しい。


 この場合は、オルセリオンがエルシアナに指示を出している余裕は想定できない。なので普段から、2人だけで前線を張る場合のシミュレーションをしている。


「なんか、つまんない」


 メリシエルが、ふくれる。このシミュレーションのシナリオでは、メリシエルは望遠まで逃げている。しかも、そこから魔法を放てと言われても。


 メリシエルの加護を持ってすると、単純な下位階梯魔法でさえ、味方も含めて範囲内の動植物全てを殲滅してしまう。だからメリシエルは、自分は役に立てないと思っている。


 ああ、なるほど。それに気づいたエルシアナは、メリシエルに問いかける。


「メリシエル。あなた、もしかして下位階梯魔法のさらに下、生活階梯魔法、知らない?」


「知らないよ。生活階梯魔法? なにそれ、エルシアナ姉さん」


「あなたの属性は『沼地(闇・水適性)』よね? 水属性なら、皿を洗うとか、洗濯するとか。飲み水を出すとか、そういうの習ってない?」


「そういうの、全部、お母さんがやってくれたから……」


「あなた、これからオルセリオンの奥様になるんでしょ? 生活階梯魔法くらい使えなくていいの?」


 ハッとするメリシエル。


「やる! 私、生活階梯魔法、覚える!」


 ニヤリとするエルシアナ。そして、


「ちょっと意味が違う。メリシエル。あなたのその馬鹿げた加護だと、生活階梯魔法が十分危険な攻撃魔法になる。洗濯するイメージで水を飛ばせば、望遠からでも、ちょうどよく敵を倒せると思うよ」



第28話までお読みいただきました。嬉しいです。ありがとうございます。


少しでも、読めるところがあったなら、是非とも☆評価をお願いしたいです。執筆の励みになると同時に、明日もまた頑張っていこうという気持ちになります。


さて。


チート級のパーティでも、色々と考えて動かなければなりません。敵の立場からすると、まず、加護キャンセラーは必須です。そこでうまくいけば、前衛1、後衛1のアンバランスな少人数パーティにまで力を削げます。そこで弓矢などの中距離攻撃を後衛に集中させ、呪文の詠唱を妨害する。それで前衛1人です。その前衛に、こちらのエース級を複数人当てれば、なんとかなりそうですよね? なんとかなるかなぁ。


引き続き、よろしくお願い致します。

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善と悪、ではなく光と闇。 ファンタジーの世界で、 闇という概念が生まれたのがとても興味深いです。 理由があって存在している。 存在しているものは、光であろうと闇であろうと 同じくらい尊いんですよね、こ…
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