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第26話 魔術師団のあり方

 王国の農民が、薄金色をした金属でできた、重たい立方体の物体を発見した。農民は、これを村の道具屋に持ち込み、小金と引き換えた。


 村の道具屋は、立方体を、きっと貴重なものに違いないと思った。そこで、王都の魔道具専門店に持ち込んだ。魔道具専門店の店主は、この物体から「ただならぬ祝福」を感じ取った。


 魔道具専門店の店主は、道具屋が望む金額(大したことはなかった)を支払った。そして、この物体の鑑定を王立魔術師団学院に願い出た。


 魔道具の専任教員が鑑定したところ——これが、加護キャンセラーであることが判明した。


——加護キャンセラーはおそらく、こうして世界中の国々に配られている。


 斬橋のメリシエルは、世界的に無力化されたのかもしれない。それ以上に、魔法が完全に無力化されるのなら、王立魔術師団学院の存在意義も疑わしくなる。


 王国は、今から764年前に成立した。以来、王立魔術師団学院の存在によって、他国からの侵略を免れ、その堅固な地位を確立してきている。


 学院は、世界から優秀な人材を集めてきた。人材を、王国に長く滞在させ、あわよくば王国に止まらせてきた。仮に人材が母国に帰国しても、王国との友好関係の架け橋となってきた。


 そうした800年近く続いてきた主軸の戦略が、今度は、活かせなくなる可能性がある。王国の根底を揺るがしかねない大問題だ。


 その後、加護キャンセラーの発動条件、発動時間、効果範囲が判明した。


 まず、加護キャンセラーは、絶対神エリオン=シロスの加護を受けたものが、立方体に刻まれている古代エルフ語を唱和することで発動する。


 絶対神の加護を持つのは、およそ20,000人に一人。学院の在校生の中では——エルシアナ=ゼルドレルただ一人が、絶対神の加護を持っていた。


 エルシアナは、このとき初めて、自分の加護が絶対神により与えられていると教えられた。それを冥府神によるものだとばかり思っていたエルシアナは、とても驚いた。


「えっ? 絶対神様なの?」


 加護神の担当教員が、エルシアナに説明する。


「絶対神は、冥府神も内包しています。ですから、闇属性のエルシアナさんが、冥府神を近くに感じるのは当たり前のことです。何も間違っていませんよ」


 それからエルシアナは、魔道具の担当教員らに呼び出された。そして、多くの研究員に促されつつ、発動時間と効果範囲の調査への協力が開始された。


 忙しくなったエルシアナは「実家」の黒薔薇城に帰れなくなった。


 メリシエルが、寂しがる。


「エルシアナ姉さん。次は、いつ戻ってこれるの?」


「わからないの。でも、緊急の調査に、どうしても私の加護が必要なの。戦場で、オルセリオンが生き残るためにも、必要なことだから。許してね、メリシエル」


 メリシエルは「オルセリオンが生き残る」の言葉に、納得せざるを得なかった。


 そうしてエルシアナは、加護キャンセラーを丸裸かにすることに協力をした。


 発動時間は、約4時間。その間、絶対神の加護だけはキャンセルされない。連続発動はできず、一度発動したら、次の発動までは約20時間のインターバルが必要だった。


 効果範囲は、半径5km程度。これを広いと考えるか、狭いと考えるかは難しい。ただ、斬橋のメリシエルによる地獄門の射出範囲は5kmを余裕で上回る。


 遠距離であれば、メリシエルの脅威は維持される。王国にとって、メリシエルが他国への有力な武力牽制となることは、変わらない。いざとなれば、いつでも敵国を一方的に吹き飛ばせるのだ。


 ただ、メリシエルの位置が特定されると、メリシエルは簡単に無力化されてしまう。メリシエルには、移動砲台のようにして敵国の監視を常時逃れる必要が確認された。


 もう一つ、重大な懸念があった。メリシエルの加護、ネクロマンサーが無力化された場合、アレクサンドラは、どうなるのかだ。


 アレクサンドラは、レイスであるにも関わらず、普通の人間のように振る舞える。それは、ネクロマンサーの力によるのか。それともアレクサンドラ個人の特性なのか。


 もし加護キャンセラーによって、アレクサンドラが、レイスらしいレイスになってしまうとするなら。これもまた、王国の脅威となる。


 ただこれは、実験で確認できない。実験をして、4時間もレイスらしいレイスが出現してしまえば、王国が消滅しかねない。


 とにかく、メリシエルとアレクサンドラは、位置が特定されないよう、移動し続けることが重要と結論づけられた。


——結論。王立魔術師団学院のカリキュラム変更は必要。遠距離魔法の優先順位を上げる。絶対神の加護持ちの優先入学と教育が必要。加護キャンセラー発動中とインターバル期間の戦略をそれぞれ別に考えることが必要。


——そして、メリシエルとアレクサンドラは、一箇所にとどまらせてはならない。



これで、第26話までお読みいただきました。ありがとうございます。嬉しいです。


少しでも、読めるところがあったなら、是非とも☆評価をお願いしたいです。執筆の励みになると同時に、明日もまた頑張っていこうという気持ちになります。


さて。


世界の秩序を変える加護キャンセラーは、絶対神により提供されているようです。その狙いは何か。狙いが分からなくても、対応すべきことは変わりません。そして残念ながら、メリシエルは、せっかく手に入れた「実家」を離れなねればならないようです。


引き続き、よろしくお願い致します。

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