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第24話 ほんとうに大切なもの

 十分に、死ぬ可能性があった。たくさんの人を殺した。後から、震えがくる。


 味方の兵たちによる感謝、賞賛、世辞。王国軍を率いた第二王子からの激奨。勲章授与の約束。


 どれもが、虚しかった。


 雁鉄が、そんなオルセリオンに声をかける。


「危なかったの。我がなかりせば、お主はもうこの世にはおらん。恐ろしい神器よの」


 何もかもが虚しい。湖から水が抜けていくような感じがした。


 しかしだからこそ、深い湖の底に隠されていた玉もまた、その姿を現すのだろう。



 オルセリオンが城を出てから12日後の夕刻。


 アーマーの胸に勲章をつけ、オルセリオンが帰ってきた。しかし、下を向き、肩を落として大剣を引きずるその姿は、出陣の時とは明らかに違って見えた。


 そんなオルセリオンの姿を遠くに認めた使用人パトリシアが、城の鐘を鳴らす。


「旦那様、ご帰還です! 旦那様、ご帰還です! ご帰還です!」


 食事中だった。


 鐘の音を聞いたメリシエルは、まず、座っていた椅子を壊した。それから立ち上がり、扉を壊し、走って食堂を出て行った。


 石畳では頭から転び、敷石を割った。額から流れる血を拭いもせず、立ち上がり、また駆け出す。直後によろけて身体を石柱にぶつけ、大きなひびを入れた。


 それから木製の跳ね橋を踏み抜き、堀に落ちた。石垣の隙間に指を入れ、自力で堀から上がった。4枚の爪が割れ、そこから血が出た。


 城までの一本道では、(わだち)に足を取られ、また転んだ。立ち上がり、メリシエルはそこで直立し、目を涙でいっぱいにして固まった。



 オルセリオンは、勲章を引きちぎり放り投げた。


 そして一つ一つ、アーマーを脱ぎ捨てながら、ゆっくりと城に向かっていく。


 雁鉄の召喚を切り、大剣もその場に落とした。国宝のレイピアは、ずっと前にどこかに落としている。


 もう、何もいらない。オルセリオンは、そう思った。


 そう思った。そのとき


 向こうに、ずぶ濡れで血だらけになったメリシエルが見えた。


 オルセリオンの頬を、熱い涙がつたう。


 オルセリオンは、メリシエルに向かって駆け出す。


 メリシエルは、オルセリオンに向かって駆け出す。


 二人は強く抱き合う。抱き合いながら、二人は膝からその場に崩れた。


 それから二人は、ずっと泣いていた。



これで第2章が終わります。こうして第24話までお読みいただけたこと、とても光栄です。ありがとうございます。


少しでも、読めるところがあったなら、是非とも☆評価をお願いしたいです。執筆の励みになると同時に、明日もまた頑張っていこうという気持ちになります。


さて。


勇ましく、王国のために命を捨てると宣言したオルセリオンでしたが、そんな単純な話ではありませんでした。死を意識して初めて見えてくることもあるわけです。言葉では伝わらないこと。本当に大切なことは、言葉では伝わらないのでしょう。


引き続き、よろしくお願い致します。

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― 新着の感想 ―
名場面ですね。破壊の限りを尽くしながらオルセリオンを迎えるその必死さ、みっともなさがとても美しいです。
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