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第23話 世界を変える神器

 前線で敵国が用いた試作武器は、加護キャンセラーだった。


 敵味方関係のない、範囲内にいる全ての加護の無力化。それは単に魔法の無効化を意味しない。加護によって引き上げられるあらゆるボーナスが消えるということ。


 それでも、運が良かった。


 アーティファクト「終争の手」は、加護とは関係のない神器だ。それに、加護キャンセラーは、その発動以前に唱えられた魔法や祝福までは消去できなかった。


 つまり、義手として召喚されている雁鉄は、そのままそこにいられた。また雁鉄の加護は能力調整であり、それが失われても初期設定の圧倒的な武力への影響はない。


 さらに、オルセリオンは賢い。


 加護キャンセラーの発動時。オルセリオンは自らの身体が勝手に軽くなるのを感じ、加護の無力化に気づいた。そして、迷わず部下たちに全軍撤退を命じている。


 オルセリオンは、撤退における自らの「しんがりの責」を叫んだ。


 しんがりの責。逃げる兵たちが見たのは、そんなレベルではなかった。


 オルセリオンが一人、敵軍に囲まれていた。


 恐ろしく重い大剣が、軽々と綺麗な円を描いていく。その円の内側にいないものまでもが、鎧ごと上半身と下半身に分離されていく。


 誰も近づけない。できる限り離れないと、死ぬ。


 敵軍は、加護の無力化だけでは王国には勝てないと悟る。これで十分だ。これが、今回の戦の目的だからだ。敵軍の撤退もまた、迅速で見事だった。


 加護キャンセラーは、地獄門の件を知った敵国が入手した新兵器だった。どうやって入手したのかは不明だ。ずっと前から開発していたのかもしれない。


 とにかく。斬橋メリシエルの無力化が、敵国によって、すでに実現されていたのだ。


 加護の時代は終わるのかもしれない。A組にいれば、それで安泰ではない。加護キャンセラーには、この世界を根底から覆すインパクトがあった。


 まだ加護キャンセラーの効果範囲は限定的だ。しかし、時間とともにそれは必ず広がっていく。召喚や祝福も無力化されるかもしれない。とにかく今後は、加護を前提としない戦闘を考える必要がある。


 王国側の犠牲者は少なく、戦は終わった。


 適切なタイミングでの撤退の指示。成人したばかりの齢15にして、味方を逃すための単騎決戦。その死地からの生還。加えて100を超える敵兵の撃破までやってみせた。


 雁器のオルセリオンは、その名に恥じぬ英雄であった。


 しかし当のオルセリオンは、そう感じていない。撤退の決断以外、働きの全てが義手に雁鉄があればこそだったからだ。召喚まで無効化されていたら、間違いなく死んでいた。


 それでも、身軽になったオルセリオンには、人間離れした筋力は残る。しかしそれは、戦場にいる牛のようなものだ。矢を当てられ、捕まってしまえば、それでおしまい。


 結局のところ。加護やらアーティファクトやら、他人の力に依存しすぎている。それがはっきりと理解できた。そんな初陣となった。



第2章、ラス前の第23話でした。ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


少しでも、読めるところがあったなら、是非とも☆評価をお願いしたいです。執筆の励みになると同時に、明日もまた頑張っていこうという気持ちになります。


さて。


加護キャンセラー。この神器をも超越するようなアーティファクトは、何のために、どこから来たのでしょう。破壊することは、可能なのでしょうか。


引き続き、よろしくお願い致します。

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