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第21話 成人の儀

 初等科3年、8月。


 メリシエル12歳、エルシアナ約150歳。そしてオルセリオンが15歳になった。パックでは、オルセリオンだけが「成人の儀」を迎える。


 以前は、メリシエルとエルシアナが家のことをこなし、オルセリオンは孤児院の管理業務に忙しくしていた。


 しかし孤児院の仕事は、想定と現実が合わないことも多く、前途多難だった。


 教会からの完全な孤児院の業務移管まであと3年。メリシエルの成人までに、業務移管を完了しなければならない。もう、時間がない。


 孤児院の管理業務が本格化するにつれ、人手不足がより色濃くなっていった。今となっては、メリシエルとエルシアナも、家事よりもむしろ、孤児院の管理業務に尽力している。


 そうしてこのパックは、以前と比べて、より一緒にいるようになった。既にメリシエルとエルミアナは、姉妹のような関係になっている。


 オルセリオンは、これまで、この姉妹とは別の仕事に注力していた。そのため、どこかよそよそしいところもあった。性別を意識してのことも、あったろう。


 しかし、こうして一緒に孤児院の業務に当たるようになり、関係性がより深くなってきていた。


 メリシエルとエルミアナは、正直、オルセリオンがこんなにも仕事ができるとは思っていなかった。それで、いちいち驚いている。


 さて。


 王都における成人の儀は、その月に成人する男女が、タウンホールに招かれて行われる。国王は多忙のため、出席できることは少ない。それでも王妃は、必ず出席していた。


 その日。


 8月の新成人、平民と貴族、合わせて422名が集められている。メリシエルとエルミアナはもちろん、アレクサンドラもその場にいた。


 珍しく、国王が成人の儀に出席していた。もちろん、オルセリオンによる答辞を聞くためだ。国王から祝辞が述べられ、答辞を、新成人を代表し、オルセリオンがいま、行う。


 オルセリオンは、長い黒髪を後ろで束ね、薄く研がれた刃物のような輪郭を湛えていた。参列者たちからは、一瞬、冥府の神がその場に降りたかのように見えた。



 成人の儀、答辞


 陛下。並びに、この王国に生きるすべての方々に。


 雁器オルセリオン=グランディエル、新成人を代表し、謹んで御礼申し上げます。


 本日、成人の節目にあたり、陛下より賜りました御言葉。

 

 それは、私たち若き者への祝福であると同時に、この王国に生きる者すべてが背負う「未来への責」を思い出させてくださいました。


 成人とは、ただ成長を祝う日ではなく、命を授けられた者が、その命をどう使うかを問われる日です。


 そして男子として兵籍に名を連ねる今、私はこの身をもって、王国を支える一人であることを深く自覚し、誇りに感じております。


 成人し兵籍にある以上、召集があれば、私は、剣を取り前線に立つのです。


 しかし剣を持つことは、戦うためではなく、守るために立つこと。


 恐怖を広めるためではなく、恐怖を終わらせるために立つこと。


 それが兵の道であり、私がこの命を捧げる意味であると信じています。


 この国が在るのは、剣を振るう者だけの功ではありません。


 耕す者が土を守り、商う者が民を支え、教える者が知を灯し、祈る者が希望を繋いできたからこそ、この王国は、寒夜の中にあっても光を失わずに歩んできました。


 成人とは、その灯の一端を自らが担うこと。


 この国の痛みも、歓びも、恐れも、誇りも、そのすべてを自分の内に受け入れる覚悟のことだと、私は考えます。


 そして──私は、冥府の神オリシス様より、争いを終わらせよとの勅命を受けております。


 それは、剣によって世界を沈めることではなく、人が人を理解する努力を絶やさぬようにという、静かな願いなのです。


 ゆえに私は、この国を、そしてこの世界を、終わりなき争いの環から解き放つ力の一端でありたい。戦いの中にあっても、守るための戦いを忘れぬ者でありたい。


 我が雁器の名は、力を誇るための呼称ではなく、心の器を問う名だと理解しております。ゆえに私は、この器を常に「慈しみ」によって満たしたいと願うのです。


 陛下。


 この身がいずれ朽ちるその時まで、私は陛下の臣として、そしてこの誇り高き王国の臣民として、命を惜しまず務めを果たすことを誓います。

 

 どうかお見守りください。


 本日はまことに、ありがとうございました。



 似たような時間を過ごしていたはずなのに。オルセリオンは、ずっと遠くまで進んでしまった。メリシエルは、そう感じた。


 そしてメリシエルは「兵籍」という言葉に大きく動揺した。オルセリオンが、前線に立つ。そんな日が来ることなど、考えたこともなかった。


 しかしオルセリオンは、13歳にして雁鉄を召喚したほどの、王から二つ名を下賜されるほどの英雄なのだ。


——兄様を、失いたくない。兄様のこと、もっと知りたい。



もう第21話までお読みいただきました。嬉しいです。ありがとうございます。


少しでも、読めるところがあったなら、是非とも☆評価をお願いしたいです。執筆の励みになると同時に、明日もまた頑張っていこうという気持ちになります。


さて。


男子は、こういう瞬発力で魅せること、ありますよね。本当は、色々と弱音もあるのに。そういう弱音を隠す技術ばかりが上がったりもします。


引き続き、よろしくお願い致します。

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