表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/18

第17話 潮が裂ける時

 審査員が得点表に筆を走らせる。

 観客のざわめきが徐々に大きくなり、次の瞬間——港の沖で水柱が立った。

 高さは灯台をも超え、海が裂けるような音が広場まで響く。



「潮喰だ!」

 漁師たちの叫びが飛び交う。

 昨日よりもはるかに巨大で、海面から突き出した影が港の方へうねってくる。

 観客が悲鳴を上げ、屋台やブースから逃げ出す。



 バルドがステージから跳び降り、こちらに駆け寄った。

「潮紋の者、今は勝負どころじゃない!」

 返事を待たずに彼は自分のブースから銀色の筒を取り出す。

「香りで進路を逸らす。お前は潮紋で奴を引きつけろ!」



 俺はリーナと目を合わせる。

「……行くぞ」

 彼女は貝殻を握りしめ、港の縁まで走った。

 潮紋と貝殻の光が重なり、海面に青い道を作る。

 潮喰はその道を辿るように、ゆっくりと近づいてくる。



 その背後から、バルドの筒から立ちのぼった濃厚な香りが潮風に広がる。

 海藻とスパイスの強烈な匂い——港の反対側へ潮喰の頭がわずかに向いた。

「今だ、港の外へ誘い出す!」

 バルドが叫ぶ。



 二人で光と香りを交差させ、潮喰を港口へと追い込む。

 最後にリーナが貝殻を高く掲げると、潮喰は渦を巻きながら沖へ消えた。

 残ったのは、荒い息と汗、そして港の人々の安堵の声だった。



 バルドがこちらを振り返る。

「……借りは返す。だが勝負は終わっていない」

 そう言って、再びステージへ歩いていった。


 俺は潮紋の熱を感じながら、観客席のリーナを見た。

 その瞳は、灯台の光のようにまっすぐだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ