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異能奇譚  作者: レム睡眠
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第七章 後章2

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「おぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

激しく閃光する火花。

速度はなおも加速し、その戦いは苛烈さを増す。

互いに傷つきながら、互いに血を溢しながら、関係ないとばかりにその目は強者を捉える。

「喰らえ!四刃一刀流・陣!」

再び、四つの刃が空を裂く。

「2度も引っ掻からねぇよ!『止まれッ!』」

放つ言霊で四つの刃を止める。

「…そうだろうとも、貴様は二回目は通じぬと"信じていた"」

気づけばすでに目の前へと岳滅鬼は現れる。

「…な」

「吹き飛べい!」

二つの腕で、顔面と腹部を容赦なく叩く。

拳が頬骨を砕き、顎が跳ねる。全身の神経が強制的に再起動するような衝撃だった。

壁まで十数メートル。地面を三度跳ね、俺はようやく止まった。

「…強い」

「休憩している場合か、喰らえ!」

2本の刃を投げ、言葉の後ろへと配する。

だが、2本の刃は岳滅鬼の腕にある。

「四刃一刀流・四陣牙」

前方の2刀で足を切り払い、刀を受け止めながら回り込み、二つの打刀で弾き飛ばす。

「…ぐっ」

四刃一刀流とやら、どうやら自分の有利な陣を即座に形成する剣術か。

刃を止めても岳滅鬼本人が迫ってくる。

血を吐きながら立ち上がる。だが、口元には笑みが浮かんでいた。

「……はてさて、どうしたもんかな」

この状況を、“楽しい”と感じている自分がいた。

「いや、どうにかするというのをやめるか」

攻撃こそが最大の防御と聞いたことがある。

ならば、俺は異能を攻撃へと全て振り分ける。

「考えている場合か!異能殺しぃ!」

「あぁ、勝つためにな。《加速》」

地面を踏み締めた瞬間、岳滅鬼の前へと一瞬で移動する。

「調整がむずいな、だがこれでいい。『非天無獄流・破岩一掌ッ!』」

「…なんだと」

無防備だった岳滅鬼の胸元へと掌底を放ち、後方へと弾き飛ばす。

「《修羅》+《誘導》+《必中》」

攻撃の手を休めることなく、袈裟斬りを放つ。

だがーー。

「…浅い」

「その通り、フンッ!」

容赦のない四刀の叩きつけに、思わず距離を取る。

「距離をとったか、馬鹿め!」

岳滅鬼は再び刀を投げる。

今度は一つを残して三つだけを。

「まだまだぁ!」

加速する。

刃が囲うよりも速く。

「手放したのは判断ミスだったな!『吹っ飛べ』」

「…なにぃ!?」

体格差など関係なく、放つ言霊で吹っ飛ばす。

「おおお!」

「甘い!」

吹っ飛びながらでも岳滅鬼は刀を打ち払う。

「…くそ、好機を逃した」

「いい手…だったぞ」

互いに肩から息をする。

「…消耗戦…したいか?」

「まさか、お前のような人間とするなんてもったいない」

2人の思考は一致する。

「「次が最後だ」」

互いに再び構えを取る。

静かに、されどその熱量を引き上げる。

両者共に一本の剣。

これで互いに条件は同じ。

一歩、一歩。

互いにジリジリと近づきながら、指先まで殺意を巡らせる。

「ハァ!」

「オォ!」

互いにすれ違い、残心する。

「フッ…異能殺し…見事なり」

岳滅鬼は袈裟斬りに斬られた後から大量の血を流し、その場でばたりと倒れる。

鞘を拾い上げ、俺は呟く。

「切り捨て御免…てね」

ドックン。

その時、心臓が弾けた。

「…ガ…これは…やばい」

戦い続けた疲労か、それとも異能の重複使用による反動か。

視界が揺れる。意識が薄れてゆく。

「…くそ」

ばたりと俺もその場で倒れてしまった。

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