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日本神話の始まり イザナギ・イザナミ

 はるかな昔のことです。


 天上に、高天原たかまがはらという所がありました。


 神様たちが、高天原から見下ろしてみますと。

 下界はまだ生まれたばかりで、ぜんぜん固まっていません。

 海の上を、泥が漂っている有り様です。


 話し合った高天原の神様たちは。


 イザナギノミコト・イザナミノミコトと言う、二人の神様に、天沼矛あめのぬぼこという大きなやりを与え。

 下界をしっかりと固めて、国造りをするようにと命じました。


 そこで、二神は、高天原から地上へとつながる天浮橋あめのうきはしの上に立って、槍の先で、下界をかきまぜました。


 かきまぜる度に、大きな音がします。

 二人が天沼矛あめのぬぼこをすうっと引き上げると。

 槍の先から落ちたしずくは、直ぐに固まって島ができあがりました。

 一人でに固まって、できあがったので、この島のことを【おのころ島】といいます。


 イザナギ・イザナミは、早速おのころ島へと下りてゆきました。


 二人の神様は、おのころ島の上にりっぱな御殿を建てて、そこで結婚の儀式をしました。


 こうして、最初に生まれたのが淡路島あわじしまです。


 その後・・・。


 四国。

 九州。

 本州。


 その他、沢山の島々が生まれました。


 島ができると、妻のイザナミは、それぞれの島を治める神様を生みました。


 それに続いて。


 石や土の神様。

 家の神様。

 風の神様。

 川や海の神様。

 山の神様。


 と、たくさんの神様が生まれてきましたが。

 火の神様を生んだとき、イザナミは大やけどをしてしまいました。



 大やけどに苦しみながら、イザナミは。


 粘土の神様。

 水の神様。

 鉱山の神様。


 等などを生みました。


 無理を重ねた、イザナミは、次第に弱ってゆきます。


 イザナギは、懸命に看病をしましたが。

 そのかいもなく、イザナミは間もなく亡くなってしまいました。


 愛するおまえの命を、一人の子の命とひきかえにしてしまった。


 イザナギは、イザナミのなきがらにとりすがって、ぽろぽろとなみだを流して泣きました。


 そして、イザナミを、出雲いずもの国と伯耆ほうきの国の境にある比婆山ひばやまに葬ります。


 イザナギは、妻に大やけどをおわせた火の神カグツチの事を、どうしても許すことができず。

 とうとう、剣で切り殺してしまいました。


 イザナミが亡くなってからしばらくの間。

 イザナギは、一人で悲しんでいましたが。

 どうしても、我慢することができなくなりました。

 そこで、死者の国まで妻を迎えに行こうと思いたちました。


 死者の国は、黄泉よみの国といって、深い地の底にあるのです。


 イザナギは、地の底へと続く長い暗い道を下りて行きました。


 ようやく黄泉の国に着くと。

 イザナギはとびらの前に立ち、イザナミに、自分といっしょに地上へ帰ってくれるよう、優しく呼びかけました。


 ああ、愛する妻よ、私とおまえの国造りは、まだ終わっていないのだよ。どうかいっしょに帰っておくれ。


 ところが中からは、イザナミの悲しそうな声が帰ってきました。


 どうしてもっと早く来てくれなかったの。

 私は、もう黄泉の国の食べ物ヨモツヘグイを食べてしまいました。

 ですから、地上へはもどれないのです。

 けれども愛するあなたのためですから、地上へ帰ってもよいかどうか。

 黄泉の国の神様にたずねてみましょう。

 それまで、私の姿を決してのぞかないでくださいね。


 そう言われて、イナザギはじっと待っていましたが。

 いつまでたっても妻からは返事がありません。

 とうとう待ちくたびれた、イザナギは、櫛を燃やして小さな火をともし、妻を探すために黄泉の国へと入っていったのです。


 黄泉の国は、どこまでも真っ暗なやみが続いています。

 うす暗い灯りをもって、目をこらしていたイザナギ。

 彼は思わず、あっと叫んで立ちつくしました。


 何と、そこには、腐りかけてウジ虫がいっぱいたかっている、イザナミの体が横たわっていたのです。

 おまけにその体には、おそろしい雷神らいじんたちが取りついています。


 あれほどのぞかないでと言ったのに、あなたは私にはじをかかせましたね。


 自分の醜い姿をのぞかれてしまったイザナミは、かみの毛を逆立てて凄まじく怒りました。


 イザナギをつかまえて、殺しておしまい。


 イザナミが、そう命令するや。


 黄泉醜女よもつしこめという悪霊たちが、イザナギをつかまえようと。

 彼方此方あちらこちらからも、わき出るように現れました。



 イザナギは地上へ続く黄泉平坂よもつひらさかに向かって、必死ににげました。

 イザナミと黄泉醜女たちは、すさまじい勢いでせまってきます。


 イザナギはけんめいに走りながら、かみに結んでいた飾りを放り投げました。

 すると、髪飾りからはたちまち野ブドウの木が育って、たくさんの実がなりました。

 それを見た黄泉醜女たちは立ち止まって、実を食べ始めましたので。

 その隙に、イザナギはどんどん走りました。

 けれども暫くすると、また悪霊たちが追いついてきます。

 イザナギは、今度は髪にさしていたクシを放り投げました。

 すると、そこからは竹の子が次々に生え。

 黄泉醜女たちはまた立ち止まって、食べ始めました。


 こうして、懸命に逃げるイザナギの行く手に、ようやく地上の世界が見えてきました。


 しかし黄泉醜女たちは群れをなして追いついてきます。

 イザナギは、片手に持った剣を後手に、ふり回して防ぎながら、ようやく坂のふもとまでたどり着くと。


 そこに生えていたももの木になっていた実を三つもぎとって、黄泉醜女たちに投げつけました。


 すると、桃の実がもっている不思議な霊力れいりょくにおそれをなした黄泉醜女たちは、みんな逃げ散ってしまいました。


 けれども、イザナミは、まだ恐ろしい顔でせまってきます。


 ついにイザナギは、黄泉平坂に、千人がかりでないと動かせないような大岩を引っ張ってくると。


 それで、黄泉の国と地上の世界の間をふさいでしまったのです。



 追いかけてきた、イザナミは岩の向こうから大声でさけびました。


 これからは、あなたの国の人を、一日に千人ずつ殺しますからね。


 それならば、地上では一日に千五百人ずつ子供が生まれるようにするよ。


 イザナギは答えました。


 こうして、二人は別れ別れになり、地上の世界と黄泉の国とは、永久に行き来できない石の扉で塞がれてしまったのです。


 けれど、それからというもの、亡くなる人よりも生まれる人の方が多くなり、地上の人は次第に増えるようになったのだそうです。

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