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たとえば魔法が使える世の中で  作者: 笑美得 累
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第一話

今年で俺も15歳となった。一般的に、魔法が使えなくなる歳まであと1年ほど。そろそろ進路を決めなくてはいけない。このまま魔法が使えれば儲けものだが、残念ながら魔法が生涯使える人間は限られる。もしこのまま魔法が使えれば職も広がるのだが…最近少しずつ上級魔法の発動に苦労する場面が増えてきた。もし魔法に携わっていたいのなら、魔術の道に進むことを真面目に検討した方が良いのかもしれない。

「いいか~。魔法についてのこの部分は必ずテストにでるからなあ~」

黒板をコンコンと叩きながら教師が何度目かの注意を促す。いわゆる『歴史』の授業だが、こと魔法に関してはどの道に進むにしても歴史はついて回る問題であるため、必ず小・中とテストに出る。(もちろん高校・大学と進んでもそうだ。)

ちなみに、出題の仕方も決まっている。『20世紀初等に本格的に国家プロジェクトとしての魔法研究がどの国でも盛んになった。国の威信をかけたものだったため、無茶な研究が進んだ。結果、魔法を使える適齢期人口(10歳~16歳まで)の多くがその犠牲となった。これは世界的な問題となり、研究は凍結された。この際世界的な魔法使い保護組織IMPO(International Magician Protect Organization)が組織された。』

要約するとこんな感じだ。心なしか教師も退屈そうに見える。この分野に関しては俺たちですら、またかよという感じだ。教師はさらに高校・大学でも学び、さらに毎年どの学年でも教えるのだから、より退屈なのだろう。

退屈したクラスメイト達は「もう覚えてるからよくね?」とか、「今日どこ行く?」など話している。普段なら「キチンと聴け!」とお決まりのワードが飛んでくるはずだが、この授業に関してだけは例外だ。教師の注意も「テストで間違えるのだけはやめてくれ」程度だ。夏休み直前ともなれば、さらに集中力もなくなる。

俺も例に漏れず『進路どうするかな…』など考えていると、

「チンジュっちもどうだい?」

というささやくような声が耳元で響く。

まるで爪で黒板を引っ掻いたようなゾクゾクッとした感覚が耳元から背中に走り、「ひょわっ」なんて、すっとんきょうな悲鳴が漏れる。

俺の名前が神森かみもり まもるであることから、神を鎮める鎮守から取ったらしい妙なニックネームが広がったのだが…それは良いとして、こういうイタズラをするやつはこの学校には一人だけだ。

振り向くとニヤニヤを通り越してニタニタとした顔がある。

「おい、妃やめろって言ってるだろ」

きさき 万里まり。容姿だけで判断するなら深窓の令嬢、高嶺の花。たが、教師や先輩達、自分を敵視しそうな同性の前では決して素を見せない。なぜなら、中身はイタズラ好きな少女だからだ。特に『異性に』イタズラをする美人が同性からどう映るのか彼女は身をもって知ったらしい。詳しくは胸くそ悪い内容になるだろうから聴いてはいない。ある意味自分の性格がどの年代に対してなら受けるのか、キッチリ把握しているともいえる。一方男連中からすれば、俺にはニタニタして見えるこの笑みも、周りから見れば微笑ましい、もしくは羨ましい状態に見えるはずだ。なにせ、素を知っていて、なおかつ状況を把握していても、自分がイタズラの対象でなければ、思わずドキリとしてしまうのだから。

「で…何が『俺もどう』なんだ?」

これ以上注意しても無駄なのは分かっているので、突っ込まないようにする。

「ふむ…私の予想ではもっと深くツッコんでくると踏んだんだけど…予想が外れたか…」

そう言うと、妃は大袈裟に残念だというそぶりをしながら話を続けた。

「今日からテスト前の時短授業だろう?一緒にお勉強でもどうかと思ってね?」

ニンマリした笑顔から『まあ勉強するつもりなんてないんだけど』といった感情がうかがえる。正直今さらジタバタしても点数が跳ね上がるわけでもないので(勉強しないとは言っていないが)、ダベるくらい問題は無いだろうととりあえず提案に乗る。こうして放課後は俺、妃を含むクラスメート数人でファミレスに寄り、取り留めの無い話をして解散した。

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