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六十一 最強

 シズクは、キッテ凄い強い。これなら全然平気そう。でも、どうやって戦っているんだろう。相手は、未来を読めるんだよね? キッテも、未来が予知できるって事なのかな? けど、そんな事、私には一言も言っていなかった。けど、もしもできるなら、これは、凄いかも。便利かも。などと、キッテの強さに安心しきって、呑気に考え始める。


「ゴッドナノマ様。我らも一緒に戦います」


「それは助かるゴッドナノマ」


 ゴッドナノマが言うと、雲海の中から新たに手が伸びて来て、ソーサを掴む。


「ゴッドナノマ様、これは?」


「ゴッドナノマはソーサを人質にするゴッドナノマ。攻撃して来たらソーサを殺すゴッドナノマ」


「ちょっと何それ? 卑怯過ぎ」


 シズクは、突然の展開に驚いて、声を上げた。


「いくらなんでもそれは酷過ぎるダノマ。やめろダノマ」


「ソーサ以外の人達も狙われるかも知れませんわ」


 カレルが大勢の人々の方に走って行き、すぐに出て来た建物の中に戻るようにと大きな声で声をかけ始める。


「ゴッドナノマ。頼むからもうやめてくれナノマ。ナノマは自分が情けないナノマ。どうしてそんな事をするナノマ」


 ナノマが、苦悶の表情を顔に浮かべ、声を張り上げる。


「誰が誰を人質にしたって?」


 いつの間に救い出したのか、そう言ったキッテの背中にはソーサが乗っていた。


「何が起こったゴッドナノマ?」


 ゴッドナノマが悲鳴にも似た声で言う。


「凄い! キッテ。何をしたの?」


 シズクは思わず飛び上がって喜んでしまう。


「シズク。すまないが念の為に種明かしはゴッドナノマを止めた後だ。対抗策をとられると面倒だからな。ナノマ。ゴッドナノマを少々痛めつけるが、それでもいいか?」


「何をしても構わないナノマ。お願いしますナノマ」


「了解した」


 キッテがソーサを背中から降ろすと、何かを確認するかのように、周囲を見た。


「ゴッドナノマは負けないゴッドナノマ。人質はまだまだたくさんいるゴッドナノマ」


 雲海の中から無数の手が生えて来ると、カレルに声をかけられても、逃げようとはせずに、その場にいた人々に向かって伸びて行く。


「まったく。人質なんか使わないで、正々堂々と戦って欲しいもんだ」


 キッテが言ったと思うと、キッテの姿が消える。


「え? キッテ?」


 シズクは顔を動かしてキッテの姿を探した。

 

雲海から伸びて来ていたたくさんの手が、みるみるうちに消滅して行く。


「こ、これは、何が起こっているのですか?」


 ソーサが空を見上げて、言葉を漏らす。


「どうやって、キッテが、未来予知による妨害を避けているのかは分からないけれど、キッテが何をしてるのかは、分かりますわ。キッテは、超高速で動き回って、ゴッドナノマのたくさんの手を破壊して回ってるのですわ」


「キッテは、目に見えない速さで動いているって事?」


「そうですわ。わたくしの目、いえ、カメラでも、残像がなんとか捉えられるか捉えられないかくらいの速さで動いてますわ」


「それって、速く動けば、未来予知されないって事?」


 シズクは、小首を傾げつつ、カレルの顔を見つめた。


「そんな事はありませんわ。量子コンピューターによる未来予知も、ナノマシン達、ゴッドナノマの行ってる、並列コンピューターによる未来予知も、因果律に従ってるはずですわ。なので、キッテが何をやっても、いえ、誰が何をやっても、自身が未来予知をして、未来がどうなるのかを知ってない限りは、未来を変える事はできないはずですわ」


「じゃあ、キッテも未来予知ができるって事?」


「そんな、事は」


 カレルが言葉の途中で押し黙った。


「可能性はあるんじゃないかダノマ。量子コンピューターがなくても、ナノマがやってるんだからダノマ。キッテがどこかにたくさんの仲間のナノマシン達を隠してて、それらと接続してればできるはずダノマ」


「でも、そうだったとしたら、どうしてこうなるまで、キッテは何もしなかったのですの? キッテが未来予知をできたとして、シラクラシズクに危険が及ぶかも知れないような、今の状況になるまで、何もしなかったなんておかしいですわ」


 シズクは、確かにそうだ。キッテが未来予知をしていたら、きっとここには来なかったはずだ。でも、未来予知ができないとしたら、どうやってキッテは、戦っているんだろう。と思ってから、あ、でもでも、キッテや皆が怪我とかしないで勝てるのなら、そんな事はどうでもいいかも。と思った。


「ゴッドナノマ。もう負けを認めたらどうだ? これ以上戦っても無駄だと思うぞ」


 ゴッドナノマの出した、たくさんの手をすべて消滅させたキッテが、お座りをしてから言った。


「ゴッドナノマは負けないゴッドナノマ」


 雲海が地上に向かって、降りて来る。


「何をする気だナノマ」


「さすがにここにあるすべてのナノマシンを破壊する事はできないはずだゴッドナノマ。ゴッドナノマと繋がってるすべてのナノマシンを使って、キッテを破壊してやるゴッドナノマ」


「お前と繋がってるナノマシン達は、本当に、まだ、お前と繋がってるのか?」


「何を言ってるゴッドナノマ。繋がってるに決まってるゴッドナノマ」


 下降して来ていた雲海の動きが止まった。


「これは、これは、どういう事だゴッドナノマ。ナノマシン達との接続が切れて行くゴッドナノマ。キッテ。お前、何をしたゴッドナノマ? いや。まだだゴッドナノマ。接続を回復するゴッドナノマ。演算速度で勝負するゴッドナノマ」


「いくら数が集まっても、一つ一つの演算装置の演算速度は変わらない。俺の演算装置の方が速いという事実は覆らない。お前の負けだゴッドナノマ」


「そんなゴッドナノマ。生まれたばかりなのにゴッドナノマ。消えたくないゴッドナノマ」


 巨大なゴッドナノマの顔が酷く悲しそうな表情をした。

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