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五十七 未来予知

 キッテが、戦闘機から降りると、まだ戦闘機の中にいたシズクの方に顔を向けた。


「シズク。降りないのか?」


「降りる。けど、なんか、色々、驚いちゃって」


 シズクは言ってから、立ち上がり戦闘機から降りた。


「チュチュ達も降りるむ」


「ダノマも行くダノマ」


 全員が戦闘機から降りると、ナノマが人の姿に変身する。


「カレル以外の皆様は、特に、チュチュさんとチュチュオネイさん、新世界の人類であるお二人は、我の話を聞いてどう思いましたか? 我としては賛同してもらえると嬉しいのですが」


 ソーサが、何やら、また、別のポーズをとる。


「チュチュはそんな話より服を脱ぎたいむぅぅぅぅ」


 チュチュが服を脱ごうとし始める。


「ちょっとチュチュ。またそんな事をして」


 シズクは、わざと、チュチュに冷めた目を向けた。


「女王様。冷たいむぅぅぅぅ」


 チュチュが嬉しそうな顔をする。


「チュチュオネイ達にそんな話をされても困りますめ。自分達がいない未来の事よりも、今の事の方がチュチュオネイ達には大切ですめ」


 チュチュオネイが、ソーサを見つめた。


「なるほど。確かに、その通りかも知れません。けれど、カレルさんに気を使ってはいませんか? 貴方達の子孫にも関係があるかも知れない話なのですよ。戦争などが起きて、貴方達の子孫の誰かに不幸な事が起きるとしても、そう言い切る事ができますか?」


 ソーサが、チュチュオネイとチュチュの乗っている猫ちゃんの傍に行く。


「気は使ってないですめ。けど、それは、そんなふうに言われると、どう答えていいのか、分からなくなりますめ」


「ソーサ。貴方は、未来を変えると、言ってるのですのよね? どうやって変える気なのですの?」


 カレルが、チュチュオネイとソーサの会話を遮るように言う。


「いくつかの方法を、同時に進めて行くつもりです。未来を変えるというのは、一筋縄では行きませんからね」


「そういう事を聞いてるのではありませんわ。具体的な方法の事を聞きたいのですわ」


「具体的な方法というのは、例えば、我ら新世界の人類を、元の大きさの、旧世界の人類の大きさにしようとする事を、どうやって妨害するのか、というような、そういう方法の事ですか?」


 カレルが睨むように、ソーサを見た。


「今、妨害、と言いましたわね。貴方達は、そういう行為をする気なのですの?」


「しますね。どんな事でもします。未来を変えるというのは、先ほども言いましたが、一筋縄では行きませんから」


 ソーサがそこで言葉を切って、また、何やらポーズをとる。


「真面目に話をして欲しいですわね」


「これはすいません。でも、いたってまじめに話しているのです。今のは、ちょっと考えたかったので、やったのです。ポーズをとると、いい考えが浮かんだり、考えが素早くまとまったりする事があるのです」


 ソーサが、また、言葉を切るとポーズをとった。


「分かりましたわ。それで、今は、何を考えてるのですの?」


「ラプラスの悪魔は、確定的な一つの未来を予知できない事もあるのです。そういう場合は、いくつかの異なった未来を予知するのです。我らは、その未来予知、未来の可能性を、一つ一つ、潰していかなければならないのです。先ほども、言いましたが、予知する未来が遠ければ、遠いほど、未来予知の精度は落ちるのです。精度が落ちるという事は、どういう事かと言いますと、起きるであろう出来事の可能性が増えるという事なのです。いや、あれですかね。こういう言い方だと、分かり難いですかね。言い方を変えましょうか。すぐそこにある未来であれば、一つの未来予知、一つの可能性しか導き出されないのです。ですが、予知する未来が、遠くなれば遠くなるほどに、未来予知の数が増えるのです。とは言っても、日々精度は上がっていますので、今では、多くても、十個くらいですけれどもね」


「貴方が考えてたのは、まだ、あまりまとまってない、ただの補足説明だったのですのね。それで、その十個の、これから来るかも知れない未来を潰すために、貴方達は複数の方法を考えて実行するという事ですのね。そして、その中には、武力行使も含まれるという事ですのね?」


「そういう事になります」


 ソーサが言ってから、慇懃無礼なお辞儀を一つした。


「わたくしは、この世界を管理してるAIですわ。今の言葉を聞いてしまっては、貴方達をこのままにしておく事はできなくなりますわ。できれば、発言を撤回してもらいたいですわ」


「撤回しなければどうなりますか? 我らとて、貴方達にこういう話をする事がいかに危険であるかは承知しています。その上で、こうして話しているのです」


「この新世界になってから、生み出された国が、滅ぶという事は、今までに、一度もありませんでしたわ。けれど。このままだと、一つの国が亡びる事になるかも知れませんわ」


 カレルの声が、今までに聞いた事のないほどの、真剣な物になった。


「おいおい。二人とも、そう、いきり立つな。なあ、AI。お前は、どうして、シズクをここに連れて来たんだ?」


 キッテが、至極、呆れたように言う。


「そう、でしたわね。こういう事にならないようにと、一緒に来てもらったのでしたわ」


 カレルが、微かに目を伏せてから言い、伏せていた目を上げてから、シズクの方に顔を向けた。

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