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五十一 そんなこんなで

五十一 そんなこんなで


 ナノマが何かを言いかけて、口を閉じると、また、何かを考えているような顔をする。


「ダノマの事はどうするダノマ? このまま、ダノマをダノマのままでいさせてくれるなら、頼みがあるダノマ」


 ダノマが、言い終えると、シズクを見つめた。


「私? 駄目だよ。私、何もできないんだから」


 シズクは慌てて顔を上げ、上げた顔を左右に振る。


「ダノマの事は、ダノマを無効化した、ナノマに決めてもらうというのはどうですの?」


 カレルが皆の顔を見ながら言った。


「そうだな。俺はそれでいいと思うぞ」


「チュチュは反対む。やっぱりここは女王様が決めるべきむぅぅぅぅ」


「チュチュオネイはカレルやキッテ様に賛成ですめ。ダノマが何かをしたら、対応するのはナノマになると思いますめ。だから、ナノマが決めるのが、一番いいと思いますめ」


「むぅぅぅぅ。お姉ちゃんの裏切り者むぅぅぅぅ」


 チュチュが、チュチュオネイに向かって、いーっという顔をする。


「ナノマは、シズクに決めてもらいたいナノマ」


 ナノマが、片方の手を伸ばすと、シズクの着ている服の裾の端を、きゅっと掴んで言った。


「ナノマ。ごめん。私じゃ決められない」


 シズクは、ナノマの方を見て言ってから、助けを求めるように、皆の顔を見回す。


「ナノマはいい事を言ったむぅぅぅ。それで決まりむぅぅぅぅ」


 シズクと目が合うと、チュチュが満面の笑みを浮かべて言う。


「旧世界の人間ダノマ。いや、シズクという名前みたいだから、ダノマもシズクと呼ぶダノマ。シズク。ダノマを消さないで欲しいダノマ。そして、ダノマを傍において欲しいダノマ。ダノマの頼みとは、傍において欲しいという事なんだダノマ。シズクの傍にいて、少しでも、あの頃の、旧世界の人間がいた頃の、雰囲気を、感じたいんだダノマ」


 ダノマが、シズクを見つめる目を、涙で潤ませながら、そう言った。

「ダノマは、ずっと寂しかったのかも知れないな。俺にもなんとなくだが、その気持ちは分かる。そんなダノマの前に、シズクという旧世界の人間が現れてしまったんだ。このまま消してしまうのは、かわいそうだ」


「キッテ。それは、言い過ぎですわ。そんなふうに言ったら、シラクラシズクの意見が変わってしまいますわ。シラクラシズク。ナノマがああ言ってるので、わたくしも、ナノマの意志を尊重しますわ。けれど、キッテの言葉には、耳を貸さなくていいですわ。自分で考えた事をちゃんと言って欲しいですわ」


「やっぱり、私が決めないと駄目なの?」


 シズクは、キッテとカレルの顔を交互に見てから、その場にいた全員に問うように言った。


「シズク。お願いナノマ」


 ナノマがシズクに抱き着いた。


「わわっ。ちょっとナノマ」


「むぐうぅむぅぅ。ナノマ。いい加減にするむぅぅぅ」


 その姿を見たチュチュが言ってから、むぎぎぃぃむぅぅぅ。と至極悔しそうな顔で唸る。


「シラクラシズク。さあ、早く決めるのですわ。でないと、また、この子達が揉め始めてしまいますわ」


「分かった。分かったけど、ちょっとだけ待って」


 どうしよう? ダノマはあんなふうに言っていたけど、本当に信用していいのかな? 何かあったら、ナノマが一番に攻撃されそうだし。他の皆にだって、何かがあったら困るし。けど、ダノマを消してしまうっていう決断なんて、絶対にできないと思うし。シズクは、あれやこれやと考え出して、頭を抱える。


「シズクが悩んでしまってるダノマ。もう、いいダノマ。折角出会えた旧世界の人間である、シズクがダノマの事で、悩んでる姿は見たくないダノマ。そんな事をシズクにさせるのは、ダノマの本意ではないダノマ。ただ、このまま終わるのは、嫌だダノマ。ナノマ。ダノマと勝負して欲しいダノマ。ダノマが勝ったら、ダノマがさっき言った通りにして欲しいダノマ。ダノマが負けたら、ダノマを消していいダノマ」


 ダノマが、そう言ったので、シズクは、思考の中から抜け出て、ダノマの方を見た。


「さっき負けたばかりなのに、また、勝負ナノマ? ナノマに勝てると思ってるナノマ?」


「勝負の方法をダノマが考えてる方法にしてくれれば、勝てる可能性はじゅうぶんにあると考えるダノマ」


「分かったナノマ。シズク。ダノマのこの提案を受け入れてもいいナノマ?」


「えっと、皆は、どう思う?」


 シズクは、キッテ、カレル、チュチュ、チュチュオネイの顔を見る。


「ナノマとシラクラシズクがいいなら、それでいいですわ」


「俺もそれでいい」


「チュチュは女王様が決めた事に従うむぅ」


「チュチュオネイも女王様の言葉に従いますめ」


「もう。皆、私にばっかり押し付けて」


 シズクは言って、溜息を一つ吐いた。


「じゃあ、まずは、ダノマ。私の事を気遣ってくれてありがとう。それから、ダノマのその提案でやってみよう。でも、危ない事は駄目。ナノマとダノマが怪我をするような勝負は禁止。それと、ダノマが負けた時は、すぐに消しちゃうんじゃなくって、本当に消していいかどうか、皆で話し合うようしよう」


 シズクは、もう一度、今度は、ナノマとダノマも含めた、全員の顔を見た。

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