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二十四 女王、悩む?

 先ほど、かかかかかか。と鳴いた烏が、シズクの動向を気にしているかのように、シズクの方に顔を向けて来る。


「ナノマ。じゃあ行くよ」


 自分の方に顔を向けて来た烏の動きに、気が付いていないような振りをしながら、シズクは、そう言った。


「了解ナノマ。烏達を驚かさないように、ナノマは小さくなるナノマ」


 ナノマが言い、ナノマが変形していた、オウギワシの姿が、空気中に溶けるようにして消えて行く。


「この大きさなら平気だと考えたナノマ」


 シズクの掌よりも、小さいオウギワシの姿になったナノマが、シズクの顔の前に現れると、小さな翼を動かして飛びながら、シズクの頭の上まで行き、輪っかの周りをくるくると回る。


「じゃあ、改めて。行くよ。飛べ」


 しずくは言うと、片方の腕を真上に向けて伸ばし、拳を握る。


 背中の翼が、音を立てて、四枚に分かれ、下側にある一対が大きく羽ばたき、シズクの体がすーっと宙に浮かび上がってから、すすすっと、真上に向かってゆっくりと飛んで行き始めた。


「これは、また、なんていうか、ナノマに乗っていた時とは、違う感じがして、なんていうか、凄くわくわくする」

 

 テンションが上がって来たシズクは、もう、このまま、びゅーんって、空を飛び回りたい。と思ったが、すぐに、駄目駄目駄目駄目。今は、烏ちゃんのためだから。我慢我慢。と思い直しながらも、ついつい、普段の自分の背の高さでは見る事のできない、周囲の景色に気を取られて、意識が散漫(さんまん)になってしまう。


「シズク。烏達が逃げて行くナノマ」


「え? 本当に?」


 ナノマの言葉を聞いたシズクは、反射的に、言ってから、うわっ。烏ちゃんの事に、全然集中できてなかった。と思い、烏達のいる方向に顔を向ける。

  

「ごめん。やっぱり、駄目だったね」


 シズクは自分達から離れるようにして、飛んで行く烏達の後ろ姿を見つめて溜息を()く。


 シズクの腕の中にいる烏が、不意に翼をばたばたと動かしたので、シズクは腕の中にいる烏の方に顔を向けた。


「烏ちゃん?」


 シズクは言って、どうしたんだろう? と思う。


「シズク。この烏は仲間達の所へ行きたがってるように見えるナノマ」


「仲間達の所に? でも、そうだったとしても、また、攻撃されちゃうかも知れないし。どうしよう」


「ナノマが一緒に行ってみるナノマ。何かあったら守るナノマ」


「ナノマ。……。うん。そうだね。それがいいと、思う。分かった。ナノマ。お願い」


 シズクは言うと、自分の腕の中からだと、うまく飛ぶ事ができないかも知れない。と思い、木の枝に近付いて、烏をその上に移動させる。


 シズクの腕の中から、木の枝に移った烏が、シズクの顔を見つめて、かあ。と鳴き、顔の向きを仲間達の方に向けて、翼をはためかせ、飛び上がった。


「烏ちゃん」


 シズクは、烏ちゃん。頑張って。と思いながら、飛んで行く烏の姿を見つめて呟いた。


「では、行って来るナノマ」


「うん。お願い。ナノマも気を付けて」

 

「任せるナノマ」


 ナノマがそう返事をして、シズクの傍から離れ、シズク達と一緒にいた烏を追いかけて行く。シズクは、しばらく待ってから、木々の幹の陰に隠れるようにしながら、一定の距離を保ちつつ、ナノマ達を追いかけ始める。


 シズク達と一緒にいた烏が、仲間達の傍に行き、近くにあった木の枝に止まると、仲間達に向かって、かあーかあー。と鳴いた。


 仲間達のうちの何羽かが、一斉に鳴き声を上げ、シズク達と一緒にいた烏に襲いかかる。


「やめるナノマ」


 ナノマの体が、急激に膨らむようにして大きくなる。襲って来ていた烏達と、それを見ていた他の烏達が、ナノマの姿を見た途端に、酷く狼狽(ろうばい)しながら、逃げ出して、ナノマとシズク達と一緒にいた烏から、離れて行った。


 シズクは、ナノマとナノマが守った烏の傍に行くと、手を開いて、ここで止まれと言って、空中で静止をしてから、逃げて行った烏達の方に目を向けた。


「この烏を守る事ができてよかったナノマ」


「うん。ナノマが傍にいてくれてよかった」


 シズクとナノマが会話を始めると、ナノマが守った烏が、シズクに向かって飛んで来て、シズクの肩にとまった。


「シズク。もうこうなったら、やっぱりシズクが飼ってあげた方がいいナノマ」


「うーん。でも、私なんかに飼えるかな」


 シズクは肩の上にいる烏の頭をそっと撫でる。


「ナノマも飼うのを手伝うナノマ」


「そう言ってくれると、凄く嬉しいけど、それでも、なんか、心配」


「けど、このままにはしておけないナノマ」


 シズクは、そうだよね。とにかく、ここには、というか、この子は一人にはしない方がいい。一人にしたら、また、仲間達の方に行って、襲われちゃうかも知れない。と思う。


「じゃあ、とりあえず、この子を連れて、帰ろっか。それから、また、考えよう」


「了解ナノマ。では、シズク。このまま皆で飛んで帰るというのはどうナノマ?」


「このまま、飛んで帰る?」


「そうナノマ。シズクはさっき飛んだ時、凄く楽しそうだったナノマ」


「それは」


 シズクは、飛ぶのは凄く楽しいけど、烏ちゃんの事、何もできなかったし、これからの事もまだ何も決めてないのに、楽しんじゃっていいのかな。と思う。

 

「シズク。では、行くナノマ。ついて来るナノマ」


 ナノマが言って、上昇を開始した。

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