ああ、そうか、これが……(悲恋といえば悲恋、男主人公)
軽めな悲恋の話です。男主人公。
またおふざけ系と思われるかもしれませんが、そうでもないです。
2600文字
9/26 後書きに追記しました。誰の需要もないユウジの3問目以降の答えです。本編は何も変えていません
※誤字を修正しました
最近付き合いだした彼女から、A4サイズのコピー用紙を渡された。
そこには手書きで質問が書かれていた。俺のことを知りたいから答えを記入してほしいと言う。
なぜメールもあるのに紙なのかとか、直接聞けばいいのにとか、色々と聞きたいことはある。けれど素直に答えることにしよう。
【小松絵里からの質問】
Q 目玉焼きは何派? A(空欄)
これは、半熟か固めか聞いているのか、醤油かソースか聞いているのか分からない。保留にしておく。
Q 卵焼きは何派? A だし派
Q 味噌汁は豆腐と? A(空欄)
ジャガイモなら玉ねぎと即答できる。
豆腐は答えが多すぎる……俺はなめこ派だ。なんとなく書きにくい。ワカメやネギと書くべきなのだろうが、それは嘘になる。だから空欄だ。
Q 朝食は米派?パン派? A 米派
Q 猫と犬ならどっち派? A(空欄)
不用意に答えてはならない質問だ。ちなみに俺は柴犬派。
Q ショートとロングなら? A(空欄)
髪の話だろうが、これも不用意に答えてはならない質問だ。俺はボブ派
Q 夏と冬なら? A (空欄)
……ざっくりしすぎて質問の意味がわからない
Q ファーストキスは何味? A(空欄)
答えてもお互いに得がない質問だ。俺のファーストキスは……フリスクの匂いだな…菜穂元気かな…
Q 煮物とシチューなら? A シチュー
きっと俺に作ってくれるつもりなのだろう。シチューなら失敗がなさそうだ。煮物はまだ早いだろ。
Q 母親と妻、どちらに味方する? A 妻
ちょっと……いや、だいぶ気が早いな! 付き合ってまだ3日だぞ?
Q 私のこと好き?愛してる? A 好き
さすがにまだ愛は早いだろう。
――お、質問はこれで終わりと書いてある。なになに……書き終わったら写メを送って…か。空欄だらけだけどいいか
俺は言われたとおりに写メする。
ありがとうちょっと待ってねと返信がきたから、しばらく待っていたら、再びメールが届いた。思ったより早い。
そこには……
『厳正なる審査の結果、今回のお付き合いは見合わせていただくことになりました』 の文字
はぁ?
『どういう意味』 俺はすぐに返す。
『沢村さんとは付き合えないって意味です』 こちらもすぐに返信がきた。
『いやなことを書いたならごめん』 とりあえず謝る。
『そういうことではありません』
――さっきから他人行儀な言葉遣いだけどなんなんだ?
『じゃあなに』
しばらく間があいた。
『ユウジから告白されて』 ……はぁ?
ユウジってあれか、帰りが遅くなる日に職場に迎えに来る幼馴染だ。小松さんの親に頼まれて来ているだけで、誤解されるような仲じゃないと言っていた。
考えていたら、写メが送られてきた。
何かが書かれた紙だ。見覚えが……拡大してみると、先程のQ&Aの用紙だ。俺のものではない。
『ユウジのこたえです』
ああ、同じ質問を奴にもしたのか。
えっと、目玉焼きの質問は…
A、俺はどちらも好きだ。絵里は中3までは半熟の目玉にしょうゆを少し垂らすのが好きだったけど今はソース派だよな!
――これ、ありか?
卵焼きの質問は……
A、俺は塩派だけど、絵里は砂糖だよな。運動会で俺の卵焼きを奪って塩味だったから涙目で怒られたっけ、懐かしいな。
――あーわかるわかる甘いと思って食べた時の騙された感な。
……わかるわかる馬鹿でもわかる。
ああ、そうか、これが当て馬というやつかと。
もちろん、俺が当て馬の方だ。
俺と小松さんが付き合う事になったから、ユウジは気持ちを伝えた訳だ。小松さんもユウジを試していたんだろうな。
――何が厳正なる審査だよ、茶番もいいとこだ。
『了解、お幸せに』 とりあえず別れは告げる。
『ごめんなさい。でも沢村さんも私のことをそこまで好きじゃなさそうですし』
確かに幼馴染が書いた最後の質問の答えを見たらそう思うよな。
Q 私のこと好き?愛してる?
A、君をずっと見続けてきた。これからは一番近くで君を守りたい。絵里、愛してる。
……俺にその言葉は書けないよさすがに。付き合って3日目だし。
『そうだな』 簡単に言葉を返す。
『渡辺さんとかどうですか? 沢村さんのこと、仕事ができてカッコいいって言っていましたよ』
俺は呆れて、メッセージを無視する。
『それに渡辺さん、華奢なのにDカップありますよ!』 続けてくだらない内容のものがきた。
『もういいよ。今後は俺にメールはするなよ。あと明日のバイトはちゃんと来いよ』
くだらないやりとりは時間の無駄だ。
――それに……俺は足首派だ。バストなんてAでもDでもなんでもいい。
小松さんは3ヶ月前、俺の職場にバイトとして入ってきた。前はどこかで社員として働いていたが、人間関係に疲れて辞めたらしい。しばらくアルバイトをしながら次の仕事を探すと言っていた。
顔も可愛いし何より足首が理想だった。恋人はいないというから食事に誘った。
話してみて良い感じだったのもあり、試しに付き合おうかと言ったのは俺だ。彼女も迷いもなく了承したのになんだかなぁ……
渡辺……か。足首はイマイチだけど性格は良い子だ。確かに最近よく目が合う。尽くしてくれそうなタイプ。
だけど、それでいいならとっくに声をかけてる。
『はーい』 もう返事はこないと思っていたが軽いのが返ってきた。
――この軽さも嫌いじゃなかった。
それにしても幼馴染を選ぶとはなぁ……
社長息子らしいけど家族経営だし、結婚したらいいように利用されるだけだろ。多分小さい頃から家ぐるみで目をつけられてたと思うぜ?
俺は次男だ。兄貴は結婚して子供がいるし、孫と騒がれることもない。
いま住んでいるマンションも賃貸ではなく持ち家だ。貯金もある。安定した生活を与えられると思う。
35歳でこれなら悪くないと思っていたが……
――でも、それを言ったところで幼馴染を選ぶのだろうな……うぅ…自分で考えてダメージを受けてしまった。
なんだか、寂しい。
パートナーがいてもいいように2LDKを購入した。あまり価値が下がらなそうな物件だ。手狭になって売る事になっても心配ないように。
でもほとんどリビングで生活をしていて、部屋を持て余しているのも事実だ。無駄な買い物とは思いたくない。
俺と生涯をともにしたいと思ってくれる女性は現れるのだろうか……
ふと、先程も考えた渡辺千晴の穏やかな笑みが脳裏に浮かぶ。
交際、結婚、家庭……2人で過ごす姿を想像する。
Q 渡辺千晴と生涯を共にしても良い?
A 悪くはない、な。
俺はこれからの渡辺千晴へのアプローチを考える。
彼女は29歳。きっとうまくいく。
けれど、冷静な自分がもう一つの答えを出す。
――ああ、そうか、これが妥協するということだ。
きっと渡辺もそうかもしれないな。
お似合いでいいかもしれない。
俺は、小松さんからの質問用紙を見下ろす。
――めちゃくちゃ幸せになった俺らを見せつけてやる。
俺は紙をクシャリと丸め、ゴミ箱に放り投げた。
前回一週間後くらいに投稿しますと書いたら、なぜかスイスイ書けました。
なので、次はまた一週間後くらいに投稿を予定しています、と言っておきます。
9/26追記 ユウジの3問目以降の答えです。本編を書いた時は考えていませんでしたが、私がスッキリしなかったので、考えました。
……こんなところまで読んでくれた方だけの特典ですよ! と言えたらよいのですが、読んで損した!と思われる未来しかみえません…
【ユウジのアンサー】3問目以降
Q 味噌汁は豆腐と?
A 豆腐ならなめこだけど、サツマイモの味噌汁が一番好きだ。
Q 朝食は米派?パン派?
A 米派だけど日曜はパン
Q 猫と犬ならどっち派?
A 犬かな。気まぐれな猫はそばにいるからな
Q ショートかロングなら?
A 髪の話だよな? 高二だっけ、高瀬先輩に彼女ができた時にショートにしたよな。思い出すからショートはイヤだな。
Q 夏と冬なら?
A 夏の白いワンピース、冬の白いコート、どっちもよく似合うから選べない。
Q ファーストキスは何味?
A (空欄)
Q 煮物とシチューなら?
A 絵里は俺の母さんの煮物が好きだよな。同じ味はすぐには出せないだろうけど、心配しなくていいぞ。母さんが一から料理を教えるって言ってるからな。
Q 母親と妻、どちらに味方する?
A まずは双方の言い分を聞く。敵味方ではなく、誤解があったら誤解を解く。だからおれは中立だな。
【主人公がユウジの答えを後日改めて読んだ感想】
書いてと頼んだのに空欄だらけで送信するような、癖の強そうな男 vs 色々こじらせた幼馴染 の対決だったようだ……
この答えを見てユウジを選んだのなら、小松さんとは始めから縁がなかったんだな。
ユウジに告白された嬉しさで、お花畑になっている状態のまま答えをしっかり読んでいないなら、後悔するような内容のオンパレードだけどな。
どちらにしろ、俺にはもう関係ないや。お幸せに。
おしまい
読んでくれた方、私のおふざけに付き合ってくださりありがとうございました。
読んで損したと思った方、申し訳ございません…
後書きにいっぱい書くのが少し憧れだったのもあり、やってしまいました。




