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結婚しないなら同棲は勧めません (別れ)

長い同棲生活で彼氏が夢を追いかけたいと仕事をやめた。夢を応援できない気持ち、先が見えない不安の中、別れを決意するお話。お別れします。

2300文字くらいです


※不揃いの部分を揃えました。内容は変わっていません。


結婚を考えるなら同棲はするべきってよく聞く。

私も相手の性格をよく知る為には必要だと思う。 

でも、別れるのが面倒なのも先に教えておいてほしかったな。経験者の方々。 



「なーに、またため息ついて。幸せが逃げるよ」

 綾香は抱っこ紐の中で眠る存在に目を細めながら

「そうだよねぇ〜あゆとくん」と頭を撫でる。


「今日はよく寝てるね」

「朝からお出かけで疲れたみたい」

 今は土曜日の午後3時、ショッピングモールのフードコートにいる。

 

「ごめんねー買い物に付き合わせて」

「いいよ〜私も気晴らしになるし。それより太郎君となんかあった?」

「うーん、このままでいいのか悩んでて」

「まだ定職ついてないの?」

「うん……」

  

 私は1歳半になる友人の子供を見て、もう1度ため息をつく。子どもを産んで育てる覚悟もお金もない。


「どうしたのよ、ほんとに」

「……太郎と結婚して子供を育ててっていうビジョンが浮かばなくて」

「あ〜、漫画家志望だっけ?」 

「うん、本人は30歳までに芽が出なかったらスッパリ諦めるって言うんだけど……」

「あと3年あるね」


 

 同じ会社の新入社員として出会って、付き合いだした。実家からの通勤が1時間以上かかるからと、彼が1人暮らしの私の家に時々泊まるようになって、そこからズルズルと同棲が始まった。


 ワンルームだから、プライバシーはない。部屋も狭いからいつもイチャイチャしていて、始めは楽しかった。

 

 同棲して3年目、彼が会社を辞めた。

 突然「やっぱり夢を叶えたい」と、漫画家になりたいという夢を語り出した。

 3年以上付き合っていたけれど、彼が漫画を描く事も、絵が描ける事も知らなかった。


 見せてもらったA4サイズのノートに描かれた漫画は、異世界で強くなってとか、そんな感じだ。

 正直、つまらないと思った。絵も好みじゃない。

「へー、絵が上手いね」としかコメントできなかった。


 仕事を辞めたから、バイトを始めたのはよいけれど、働く時間はセーブしているから、収入は半分くらいに減った。



「応援できなくてさ」

 私が本音を漏らす。 


「太郎君の夢?」

「よく、芸人さんとかで売れない時代も支えたって奥さんいるでしょ」

「うん、いるね」

「私には無理。だってやめてほしいって思ってるから」

「……別れるの?」

「もう不満しかなくて。楽しかった思い出はあるけど、この先の楽しいことが想像できない」

「例えばさ、売れっ子になったりしても後悔しない?」


「良かったねとは思うだろうけど……そうじゃなくて、会社を辞める時に私に相談しなかった事とか、家事は全部私がやってる事とか……」


「ふぐぅぅ…」  

 寝ていたあゆと君がむずがりだして、綾香が背中をポンポンとたたく。

 

「……なんかごめん。愚痴ばっかりだ」

「全然愚痴じゃないよ」

「お互い、話し合いができる関係じゃないから、もうダメかなって……」

「そっか」

 綾香はそれだけ言って、あゆと君をあやしている。

 

 同じ大学だった綾香も、同棲していた相手との間に子どもができたから結婚した。

 自分の時間が欲しいとか、ゆっくり寝たいとか、子育ての苦労をよく聞く。  


 綾香も以前は化粧をしない日はなかったし、服装も気を配っていた。今は自分にかける時間はないけど、子どもが可愛いからいい、と化粧っ気のない顔で柔らかく笑う。 



 姉も同じことを言っていた。いつも幸せばかりでない事も知っている。


 ――それでも、2人とも支えてくれる旦那さんがいる。太郎は多分そういう存在にならない


 

 

 ***** 


 

 悶々と悩みながらも、言いだすきっかけがなくて

日々は過ぎてゆく。


 ある日、ノートパソコンの前で居眠りする太郎に声をかけようとして、ディスプレイを見て固まった。


 風俗のお店を検索していたらしい。


「たろう、たろう」

 揺り起こすと、状況を把握したのか、慌ててノートパソコンを閉じる。これは、取材するから、とか言い訳を始めた。


 聞けば、普通の漫画はやめて成人向けの漫画に路線を変更したいと言う。

 

「ふーん」

「色々と、プロの話を聞こうかなって…」

「……お金は?」

「えっと……」

「それが太郎の言う夢? 漫画ならなんでもいいの?」

「まずは名前を売ってからまた描きたいものを描くつもりなんだ」

 

「それはいいけど、だったら別れて」

 きっかけさえあれば、躊躇いなく言えた。

 

「何言ってんだよ」

「別れてほしい。太郎は実家に帰ればいいから問題ないでしょ」

 太郎は長男だ。家に帰っても問題ないだろう。

 そもそも家族に会わせてもらった事もない。結婚とか何も考えていない証拠だ。


「それは……だめだ」

「なんでダメなの? 私の事が好きだから? それとも怒られるからって実家に仕事を辞めた事を黙っているから? それとも実家で成人漫画なんて書けないから?」 

 畳みかけるように言う。

「ミオが好きだからに決まってるだろ!」

 

「そうだとしても、私がもう好きじゃないから」


 もう、決めてしまったら戻る気はない。

 

「太郎の夢を応援してないし、太郎の家政婦でもない。応援してくれる子を探してよ」

「ミオ……急になんだよ、ヤキモチか? 風俗なんて行かないから機嫌なおせよ」


 太郎が私の腰に手を回してくる。

 鳥肌が立って、もう無理だと痛感した。

 

 私は家を飛び出して、綾香に電話した。



 ****



 別れる時は、間に入るから連絡してと綾香から言われていたから言う通りにした。


 太郎と2人で話し合う選択肢はなかったから。

なし崩しに抱かれて終わるだけなのが想像できるし、

話し合いにならない事も分かっていたから。


 綾香の旦那さんも交えて、私の気持ちを伝えた。

 彼は意地になっていたけれど、結局は彼の実家に事情を話して、彼を引き取ってもらった。


 

 私も引っ越すことにした。


 思い出の多い部屋をあとにする時に、

 彼の声や笑顔を思い出した。好きだよと耳元で囁く声が好きだった。


 私は思い出を閉じ込めるように、ドアをゆっくり閉めた。


 




同棲も期間を決めた方が良いと思うけど、なかなかうまくいかないですよね…


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