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好きとわかるのは突然 (初恋の自覚から告白まで)

ちょっと遊んでそうな高校生の男の子が

実は奥手で、色々考えるお話。

ハッピーエンドといえばハッピーエンド。

うじうじと3,000文字悩んでます


※不揃いな部分を揃えました。内容は変わっていません



 楓くーん、

  また寝てる〜 

   もう終わったよ〜


 

 俺は机から顔を上げ、思いきり伸びをする。

 自然と、廊下側一番前の席に視線がいく。


 ――もういない。帰るの早いなぁ



 俺が最近気になる彼女……野村サンは、

 いつも本を読んでいる。

  

 前髪が目にかかり、ダサい眼鏡をして、

 視線は常に下を向いている。

 猫背で姿勢も悪い

 眼鏡を取れば美少女、とかでもない。

  

 でも、気づくといつも彼女を見ている。

  

 きっと、俺の目を引く何かがあるはずなのに、わからなくてもどかしい。


 俺を起こした女の子に視線を戻す。

 名前は、なんだっけ

  

 猫目でクルクル変わる表情   

 元気系っていうのかな

 薄く化粧もしてる

 制服を着崩して

 出るとこ出てるしスタイルがいい。


 あと俺を好きだと隠さない。


  

「楓くん、今日はうちの親、帰りが遅いから来る?」

 

 いつもこうやって躊躇なく俺を誘うビッチちゃん。


「どうしよっかなぁ〜」

「おいでよー」

「……あー、行きたかったけど、今日は先約あったわ、また今度な」

「絶対だよ?」


 恥ずかしげもなく俺に腕を絡めてくる彼女。

 もちろん柔らかい胸も押しつけてくる。

 

  そういうの、ホントは嫌だ。


  好かれるのは悪い気はしない。

  でも興奮しない。

  その気にならない。



 

 ***


 今日も野村サンを盗み見る。


 磨けば光るタイプでもない。

 前髪は長すぎだから顔を出したほうがいいな

 もうちょっと笑ってほしいなぁ

 ワイシャツのボタン、せめて上の1個は外そうよ

 あと背筋のばそう。


 指は綺麗だ

 手首も細くて

 白い肌もいい 

 

 あ、当てられた。ちょっと慌ててる

 意外。もっと冷静な子かと思ってた

 顔が赤くなって可愛い


 声も可愛い  

 小さくて心地よい声

 唇も…好みだ

 



 でも付き合うとなると……

 ……ん? 俺、いま何を考えてた? 

 

 

 自分が何を考えていたのか忘れて首を捻っている間に授業は終わっていた。

 

「珍しく起きてる〜」

 

 前の席に、女の子が座る。

 名前は…なんだっけ

 カラコンいれて、派手めな子


 なんでこんなつまんない俺に話しかけるんだろう

 見た目がいいのはわかってるけど、

 でもそれだけなんだよなぁ

 話すの苦手だし 

 あー、家が金持ちだからか? 

 でも俺は金を持ってない

 

 童貞ではない。 

 先輩に無理やり奪われた。

 怖かった。

 だから2回目をしようと思わない

 

 

 なんていうか、みんな進むのが早いんだよ

 何故か俺は経験豊富と思われてる。

 否定しない俺も悪いけど



「やっぱ寝てた〜?」

 カラコンの彼女が、俺のほっぺたを両手で挟む。

「チューしていい? 誰も見てないから」

「えー……」

 今はやめとく、と言おうとしたら唇を押しつけられた。どうせするなら聞くなよ

「お前な〜」

 平気なフリをしながら、野村サンの席に一瞬視線を向ける。既に帰っていたようだ。

 

 ホッとして……ん? ん? 


 俺はよく分からない感情に首を捻る。


「どしたの」 

 カラコンの彼女は何事もなかったかのように、リップを塗り直している。


「んー、ちょっとトイレ」

 ――うがいしよ 

「行ってらっしゃーい」

 

 

 廊下で、野村サンに会った。

 まだ帰っておらず、トイレに行っていたようだ。ハンカチを手にしている。


 俺の視線を感じたのか、顔を上げた。

 

 俺の顔を見てギョッとした顔をして、少し目を泳がせると、またいつも通りに視線を下に向けた。 


 ――だよね。俺って関わりたくない奴だろうし


 

 すぐに逃げると思ったが、野村サンは上目遣いで俺を見て、何か言いたげに手に持ったハンカチを握りしめている。


「何か言いたい事あんの?」

 ――あ〜〜こんな言い方、だめだよなぁ


 

 野村サンはやっぱり言い方が怖かったのか、首を横にブンブンと振って走り去ってしまった。


 ――初めて話しかけたら逃げられるとか俺の印象最悪だ……


 トイレの前で同じクラスの奴から「お前学校でヤるなよ」と、尻を叩かれた。    

 何言ってんだ、と手を洗いつつ鏡を見たら、唇にグロスがベッタリついていた。唇からはみだしているから余計目立つ。

  

「くっそ……これかよ」

 

 野村サンが俺を見ていた理由。ハンカチを俺に渡そうとしていたのかもしれない。

 

 ――もうダメだな。




 足取り重くトイレから戻れば、カラコンの彼女はいなかった。


 ザーという音で外を見ると雨が降り出していた。

 ――傘忘れた……カバン置いて濡れて帰るか。

  

 

「おっそーい!」

 靴箱でカラコンの彼女が座り込んでいた。

 

「……先に帰ったのかと思ってた」

「やっぱりバレた? ホントは雨降ってきたから待ってたんだ〜傘持ってる?」

「持ってない」

「え〜〜使えなーい」

 

 カラコンの彼女は、化粧が落ちるから濡れるのはイヤだとか、ギャンギャン騒ぐ。うるさい。


「あ…あの……」


 小さい声が背後から。たった一言だけど誰だかわかった。野村サン。

 


「傘、2本あるから……」

 と傘をカラコンに差し出す。

 左手には折り畳み傘を持っている。


「マジありがとー!! えーと誰だっけ?」

「野村サン、だよ。同じクラスなんだから覚えろよ」

 ――俺も人の事言えないけどな


 彼女は困ったように笑っているだけ。

 早くこの場から離れたいだろうな。


「じゃ、じゃあ、私はこれで」 

 やはり気まずかったようで、野村サンは逃げるようにいなくなってしまった。


「……俺、急ぎの用事があったわ、走ってくからお前はゆっくり帰んなよ。傘は明日ちゃんと返せよ」

「りょーかーい、じゃあね〜」   

 カラコンの彼女はすぐに帰る気がないのか、また座り込んで鏡をだすと化粧を直しはじめた。

 ――違う男を待つんだろうな……


 少し小雨になり、俺は走り出す。


 そしてすぐに見つけた。

 花柄の折り畳み傘の彼女を。 

 今しかチャンスがない気がした。

 

「ちょっと傘にいれて。雨が冷たくて」

 俺は断られるのが怖くて、野村サンが持っていた傘を奪い取る。

「あっ……!」

 急なことに怯えた表情の彼女。

「ごめん、何もしないから怖がらないでよ」

 野村サンは後ろを振り返る。他に誰かいないか確認したのだろう。


「あの、井口さんは……」

「井口さん?」

「……さっき一緒にいた……」

 消え入りそうな声。やっぱり心地よい声だ。

「1人で帰した」 

「……」

 とても困惑した表情の野村サン。

 眼鏡が曇っているケド、俺のこと見えてる?


「歩こっか。井口さん来たら面倒だから」

「うん……」

 考えるのを諦めたのか、素直に並んで歩く野村サン。普通に話せそうな雰囲気。


 

「あのさー、俺、野村サンのこと、多分好きだわ」

「……えっ…」

 スルッと言葉が出てきた。自分でも、そうか、好きなんだな、と腑に落ちたくらいだ。彼女の顔が見れなくて俺は前を向いたまま言葉を続ける。


「静かで、気を張らなくていいからかな。落ち着く」

「ば……罰ゲームとか、ですか」

「そう思うよな…だから返事はしないで。付き合うとかは考えてないから。だったら信じる?」

  

 横目で彼女を見ると、下を向いて鞄をギュッと抱きしめている。 


「それに俺は流されやすいし、野村サンも俺と付き合うなんて無理だろうから」


 彼女がホッとしたように力を緩めたのがわかる。


「でもさ、俺、いつも見てるよ。明日からも。

 だからさ、背筋伸ばして? 

 好きな子には自信もってほしいから」


 野村サンが目をパチクリさせて俺を見た。

 

「野村サンの声も好きだから、挨拶はしてよ。

 あと前髪も少し切った方がいいよ。あと……」

「ふふっ…」  

 野村サンが吹き出した。初めての笑顔。


「あと、笑ってくれたら嬉しい」




 

 次の日からも、特に変わらない。

 彼女が姿勢を気にして、前髪を切って、朝は挨拶してくれるようになったくらい。

 あと、目が合うと少しだけ笑ってくれる。


 

「楓く〜ん、今日ウチに来る〜?」

「なに? 俺言ったよね。好きな子ができたから、ちゃんとしたいって」


 俺も、誠実になろうと努力している。


 今はこれでいい。

 先は長いし、時間をかければ好きになってもらえるかもだから。

 


 

 

 


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