当て馬だって報われたい (スクールラブ)
当て馬ポジションと思っていた子が
ヒロインになるまでのお話。
2500文字弱です。
※不揃いの部分を揃えて誤字を修正しました。内容は変えていません。
誰だって当て馬になんてなりたくない。
ヒロインがいいに決まってる。
でもヒロインには向き不向きがあるみたいで
私は当て馬に向いているようだ。
最近は開き直って、当て馬を極めるつもりでいる。
「あの時抱き合っていたからてっきり」
「あれは夏希が転びそうになったから支えただけだ」
「じゃあ、前田さんとは……」
「夏希とは何もない! 君が好きなんだ!」
あの〜、もう帰っていいですか?
当て馬の仕事も終わりましたよね?
転びそうになった前田夏希です。
わざと、ですけどね。
あ、最後の仕上げがあった
「良かったね〜! 2人とも! なんか誤解させたみたいでごめんね〜」
軽くウインクして手を合わせる。
2人はもう私の事などどうでもいいようで、
早くあっち行けみたいな空気を出された。
――私が協力してやったのにそれかい!!
両片想いというやつは、まわりからしたら迷惑でしかない。
勝手に嫉妬されたり泣かれたり。
今回の男、壮太も隣の席で話すうちに、ちょっと気になったのは確か。
でもジト〜と壮太を見つめる熱い視線に気がついた。それがさっきくっついた美沙。
なんか、戦う前から萎えちゃって、すぐに諦めた。
私はいつもそう。ライバルがいると諦めちゃう。
全然当て馬じゃないんだよ。ほんとは。
でも、当て馬として仕事はしたよ。
壮太と四六時中、一緒に行動したり、
ボディタッチしたり。さっきのわざとよろけたやつもそう。
もちろん美沙が見てる時に。
「何やってんだか」
「ほんとにな」
先に帰ったと思っていた幼馴染の康介に、背後から声をかけられた。彼も見ていたらしい。
「見事な当て馬だったでしょ」
「あんなのお前が何もしなくてもくっついただろ。お前は自分を安売りしすぎだ」
「演出よ演出。ほら見てよ、あの2人だけの世界」
「帰ろうぜ」
康介が私の肩にポンッと手を置いて、先に歩き出す。
私は彼が触れた所に、一瞬だけ自分の手を置く。
私の初恋は康介だ。
私が初めて当て馬になった恋でもある。
あれから、あきらめぐせがついたのかも。
奪われるのは一瞬だから。
頭にくるのが、お互いになんか違ったってすぐ別れたこと。なんなんだ一体。当て馬になった甲斐もない。
****
「なっちゃんおはよー」
ノシっとおぶさってきたのは片倉海斗。本人も自覚するチャラ男だ。
こいつも私の同類。当て馬界のレジェンド。
軽いから本気だと思われないやつ。
「おはよー、暑苦しいから離れて」
「失恋で傷心中の僕は誰かにくっついてないと死んじゃうよー」
「だったら康介にくっついてなよ」
「えーーなっちゃん今日は冷たい」
「……美沙ちゃんが見てるよ」
「だからだよ」
壮太とカップルになった美沙は、海斗がずっと好きだった子だ。
私や他の子には平気で触るのに、美沙だけは触れた事がないらしい。
彼女が壮太に片想い中の間、ずっと元気づけたり慰めたりと、優しい言葉をかけていた。見事な当て馬。
――私が美沙をわざと傷つけてたんだけどね。そのまま海斗とくっついて欲しかった。当て馬も報われてほしいし。
「俺、告白したけどダメだった」
海斗が私の耳元で小さく呟く。
「ナイスファイト」
美沙は遠くからこちらを見ていて、なぜか少し傷ついた顔をしていた。
罪悪感か、告白を冗談と思ったのか。
どっちでもいいけどね。
****
放課後、海斗はまだ私にベッタリ。
「もー! まじで離れて!」
「俺は寂しいと死んじゃうんだよー」
引き離しながら、喧嘩していると
壮太と美沙が前方から歩いてきた。
「おー、お前らいつまでもいちゃついてないで早く帰れよ〜」
「ふふっ、子猫がじゃれ合ってるみたいで可愛い」
――なんか上から目線でムカつくわ。
「じゃあな〜」
幸せマックスカップルの背中を見送る私たち……
なんかむなしい。
「あーあ」
海斗がようやく私から離れた。
「今日1日頑張ったね」
「あんまり優しい言葉かけると、好きになっちゃうよ?」
「ははっ、当て馬同士でくっつくとか笑える」
「だよなぁ。冗談ついでに付き合ってみる?」
「それはだめだ」
突然後ろから腕を引かれ、私はよろけて誰かにぶつかる。
振り向くと康介が不機嫌そうな顔で立っていた。
「なんだ康介か。何がダメなの」
康介はまだ手を離さない。
「お前らが付き合うのも海斗がお前にくっつくのも駄目だ」
「ん? それって」
当て馬歴が長いのでピンときた。この展開。
「私のこと好きとか、そんな感じ?」
「そうだ。いいかげん気づけ」
「だって、女は面倒とか言ってたよね」
「お前は別だ」
「盛り上がってるとこ悪いけどサ、俺の仕事はここまでね〜」
海斗が私の横を通り過ぎる。
「あ!!」
これは当て馬のラストシーン!!
「俺の事は気にしないで。慰めてくれる子ならいっぱいいるからさ」
退場はウインク1つ。さすがレジェンドだ。
「完璧な当て馬ぶりね」
私は感心して何度も頷く。
「もう、その当て馬ってやつやめろよ」
「……ほんとにほんとのやつ?」
「何が」
「私が好きって」
「1回諦めて他に目を向けたけど、ずっとお前が好きだ」
「諦めた……?」
「工藤を好きだっただろ」
あーーー! 思い出した!!
なんか空回りしてる時期だ。康介の目を私に向けさせたくて、工藤のことを好きになるかもって言ったんだ。
好きになるかもだから、全然好きじゃなかったのに。 うわーーやらかした!
「当て馬に気づかなかったー」
「どういう意味だ?」
「両片思いだったのに、間違えたって話!」
康介は目を見開き、それから嬉しそうに笑った。
「今も有効か?」
「私も他に目移りしたけど、今も有効だよ」
私は、少し緊張しながら康介の手を握り返す。
彼は「帰ろうか」と私の手を引いた。
当て馬は、初めてのハッピーエンドに戸惑いしかない。この先どうすれば? なんか違うって振られたらどうしよう。
そんな事を考えていたら、気がついた。
康介の手汗に。
彼も緊張してるってことだ。
一緒だ。
「康介、大好きだよ」
ちゃんと言葉にだす。当て馬と勝手に思いこんで、気持ちを伝えていなかったから。
なぜか、今言うなって怒られた。
彼は一回だけ私を軽く抱きしめ、
これ以上は俺が我慢できなくなるから何も言うな、とまた怒られた。




