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私だけが彼を理解できる(鈍感な子と異常性癖の男の関係)

そんな奴おらへんやろ〜 と突っこみながら読む程度のテンションでお願いします。

 

なにエンドだろう……ハッピーではないです。

今回も3000文字くらい。


【追記】直接的な表現はしていないはずですが、R15強めな話です。変質者ともいえるので苦手な方は回避してください。


 年齢? 私と10歳くらい違うらしいよ

 名前? たくやさんだよ

 名字? 聞いたことない

 家?  知らない

 

 知っている事? うーん…車が水色?


 性格? 優しいよ。


 

 私は昨日のデートを思い出す。 人通りのないところに車を停めて、少し触れ合って……

  

 

 やるって何を? わからないならいい? ふうん


 

「…そんな感じ、かな」

「バッ…バカッ! そんな怪しい奴にノコノコ着いていくんじゃないよ!!」

「怪しくないよ」

「ばかーー! 怪しさしかないよっ!」

 

 幼馴染の睦美が私の腕をつかんできた。痛い。


「痛い」

「危機感なさすぎ! 知らない人の車に乗っちゃいけないことくらい、小学一年生でも知ってるよ!?」


「私もそれくらい知ってるよ。でも道を聞かれたから」

「だーかーらーそれがダメなんだよ? 信じられない! 高二で知らない男の車に乗るとか!」

「だって、案内してって言われたから」 

「バカバカバカバカ!!」


「もう知らない人じゃないし大丈夫だよ」

「めちゃくちゃまだ知らない人だよ!?」


 私は睦美にお茶を差し出す。ずっと大声をあげているから喉が渇いているに違いない。

「ありがと……はぁ…」

 睦美のお礼と呆れたようなため息。 



 昨日のデートの帰りに、家の近くまで送ってもらったところを睦美に見られていたようだ。

 そして日曜の朝から呼び出されて今は睦美の部屋にいる。何年ぶりだろう。さすがに高校生らしい部屋になっている。


「そんな呆れるほど?」

「本気で言ってる? あんた何されても文句言えないようなことしてるんだよ?」

「心配するような人じゃないって。大事にするって言ってくれてるし」


 睦美は首を横に振り、もう一度ため息。


「私は大丈夫だから。そういえば潤くん、今日は家にいるんだね」 

 潤は睦美の兄で大学生だ。久しぶりに顔を見かけたけれど、大人っぽくなっていた。たくやさんには負けるけど。


「兄貴の話はどうでもいいから。次はそのタクヤさんとはいつ会うの?」

「明日かな?約束はしていないけど月曜は大体会ってるから」 

「……まさか、連絡先も知らないとか言わないよね」

「……」

「馬鹿っ! なんなの? 死にたいの?」 

「バカバカ言わないでよ」

「なんで、そんな奴を疑いもなく信じられるの?」


 なんでって……私は彼を思い浮かべる。

 端正な顔立ちに清潔そうな身なり。

 あと清潔な車内。

 

 そして私の嫌がる事を絶対にしない。

  

「なんとなく?」

「……ねぇ久美、真面目に聞いて。本当にコレはダメ。絶対おかしい人だから。優しい優しくないの問題じゃなくて」

「わかったわかった。気をつけるから」


「何を気をつけるの」

 睦美の声色が低いものにかわった。私は適当に返事をしたに過ぎないから、言葉に詰まる。

 

 ――何か答えておかないと……


「わかったよ。もう会わない」

 とりあえず、その場しのぎに答える。

「約束できる?」

「や、約束する」

 

 睦美は半目で私をみつめていたが、また深くため息をついて、もう一度「約束だからね」と念押ししてきた。


 

 私は睦美の家を出て、自宅に戻る途中にある公園の前で足を止める。

 

 たくやさんとの出会いもここだ。

 大通りに出る道を聞かれた。このあたりは道が狭く、一方通行が多いからよく道に迷う車を見る。彼もそうだった。


 車に乗って道を案内してほしいと頼まれた時、大通りに出る前に私をおろすし、窓も全部開けておくから、と言われたから、私は彼を信用できる人だと思った。


 それに、カッコいい大人の男の人と会話をするだけでもドキドキしていたし、自分が役に立てたことも嬉しかった。


 初めて父親以外の異性が運転する車に乗った。もちろん助手席も初めて。

 名前や年齢を聞かれるままに答え、二人の誕生日の日にちが近いと盛り上がった。


 大通りにでる道の手前で車は停車した。

 私は、もうおしまいかぁ…と残念に思っていたら、

彼が「もう少しドライブしたいって言ったらダメかな。こんなおじさんとじゃイヤだよね、ごめん忘れて」 と、名残惜しそうな表情をみせた。


「あ、あと少しならっ!」

 私は思わず返事をしていた。


 

 それが出会い。それからは週に2回程度会うようになり3ヶ月が過ぎた。でもキスすらしていない。

 触れ合うのは、手を握ったり、髪を撫でられるくらいだ。


 あと……あれ、もあるけれどあれは触れ合いじゃない。


 あれは見るだけのもの。見るのがイヤなら目をつぶっていてもいいって言われたけれど、私はイヤじゃない。


「久美ちゃんが好きだからこうなってしまう、ごめん」っていつも謝りながら、その行為をする。

 

 彼が私の視線に恥じながらする行為。

 私はそんな彼を可愛いと思うし、自分が特別だと思える。

 

 彼氏…って思っていいよね?

 

 明日は、私の誕生日。18歳になる。

 ――誕生日、覚えてるかな。最初に話しただけだから忘れちゃったかも……

 

 睦美には会わないと約束したけれど、あとで謝ればいい。たくやさんと会わないなんて無理だから。

 


 

 私は携帯を持っていない。

 約束も待ち合わせもしていないけれど、学校から帰宅して、公園の脇に車が止まっている日はいつもデートする。


 誕生日の日は月曜日だからきっと来てくれる。

 誕生日だから、特別な日にしたい。

 キスくらいは…できるかな?   


 

 

 

 *****


 

 

 月曜日、彼は来なかった。何かあったのかな


 火曜日もいなかった。火曜は会ったことないから。

 水曜日もいなかった。どうしたのかな。

 木曜日もいなかった。病気……かな。

 金曜日もいなかった。仕事が忙しいのかも。

 土曜日……最後に会ってから1週間しか経ってない

 日曜日……日曜日も会ったことないから…!


 それからは、毎日公園を横切るたびにため息。

 2ヶ月経ち、彼は一度も現れない。

 

 ――振られた…のかな。そうだよね、あんなカッコいい人だもん。


 ようやくその事実に気づく。

 私は、その日から彼の車を探すのはやめた。


 

 それでも彼から何か言われた訳ではないので、気持ちは諦めきれずにいたある日……


 睦美が慌てた様子で私の部屋に飛び込んできた。

 ひどく興奮している。


 

「や、やっぱりアイツ! ヤバイ奴だったよ!!」

 前置きもなく叫ぶ。

「あいつって誰?」

「あの男…タクヤさんに決まってるでしょ!!」

 

 

 睦美が言うには、たくやさんは逮捕されたらしい。

今朝、ニュースになっていたという。


 17歳の女の子を車に乗せて連れ回したうえ、いかがわしい行為をさせようとし、女の子が抵抗し暴れたので暴力を振るったと……

 

 ――違う人だよ。それ。  


 私の疑いの目を感じたのか、睦美が携帯ニュースの画面を私の目の前に突き出してきた。


 ――たくやさんだ……


「本人は認めてないらしいよ。女の子に襲われそうになったから突き飛ばしただけとか言ってるって。ふざけんなだよね!」  

「……」

 

 ―― きっとそれが真実なのだろう。信じてもらえないだろうけれど。


 でも……


 来なくなった理由がわかってしまった。

 きっと彼は17歳でなければダメなんだ。  

  

 だから年齢と誕生日を最初に聞いたんだ……

 

 違うかもしれないけど、そう考えれば少し楽になる。それなら仕方ないと思えるから。 

 うん、18歳になったからならしょうがない。



 

 睦美は、だから言ったんだよ!と得意げな様子だ。

 私もそうだね、と返した。私の思いは誰も理解できないだろう。


 それから彼がどうなったのかは分からない。

あれから数年経ったいま、彼の行為が普通ではなかったことを知っても、そうなんだと思う程度だ。


 私は普通の恋愛はあきらめている。

 

 あの、倒錯的な日々を思い出すと普通が物足りないものになってしまったから。


 

 これもなにかの性癖なのだろうか、

 17歳ではない君はもう駄目だと、彼に否定されたい欲求を抱えながら、私は今日も車を待つ。




【補足】


補足というか、前回の話で、消し忘れてしまったところがありました。


幼馴染の睦美の兄の潤ですが、はじめは本編で登場していたんです。

月曜日に、たくやさんは主人公を待っていました。お別れを言うためです。


そこに潤と睦美が現れて2度と来るなと追い返すという場面を書いたのですが、なくてもいいかなと削りました。

 

 

で、序盤の潤が家にいた云々のセリフを消し忘れていました。あとで気がつきましたが、まぁいいかと放置することにしました。


あれはなんのためのセリフだったんだ? と思った方がいたらの補足でした。 


……そもそも誰も読んでない可能性とか、嫌な思いがよぎりましたが、一人くらいはいる…よね? 


 

幼馴染エンドも考えたのですが、ちょっと主人公も性癖をこじらせてしまったので、そこは何エンドが正解なのかわからなくなっています……


一応、たくやさんにとって主人公は特別な存在という設定でした。表現はできませんでしたが。

 


 

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