タレ焼き
ガラス細工の練習をしていた俺は腹が空いてきたことも有り夕食を取りに食堂に向かった。
食堂には夕食を取るために宿泊客や月の雫亭の食事が好きな客でいっぱいだった。
俺は空いている席に付くとアマンダが直ぐに食事の注文を取りに来てくれる。
「センさん、今日はどうするんだい?串焼きは付けるけどそれ以外にも食べるだろ?」
アマンダの言葉に俺は少し考えてから注文をする。
「それじゃあパンとスープ、それにサラダを頼むよ」
俺が注文をするとアマンダは「あいよ」とだけ言い厨房へと向かう。
少しするとタレの焼ける匂いが食堂に漂ってきて、話し込んでいた客たちが匂いに釣られてその匂いについて話し始めた。
「なんだ?この美味そうな匂いは?普通の焼いた匂いと違うよな?」
「ああ、なんの匂いだ?」
周りが匂いに釣られて話している間にアマンダがトレーに夕食を乗せて持って来てくれた。
客たちは匂いの元がトレーに乗ている串焼きだと分かり、こちらの様子を窺い始めた。
「はいよ、串焼きとパンとスープそれにサラダだね。
串焼き言われた通り二回つけてみたけど問題無かったかい?」
アマンダは俺の前にトレーを置きながら質問してくる。
俺は串焼きの状態を見て一口食べてみた。
メニーラビットのさっぱりとした味わいに焼き鳥のタレが絡み獣臭さを押さえてくれている。
決して獣臭い事態を消してしまうのではなくうまく串焼きのアクセントにしてくれている。
匂いがするからと言って不味いわけではない。
むしろその匂いがアクセントになっている。
だからと言って鼻を近づけただけでアンモニア臭のする肉は流石に処理しないと食べられないが・・・。
俺が美味そうに串焼きを食べていると近くにいた客の注文の声が聞こえてきた。
「注文良いか?あの男の食べている串焼きと同じものをこちらにも貰えないか?」
「メニーラビットのタレ焼きだね、500リルになるけどいいかい?」
「え?メニーラビットの串焼きは300リルじゃなかったか?」
「ああそうだよ、でもあれは特殊なタレを付けて焼いてるんだ。タレの分だけ高いんだよ」
夕ご飯を食べながら二人のやり取りを聞いていた俺は納得していた。
タレが使われた分俺に支払われる予定になっている。
その代金を稼ぐためには少し値段を上げるのは仕方ないことだ。
まあ500リルにしたのは100リル俺に支払い稼ぎも増える様に考えたんだろうな。
抜け目のないヴィルくんかな?あの子はまだ小さいけどタレに目を付けたり、しっかりしているからいい商売人になりそうだな。
俺がアマンダと客のやり取りを聞き考えているとその間にどんどんタレ焼きの注文がされていった。
焼き鳥のタレは流石に焼ける匂いが食欲をそそるからな。注文が殺到してタレが無くなったりしないよな?
部屋に帰る前に補充してから帰ろう、売れれば売れるほど俺に支払われるタレ代も増えるからな。
俺が食事している間にも客は増えていき、テーブルが満席になってしまった。
タレの匂いの破壊力高いな。一言さんも多いらしく給仕をするアマンダや子供達に質問している人も見える。
食事を終えた俺は窮屈になった食堂から出る前に一度タレを補充するために厨房に顔を出した。
厨房の中ではタレ焼きの注文が大量に入ったためウィリアムが忙しそうに串焼きを焼いていた。
ウィリアムが忙しそうにしているので俺は声を掛けるのを躊躇しているとアマンダが厨房に帰って来て俺に声を掛けてきた。
「センさんどうしたんだい?あ!タレの補充かい?ならこっちに来とくれ。
今日の内に壺屋にタレ用の壺を仕入れてきたからそれに入れとくれないかい?」
アマンダは俺が厨房の近くで立っているのを見つけると厨房に併設されている食糧庫へ連れて行った。
食糧庫には肉や野菜が箱に詰められ置かれ、塩などが袋に詰まって所狭しと置かれていた。
その中に真新しい大きな壺が置かれていたので俺がその壺に近づくとアマンダが話しかけてきた。
「その壺だよ、その壺にタレをいっぱいに入れとくれ。
今日使ったタレの料金は明日の朝食の時でも渡すからね」
アマンダはそう言い残すと足早に給仕をする為に行ってしまう。
そんなアマンダを送り出し、俺は誰も見ていないことを確認すると壺にタレを満たした。
誰も見て居なければ一瞬で終わるな。タレは月の雫亭でのみ提供するからこの壺一つ満たして置けば、タレ焼きの売れ行き次第かもしれないが、2.3日は持つだろう。
俺は壺にタレを満たすと直ぐに自分の部屋に退散することにした。
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