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それは命の泉沸く  作者: 渡海
食料集積都市レットクラッカー
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焼き鳥のタレ

少し待つとウィリアムは小さな甕を持って戻って来た。


「これで大丈夫でしょうか?」


ウィリアムは小さな甕を俺に見せながら言って来たので、俺は頷きその甕にタレを移した。

 一回瓶から移しただけでは少なかったので、俺は空になった瓶を仕舞って新しい瓶を取り出す振りをしながら何度か瓶から甕にタレを移して甕をいっぱいにした。

 

いっぱいになった甕をウィリアムは持ち上げながら中を覗き込んで中を確認してから俺に顔を向けて聞いて来た。


「これがタレですか?黒いですね。本当にこれを付けて焼くんですか?」


ウィリアムは少し躊躇う様に言うので俺は笑いながら頷き。


「心配なら試食してみればいいですよ、深いコクがあって甘味と塩味が絶妙に調整されています。

 それにそれを付けて焼くと食欲をそそる匂いがするんですよ、それがまた酒に合う。

 おっと話がそれましたね、まあ食べてみれば分かりますよ」


俺は簡単な説明をするとウィリアムに食べて見ろと促す。

 ウィリアムは不思議そうに思いながら厨房へ戻って行くので俺はそれに付いて行った。

 厨房に入ったウィリアムはメニーラビットの肉を用意すると一口大に切って串にさしていく。

 

そして俺の説明した通りに少し焼いてから一度タレに付けてから竈の火で焼き始めた。

 串焼きを焼き始めると直ぐに、肉から滴るタレと脂の焼ける匂いが厨房中を包み込む。

 その匂いに釣られて子供達が目を輝かせながら歓声を上げた。


そうだよこの匂いだよ、あ~ビール飲みながら食いたいな~。

 まあこれから食事の時に焼いてくれるみたいだし、その時の楽しみに取って置こう。

 

俺がビールの欲求に耐えている間に串焼きは焼き終わり、目の前の皿には串から外された肉が乗せられていた。

 

「焼き方は間違っていないと思うのですが食べてみてください」


ウィリアムに勧められ俺は用意されたフォークで肉を突き刺し口に運ぶ。

 口の中に入れた肉の脂はタレのコクと甘味そして絶妙な塩気と絡まり肉の旨味を増していた。

 うん!美味いな、塩でも素材の味が楽しめて良いんだけど、焼けたタレのこの味と香りが食欲を刺激するな。

 俺が肉の味を楽しんでいると一家も試食をし始めた。


「これは・・・焼いている時から美味そうな匂いがしていたから、美味いだろうと思っていたがこれは・・・」


「ホントね美味しいじゃ無い、こんなに美味いとは思わなかったよ」


「美味しいです、このタレって本当に美味しいんだ」


「エリナこれすき!あまくてしょっぱくておいしいよ」


一家はそれぞれ驚いた顔をしながら感想を言い合っていた。

 まあ塩や胡椒しか調味料が無い所に持ってきたら驚かれるのは分かる。

 卵の植物油も高いならなおさらだよな。

 

「では串焼きを出していただく時はこれを使ってください」


俺がそう言って離れようとしたときヴィルくんに手を掴まれた。


「待ってください、出来ればこのタレを串焼きを提供するときにメニューとして出したいんですがダメでしょうか?」


ヴィルくんは真剣な顔で俺を見上げながら聞いて来る。

 う~んまあダメじゃないよ、ダメではないけど俺がいないと提供できなくなるのがな。

 俺も旅が出来る様になったら色々見て回りたいし、ここにずっといることは出来ない。

 まあ大きい甕か桶に大量に入れれば年単位で持つかな?串焼き一本にそんなに大量に使わないから持つかな?


「いいですよ、でも俺が旅に出たりしてタレが手に入らなくなったらどうします?」


一応提供しても良いけど無くなった後の事を聞いてみないと困るのはヴィルくん達だからね。


俺の質問にヴィルくんは少し怯んだ。

 確かに今から将来の事を考えさせるのは酷かもしれない、けど提供できるのが俺だけならいつまでも俺が渡しに来れるとは限らないからそこは考えとかないと。

 俺は醤油作りを仕事にするつもりもない、それにタレの材料で一番難しいのは醤油より酒とみりんだ。

 あの二つは俺がどうにか出来るとは思えない、液体生成で作れるし作り方も知ってはいるけど。

 職人じゃ無いから一生かけて作り出して代々受け継ぐ位の意志が無いと無理だろう。


ヴィルくんは悩み俯いてしまう、この子も家の事を考えて行っているのは分かるけど難しいよな。

 でもなんか虐めているみたいで心苦しい。

 俺は仕方なくため息を突くとヴィルくんに提案をした。


「分かりました。俺がいる限りはタレの提供をします。

 ですがずっとすることもできませんので、お客さんの中でもいいので本気でタレ作りをしてくれる人を探してください。

 してくれる人が見つかったら作り方だけは教えます。でも作るのは一生、もしかしたら何世代にも渡って作らなきゃいけなくなるかもしれません。

 それでもやってくれる人を探さなければいけないと思います」


俺はヴィルくんの前に屈み彼の目を覗き込んで真剣に話しかける。

 醤油も酒も人が何年も試行錯誤して作り上げたものだ、それをポンと出せるからと言って何の覚悟も無い人に提供し続けるのは許されないと思う。

 何をケチな事言ってんだ、と思われるかもしれないがなにかの製法って物はそれぐらい貴重なことだと思う。

 だから出し惜しみに見えても俺は聞いておきたい、ただ提供されるだけで満足して貰いたくないから。


俺の質問にヴィルくんは俯いていたが俺の言葉を聞いて顔を上げ話し始めた。


「わかりました。僕に見つけられるか分かりませんが探すことを約束します」


ヴィルくんは顔を上げ俺の目を見て決意のこもった声で約束してくれた。

 その顔を見て俺は頭を撫でながら話す。


「まあ俺が旅先でやってくれる人を見つけるかもしれないですけどね」


俺はそう言うとヴィルくんの髪を優しく撫で話を切った。

 その後はここにいる間はタレを提供すること、それと串焼き1本売れるたびに100リル使用料として貰えることになった。

 それと同時にタレの串焼きが500リルになったが、俺に100リル払っても100リル前より儲かる様にしたらしい、ちゃっかりしてるね。

読んでくださりありがとうございます。


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誤字脱字等がありましたらご報告よろしくお願いします。


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