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永い別れの挨拶

作者: 白山 銀四郎

「アデュー‥‥‥久登」

僕の耳から離れない貴女の声。それは別れの言葉だった。


大学生となりそれなりに充実した毎日を送っていた。なにが足りないかって、それは彼女だよ。彼女が欲しかった。切実にね。しかし、そう簡単にはいかないだろうと諦めていた。

そんな時、僕は出会った。研究室が同じだった貴女に

貴女はかわいくてきれいで美しかった。僕の目は貴女に向いていた。しかしこんな僕じゃ貴女の心は向かないだろう。貴女に恋する男はいっぱいいるから。1年間君を思って過ごした。告白しようかやめようか。勇気と無謀は違うのだからと悩んだ。


僕は貴女に告白をした。貴女は先輩だったから僕よりも先に卒業してしまう。その前に僕の気持ちを伝えよう。これは勇気なのだと

「久登、ありがとう。でもごめんなさい」

あぁやはりそうだよな。

貴女が僕を彼氏にしようなどと思うことはないのだ。僕はいい先輩後輩でいさせてくださいと言った。貴女は悲しそうな顔で頷いた。貴女は卒業した。それから1年連絡は一切なかった。

貴女から電話がきた。

「身勝手な話だけど私は久登が好きだった。でも無理だった。好きと言ってくれて嬉しかった。ありがとう。アデュー‥‥‥久登」

貴女は一方的に電話をきった。それから何度電話を掛けてもメールを出しても返事はなかった。


少し経った頃、研究室の教授が教えてくれたも。貴女が亡くなったことを。

彼女は病気で助からないとわかっていた。だから誰とも付き合わなかったのだ。僕のことが好きだったのだろうかと都合のいいことを考えてしまう。

知らないとはいえ告白してしまった身勝手な僕、一方的に言って電話をきった身勝手な貴女。二人とも身勝手だったと今では思う。

そんな僕も、もう60歳になる。そして僕も病気でもうすぐ死ぬ。ずっと貴女のことが忘れられない。忘れたくないのだ。でも死んだら忘れるもなにもないのだ。

僕の貴女が消えてしまう。だから僕も言うよ、貴女に

「アデュー」



アデューとは

長い別れを告げるときのあいさつ


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