過去、出会った頃3
男にしては綺麗な顔をしているな、と思ってはいたが、いきなりそんな話になって、恋愛に免疫のなかったアルディスは、親中穏やかではなかった。
この時代、力のない者は、力ある者にぬ踏みにじられる事も多かった。
アルディスもその例外ではなかったが、今まで無事だったのは、去年までは戦士である双子の弟が守っていたが故に過ぎなかった。
アルディスの身体目的で、言いよって来る、襲い掛からなかった者、というのは今までにも山のようにいたが、こんな愛の言葉を告げられたのは、生まれて初めての事だった。
「…だめ、か…」
「だって…、急にそんな事言われたって…お前の事ほとんど知らないのに……」
俯いて、顔を赤くしているアルディス。
デュークスに告げる声は小さくて、やっと聞き取れる程度だった。
「では…俺が迎えに来るまでに、考えておいてくれないか?」
必ず、迎えに来るから、その時に答えを欲しい、と告げる。
「あの…その、もう少しだけ…待って…」
鼓動の激しい胸を押さえ、顔を上げデュークスを見るアルディス。
長い睫毛に縁取られた瞳は、深い湖のような青い色で、デュークスを見つめていた。
自分の運命に、やっと出会った、とデュークスは思っていた。
アルディスに出会う為に、自分は今まで旅をしていたのだと。
自分の伴侶にはアルディスしかいない、とそう信じ切ってきた。
「それって…本気で言ってる…?」
アルディスは未だに信じ切れず、恐る恐る尋ねる。
「俺は本気だ」
「え…と、その……」
俯いては、デュークスを見上げ、の繰り返し。
見上げる度に、真剣なデュークスの瞳とぶつかる。
「……待ってる……」
俯いたまま、口に出す。
その言葉を聞いて、嬉しそうに微笑むデュークス。
「必ず、迎えに来る。
だから…それまで、待っててくれ」
こくり、と頷くアルディス。
アルディスの名前だけを胸に刻み、手も触れずに再会を約束に、デュークスはまた旅立っていった。
その後ろ姿を見送りながら、アルディスは胸にある不安を口に出していた。
「怪我…したままなのに…」
治療はしたが、血を失い過ぎたままなのに、デュークスは旅を続けると、言い張った。
村で養生してから、出かければいいのに、とアルディスは言ったのだが、デュークスはアルディスのおかげで怪我の具合も旅には差し支えない、と笑うだけだった。
月日は流れた。
デュークスがアルディスと約束を交わしたのは、もう二年も前の事になっていた。