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風の魔法陣  作者: 紅 樹
3/26

過去、出会った頃3

 男にしては綺麗な顔をしているな、と思ってはいたが、いきなりそんな話になって、恋愛に免疫のなかったアルディスは、親中穏やかではなかった。

 この時代、力のない者は、力ある者にぬ踏みにじられる事も多かった。

 アルディスもその例外ではなかったが、今まで無事だったのは、去年までは戦士である双子の弟が守っていたが故に過ぎなかった。

 アルディスの身体目的で、言いよって来る、襲い掛からなかった者、というのは今までにも山のようにいたが、こんな愛の言葉を告げられたのは、生まれて初めての事だった。

「…だめ、か…」

「だって…、急にそんな事言われたって…お前の事ほとんど知らないのに……」

 俯いて、顔を赤くしているアルディス。

 デュークスに告げる声は小さくて、やっと聞き取れる程度だった。

「では…俺が迎えに来るまでに、考えておいてくれないか?」

 必ず、迎えに来るから、その時に答えを欲しい、と告げる。

「あの…その、もう少しだけ…待って…」

 鼓動の激しい胸を押さえ、顔を上げデュークスを見るアルディス。

 長い睫毛に縁取られた瞳は、深い湖のような青い色で、デュークスを見つめていた。

 自分の運命に、やっと出会った、とデュークスは思っていた。

 アルディスに出会う為に、自分は今まで旅をしていたのだと。

 自分の伴侶にはアルディスしかいない、とそう信じ切ってきた。

「それって…本気で言ってる…?」

 アルディスは未だに信じ切れず、恐る恐る尋ねる。

「俺は本気だ」

「え…と、その……」

 俯いては、デュークスを見上げ、の繰り返し。

 見上げる度に、真剣なデュークスの瞳とぶつかる。

「……待ってる……」

 俯いたまま、口に出す。

 その言葉を聞いて、嬉しそうに微笑むデュークス。

「必ず、迎えに来る。

 だから…それまで、待っててくれ」

 こくり、と頷くアルディス。

 アルディスの名前だけを胸に刻み、手も触れずに再会を約束に、デュークスはまた旅立っていった。

 その後ろ姿を見送りながら、アルディスは胸にある不安を口に出していた。

「怪我…したままなのに…」

 治療はしたが、血を失い過ぎたままなのに、デュークスは旅を続けると、言い張った。

 村で養生してから、出かければいいのに、とアルディスは言ったのだが、デュークスはアルディスのおかげで怪我の具合も旅には差し支えない、と笑うだけだった。


 月日は流れた。

 デュークスがアルディスと約束を交わしたのは、もう二年も前の事になっていた。

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