アルディスの計画2
くす、と笑い近づいてくるアルディスの身体から特有の香りが漂ってくる。
「アルディス…本当にいいのか?」
サフィールの首にアルディスの手がかけられ、引き寄せられる。
そして、アルディスの吐息が感じられる距離にまで近づいた時、酒場に人が入ってくる気配がした。
ドアの開く微かな音と共に、入って来た人物。
「……昨日の…」
呟かれた言葉に、サフィールから離れ、距離を取り、振り向くアルディス。
「……デュークス…」
一瞬、茫然とした表情を浮かべた後、瞳の色をきつくして、戸口に立つデュークスに声をかける。
「昨日は悪かったな、嘘吐き呼ばわりしてさ。
あれから二年も経ってるんだ、気持ちが変わったってしょうがないよな。
俺にもこいつっていう、恋人がいるしさ」
サフィールの首に手をかけながら、顔だけをデュークスに向けて言うアルディス。
そのアルディスの瞳は、この町でアルディスを知る者なら見たことのない、青い炎のような激しい色だった。
「…昨日はアルディスが迷惑をかけてしまったようだな。
俺はサフィール、アルディスの……」
「言わなくてもいい、俺には関係ない」
サフィールの言葉をデュークスが遮った。
なぜだかわからないが、デュークスはその言葉を聞きたくなかった。
アルディスはデュークスともう一度話をしてみようと、最初は思っていたものの、悔しいのと腹が立つのとで、ついキツイ態度を取ってしまう。
サフィールに、恋人のフリを頼んだのも、ついさっき思いついたもので、昨日はそんなつもりはアルディスにはなかった。
今日になって、酒場でいきなり思いついたことだった。
「何度も言うが、俺はお前を知らない。
だから、そのお前の言う二年前の約束はお前の勘違いだろう」
カウンターに座りながら、デュークスが言う。
「…お前、本当に覚えてないんだな」
あきらたように声に出すアルディス。
「お前のそれ、その護符だけど」
デュークスの襟元に輝く金の光と青い石を指す。
「これは…、俺の大切なものだ」