アルディスの計画
次の日、僅かな頭痛を友に、アルディスは酒場に出かけて行った。
デュークスに会って、何を言うとも決めかねてはいたが、とにかく、もう一度会っておきたかった。
酒場に入ると、サフィールがマスターと話をしながらコーヒーを飲んでいた。
「おはよう、かな?」
アルディスに気付いたサフィールが声をかける。
「…おはよう……。
マスター、俺にもコーヒー」
既に陽は高く、昼近くではあったが、アルディスは起きて間が無かった。
サフィールの隣の席に座り、コーヒーを受け取る。
「…昨日は…ありがとな…」
カウンターを向いたまま、ぼそ、と呟く。
その呟きを聞いて、頬笑むサフィール。
何でも器用にこなすが、こういった面ではとても不器用なこの魔術師が愛しく感じられた。
「あのさ、頼みがあるんだけど、いいかな……?」
ためらいがちに口に出された言葉。
「俺で出来ることならかまわないよ」
「…忘れられてて、悔しいから、ちょっとフリしてくんない?」
「フリ…?
何のだ?」
「…俺にはお前って恋人がちゃんといて、お前なんかどうでもいいんだって、そういうフリ」
「…それは、お前はそれでいいのか?」
「…ダメ、か……?
お前がやってくんないなら…他当たるけど……」
「本気でやるつもりなんだな……」
自分がダメなら、他を当たる、というアルディスの決心にため息をつきながら、苦笑するサフィール。
「いいよ、お前のためなら…」
「サンキュ、サフィール」
「そいつが言葉で信用しなかったら、お前はどうするんだ?」
「ん…?
その時はその時で考える。
お前にキスくらいしても、怒る奴…いないよなっ?」
笑いながら答える。
「俺はかまわないが…、アルディス…お前はそれでいいのか?」
「何だったら、試してみるか?」
そう言って、顔を近づけてくるアルディス。