オーディション2
やいやい言い合いながら校舎の中に入って行く2人をぼーっと見送っていると、クラスの確認をしてた翔子が戻ってきた。
「みく、やばいよ、ビックニュース!!!!!え、やばいよまじで、夢?ねぇこれ夢!?やばいよまじでやばいって!!!!!」
「と、とりあえず落ち着いて翔子ちゃん。夢じゃないけど、何かあったの?」
クラス分けの確認をしただけなのにそんなに慌てるなんてどうしたのかと不思議に思い翔子に問う。
「あ、あのね、みく。やばいよどうしよう!!R I V E Rだよ!!!!!」
「R I V E Rって・・・あの?」
言いつつ、みくはさっきぶつかった2人の後ろ姿を改めて思い返してみてハッとする。
「私・・・さっき2人と話したかも・・・しれない。考え事しててぶつかった人、今考えてみると神威君だったかも・・・」
「え!?何やってんのみく、そんなの会話広げて仲良くなる大チャンスだったのに!」
かも・・・じゃない。あれは絶対、昴君だった。
翔子ちゃんに動揺を悟られないように「もしかしたら」を装ったが、あの乱暴な物言いと2人のやり取り、そしてあの後ろ姿。間違いない、昴君と雅紀君だった。
「ま、まぁとりあえず教室に行ってみようよ、翔子ちゃん」
翔子と2人で教室へ向かうと、1年1組の教室の前に人集りができている。
人集りをすみません、ごめんなさい、となんとか掻き分けて教室にやっとの思いで入ると真正面に2人がおり、はたと目が合う。
「あなたは先ほどの・・・うちの昴が無礼を働いてすみませんでした。女性が苦手であのような態度ばかり取っていて私も困っておりまして。ところで、まだお名前を伺ってませんでしたね。これから1年間同じクラスのようですし伺ってもよろしいですか?」
「あ、私はーー」
「私、みくの友達で香取 翔子って言います!翔子って呼んで下さい♡♡♡2人はR I V E Rの昴様と雅紀様ですよね!!!!!」
少し困った表情をしながら久遠が答える。
「仰る通りなんですが、様呼びはやめて頂けますか。だたのクラスメイトですから」
「お前ら〜席つけ〜」
担任らしい男の先生が外の生徒に向かって手をぱたぱたさせ散れ散れと促しながら入ってきた。
立って話していた生徒達が続々と黒板に書かれた通りの位置に着席する。
「あ〜今日から1年1組担任の神威 令志だ。担当科目は古文、だりぃけどまぁ1年間よろしくな〜。オメェら面倒事は起こすんじゃねーぞぉ。じゃ今から式だから体育館に集合しろ〜」
体育館に着くと案の定、というか予想通り、1年1組は神威 昴と久遠 雅紀のおかげで全校生徒から注目の的だ。
問題の2人は慣れたもののようで平然としているが、他のクラスメイトはどっと疲れている。
しかし注目を浴びながらも式は問題なく終えられた。
「みく〜お疲れ〜。んじゃ早速昴様と雅紀様のとこ行こうよ!」
「私はいいよ、お昼前に帰りたいし。翔子ちゃん行ってきたら?もう2人とも早速クラスの女子に囲まれて見えないけどね・・・」
横目で2人の方を見てフッと笑いながら答える。
「そぉ?まーみくがいいならいいや、じゃね!」
そう言うなりピューっと2人を取り囲む人混みの中に入って見えなくなった。
翔子を見届けたみくは鞄を持ち後ろのドアから出ようと振り返る。
「ちょっと待ってください」
少し低めの声で呼び止められながら自分より明らかに大きな手で左手を掴まれる。
振り返ると笑顔でこちらを見ている久遠と明らかに不機嫌でそっぽを向いている神威がいた。
「あ、あのごめんなさい。私、大事な用事があるのでこれで。さようなら!」
まさか掴んで呼び止められるとは思っていなかった為、焦って少し強めに久遠の手を振り解き下駄箱に向かって走る。
後ろの方で沢山の女生徒たちが久遠を心配する声と、私の事を罵倒する声が聞こえたが、私は気にも留めず学校を後にして一目散に家に帰った。