幼馴染を道連れに
結局、昨日は「ラパン」には寄らず、真っ直ぐ自宅に帰ってしまった。
項垂れて、デスクに頬杖をついてると、目のくりくりした今時清楚女子が私の頬をつつきに、来た。
「雪ちゃん、何呆けてるの?ねぇ、今日夕飯食べに行かない?」
案の定、首を傾げてサラサラヘアを揺らしながら、私の頬をつつく。
本人曰く、だってプニプニしててさわり心地がいいから…らしい。
「のんちゃん、今日も髪サラサラで羨ましいよ。私の気分は最悪…なのに…」
「ん?」
彼女の揺れる髪を見ながら、良いことを閃いて
「あっ!穂乃花ちゃん、今日カフェ行こっか!」
大きな声をあげると、穂乃花は目を丸くして頷いた。
「…え!?うん、いいよ」
「やったー」
内心しめしめと思いながら、足を机のしたでバタつかせる私。
今日は「ラパン」に行って、マスターにオムライス作ってもらおっと。とろふわ卵のやつ。
ニヤニヤしながら、デスクに向かって仕事をしていると、そっと資料が机の脇に置かれた。その手の主を目で追うと、優しくシュガー先輩がコーヒーを飲みながら、微笑んだ。
「ん?何か良いことでもあったの?顔緩んでるよ」
「いえ…特に…わっ!」
ふわっと手が伸びてきて、びっくりして目をぐっと瞑ると、その手は髪を優しく撫でて離れた。
「あぁ、ごめん、ゴミ付いてた、髪に。無意識に取ってたわ」
呆然と女慣れしたシュガー先輩を眺めていると、彼は何か考え込むような仕草をして、唇に手を当てながら、言い淀んでいた。ぱっと口を開いたその時、穂乃花が割って入って来た。
「ねぇ、雪ちゃん、今日の夕御飯、佐藤先輩も一緒に行きたいって」
「「え!?」」二人の声が重なり、驚いて私は佐藤先輩を見つめた。
「ふふ、いいですよね?佐藤先輩?」
ね、と同意を求めるように首を傾げる穂乃花。
女子の必殺技と言っても過言ではない。
佐藤は諦めたように、ははっと笑った。
「オッケー。その代わり、少し待っててくれるかな?」
「ヤッター、佐藤先輩のおごりですね」
「穂乃花ちゃんてばー…佐藤先輩、用事とか大丈夫ですか?」
「うん…」
優しく頷いた佐藤先輩の顔を見て不覚にもときめいてしまった。
私は下を向いて、ほんのり染まった頬を隠した。
どうしよう、アフターファイブが楽しみでしょうがない。