表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/8

風になった君




 君は足が速かった。僕のほうがお兄ちゃんなのに全く追いつけなかった。

運動会なんかでかけっこの種目名に『一瞬の風になれ』なんて言うけれど、本当に風みたいに速かった。すごくかっこよくて悔しがるのを忘れていた。いつも一位の旗の列に並んでいて二位の僕に嬉しそうに自慢していた。僕だって遅かったわけではないし、むしろ学年でも速いほうだったのに僕らの差は歴然としていてまるで話にならなかった。


クラスメイトは君が同じレースにいると僕でも一位になれないので残念がっていた。僕らはそれぞれ別々のレースにしてくれと先生に抗議した子もいるらしい。君さえいなければ確かに僕は一位になれる。それくらいの自身はあった。でも僕は敵わないとわかっていても、君と走るのが好きだった。真横を風になった君が通り過ぎていく。ほかの子ではならない君とのレースはとても楽しかった。


 君が風になるのは運動会の時だけじゃない。泣いている子がいたら真っ先にかけていった。探し物をしているのを手伝って学校中駆けまわって先生に叱られた。そこから逃げるのも速かった。


竜巻みたいに速いけど決して乱暴な風ではなくて、君は優しい風だった。




 だけど君はある日突然走れなくなってしまった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ