提案
宿について数時間がたち、俺たちは1番部屋のサイズが大きいアルとエルの部屋へと集まっていた
集まるなりアルとエルからこんな会話をしていた
「ねぇお姉ちゃん、グルエラの様子おかしくない?」
「エルも思った?別に悪くないんだけど、いつもと違うよね」
ここでグルエラの様子を見てみよう
なぜかいつもより肌ツヤがよく
そしてなぜかとても上機嫌なのだ、その表情を表現するにふさわしい言葉は「幸せ」以外ありえない
そしてなぜかしきりに愛おしそうにお腹を撫でる
これだけで察せる人間が出てきてもおかしくはないだろう
もう言ってしまうと、俺はグルエラを抱いた
これ以上は何も言わない、ただただお互いを求め合ったとだけ言っておく
とりあえずグルエラは満足したみたいだし、これでそれなりの気持ちの余裕は出来たのではないかと思う
正直子育ての話をされた時は若干ビビったけど、それは忘れておこう
いいんだ、グルエラがわかってくれただけで俺はいいんだ
正直俺も夢の存在だったグルエラとできて嬉しかったしね
もっと正直に言うとグルエラだけじゃ...いや、今は言わないでおこう
とりあえず今は全員で集まった目的を果たそう
「冒険者になろうと思うんだけど、どう思う?」
「冒険者ですか?わざわざなるのですからなにか目的でも?例えばあの冒険者が皆所持している魔道具を手に入れるためとか?」
「確かにあの魔道具を手に入れるののも目的だ。まぁそれはただのおまけなんだけど」
グルエラはなかなかいいとこをついていた
おまけではあるがあのスマフォみたいな魔道具は手に入れておきたい
あれはゲームの時にはなかったものだし、俺の時代の最先端のものだ。あれを手に入れれば何か知ることが出来るかもしれない
でも目的はそこではない
俺はポケットから冒険者ギルドで手に入れます冒険者に関するパンフレットを取り出す
そしてとあるページをみんなに見せる
「この名前に見覚えないか?」
「地図....これは...」
「まさか、いや、こんなことが...」
グルエラとアッシュが目を見開いて驚く
「なにをそんなに驚いてるの......って嘘!?」
「これは確かに驚きます...」
そしてアルとエルもそれを見て驚く
「あぁびっくりしたことにこの街を含め、ここに書かれているダンジョンとやらは全部俺たちが以前に支配していた砦や城の名前と同じなんだ」
これは偶然なんだろうか?
その答えはわからない、でももっと大事なことがわかった
「ダンジョンではどうやらモンスターが生まれているみたいだ。それを駆除して安全を保つのが冒険者の役割らしい」
俺は受付のお姉さんの説明とパンフレットで読んだことを混ぜながら話をすすめていく
「これで察しがつくと思うが、モンスターが作り出されているということは誰かが魔王の力を使っているということだ」
この世界でモンスターを生み出す能力を持つのは魔王かグルエラくらいだろう
グルエラは自己の魔力を消費するためそんなに大量には生み出せない
だからもしグルエラと同等の力を持つもの存在がいたとしてもそんなに出せないということになる
「魔王の力を現在持っているものが直接関与してるかはわからないけど、このダンジョン一つ一つを調べる価値はあると思うんだ」
そしてみんなにこのダンジョンとよばれるものたちは冒険者でないと入れないことを伝える
「魔王様、冒険者にならずとも我々ならばそのようなことに縛られる入ることはできると思いますが?」
「まぁな、それは間違いじゃないグルエラ。だけどそうやって強引で目立つ方法をとったら色々と面倒だろ」
またか、やれやれって感じだけど
なんかもうグルエラのこういうのには慣れた。というか慣れないとやっていけないと思う
「別に今この世界を治めている国とやりあっても負けないと思う。でも、勝つには時間がかかるしその間はずっと緊張を保たないといけないだろ?そんなことするよりは俺はみんなとゆっくり過ごして、失った魔王の紋章の行方を探す方がずっといいと思うんだよ」
今まで人間と戦争じみたことをしていたやつが何を言ってるんだって感じかもしれない。俺にとってはゲームのことだがこの事は4人にとっては現実のことだ
だけど俺はみんなにもそう思ってほしいと思っている
俺はみんなの顔をうかがう
そして嬉しいことにみんなの表情は柔らかく、温かいものだった
「キース様がおっしゃるならばこのグルエラに異論はございません」
「もとより我々は旅を楽しむと決めたのですから、不必要な荒事を避けるべきです」
「やっぱ楽しむのが一番だよね!」
「うんうん、お姉ちゃんの言う通りです」
最後にグルエラが「キース様のご意向に背くような意見を出して申し訳ございません」と謝ってくれる
俺はみんなに「ありがとう」とお礼を言い、グルエラには「気にするな」と付け加える
俺の考えに納得してくれるならそれでいいんだ、別にグルエラの意見が間違っているとは思ってないから
ただそっちの方が俺として楽だし、面倒事がなくていいと思ってるからそういう選択をしたわけだ
なによりも俺はみんなで楽しく過ごしたいわけだ
みんなが納得してくれたみたいなので俺は話を続ける
「受付の人の話聞いてたと思うけど、冒険者にはジョブがあってそのジョブ試験を受けてなれるんだけど、みんなはどれがいい?」
そう言って俺はパンフレットにあるジョブ一覧のページを開いてみんなに見せる
みんなでパンフレットを回しながら、各々自分に合いそうなジョブを選ぶ
まずはグルエラ
「そうですね...私は普通に魔術師にさせてもらいます」
次にアッシュ
「私も選ぶなら剣士しかないでしょう」
そしてアル
「んー...1番合いそうなのは拳闘士かな」
最後にエル
「私は...斥候...いや、暗殺者にします」
と言った感じで4人は特に悩まずにほぼ即決する
俺が思ったりよりみんなはやく決まってしまったので少し困る
実はまだ自分のやつを決めていなかったのだ
自分にあったものと言われても正直困る
みんなみたいに自分にはこれ的なものがないのだ
実際自分の能力を充分に理解もしきれていないから、本当に困る
みんなからの「キース様は何を選んだのだろうか」みたいな目が痛い
俺はパンフレットの一覧にならぶジョブを流し目で見ていく
どれもこれも微妙だ...数は多いが下位職業なのでどれもシンプルなものが多い
魔王とかないのか?あったら即決なんだが......
そして不意にあるジョブに目がいく
俺はそこに目を止めてしばし沈黙
───もう決まらないしこれでいいか
悩んでいても仕方ないだろう
「俺は──」
そう言って俺はとあるジョブに指を指した