独占
とても立派な冒険者ギルドから出たあと
「キース様、あの受付嬢に帰りに際に何かもらっていたようですが?」
「ん、気づいてか?」
「はい...ま、まさかキース様への...そうだとしたらあの女...」
「何を勘違いしてるか知らないけど落ち着いてくれグルエラ、俺は宿屋の場所を教えてもらっただけだよ」
急に殺気立ったグルエラをなんとかなだめて、帰り際にもらったメモをグルエラに見せる
ほんとになんの勘違いしたんだよ...
「宿屋ですか?」
「あぁとりあえず何をするにも、いい寝床は確保しときたいからな。ラッキーなことに昔と通貨はなんも変わってなかったみたいだからいいとこに泊まれそうだ」
実は説明の時に申し込み料の話もされたんだけどね、その時にお金の単位がゲーム時代と同じゴールドって判明した
俺のインベントリの中には歴代の勇者から奪いまくったゴールドがたんまりある。ありがたいことにお金に困ることは無さそうだ
この街は冒険者ギルドを中心に放射線状に道が広がっているので初めてきた俺でもメモを見れば目的の宿屋の場所はなんとなく分かった
そして迷うことなくみんなを連れて目的の宿屋につく
一応色々条件をつけて頼んだとこなのだが、俺が求めたいよりもかなり質の良さそうな宿屋...というよりホテルだった
「とりあえずここに泊まろうと思うんだけど、問題ないか?」
俺はそう聞いてみるとみんな問題はないようなので入ってみることにする
まぁたぶん俺の意見に反対するってことは基本的にはないと思うけど、やっぱり確認は必要だ
「いらっしゃいませ、ようこそお越しいただきました」
まさか建物に入った瞬間にボーイさんがいるとは思わなかった
もしかしてこの世界って俺が思っていたより文化レベルって高いの?
とりあえずここが本当に高級なとこだというのはわかった
「初めてのお客様でございますね。どうぞ受付はこちらです」
なんとも丁寧な対応で俺たちは受付まで案内される
「ようこそいらっしゃいました、初めてのお客様ですね。当宿の説明をさせていただきますが、いかがしますか?」
「一応お願いします」
「はい、当宿の部屋は3つのランクにわけられておりまして。こちらが料金表になっておられます」
そういって受付の人が料金表が書かれたボードを見せてくれる
そこには宿泊人数、日数...様々なニーズに合わせ料金プランが書かれている
「んー...部屋は...」
「このツインの部屋1つ、ダブルの部屋2つにしていただけます?」
なぜか俺が部屋を決めようとしたら、グルエラが代わりに部屋をとろうとしていた
「代金の方は滞在日数がわからないのでこれでお願いしますわ」
と言ってグルエラは袋をすとんとカウンターに置く
「こ、これは...十分でございます。部屋まで案内させていただくのでしばしお待ちを!」
袋の中身を確認した受付の人が慌てたように俺たちを対応してくれる
さっきよりも丁寧な扱い...いや、これはいわゆるVIP待遇だな
荷物持ちまで現れる始末
対応の優先度の順はアッシュ、グルエラ、アル、エル、そして最後に俺
アッシュとグルエラに関していえば、旦那様奥様と呼ばれている
ここまで来るとよくわかる
周りから見たらグルエラとアッシュが俺らの中のカースト上位に見えるみたいた
そしてたぶんカースト下位が俺
正直グルエラたちと見た目のレベルで比べるとそう思われるのが俺自身も当たり前だと思う
そして部屋に案内され、部屋の割り当てが決める
ツイン→アル、エル
ダブルその1→アッシュ
ダブルその2→俺とグルエラ
なぜグルエラが率先して動いていたかわかった
今朝馬の件と一緒だ。グルエラはどうしても俺のことを独占したがる
だがその事を俺が言い咎めるのは正直難しい
だって俺だってグルエラのこと独占したいから。でもアッシュやアルとエルだって独占したい
グルエラはたぶん俺一人、でも俺は複数人を独占したいと思っている
そんな俺に言われてグルエラはその事に気づいたら何を考えるんだろうと思うと俺は何も言えない
だからとりあえず理由から聞いてみよう
部屋で二人きりになれたのはこの際タイミングがよかったと考えよう
「なぁグルエラ、どうしてそこまで俺のことを独占したがるんだ?」
「それはキース様のことを愛しているからでございます」
「そ、それはわかってるんだけどねっ...」
やっぱりこうもどストレートに言われると焦る
グルエラの目が真剣すぎてほんとにどうにかなりそうだ
「元だけど、俺はグルエラだけの魔王じゃないからさ...」
「それはわかっております、ですが私は配下の中で最上の寵愛を受けるためにこの配下最強の地位まで上り詰めたことをキース様に理解していただきたくあります」
グルエラの顔はどこまでも真剣だった
たぶん...じゃなくて絶対に俺はグルエラのこの気持ちにはちゃんと答えないといけないと思った
四天王全員が現実のものとなり、平等に接することを心がけてきた
だけどゲーム時代のグルエラの存在は「特別」なものであった
今はそういう扱いをすることは出来ないかもしれない、でもグルエラに今みたいな思いをさせたままにもしたくなかった
グルエラをいつも贔屓するわけにはいかない、だからグルエラが自分が1番だと思えるようにさせてあげるのがいい
そうなると今思いつく方法は一つ...
正直我慢出来ない、欲求が理性や躊躇いを消し去ろうとしていた
「あっ...キース様...」
俺はグルエラをそっと抱き寄せていた
グルエラの温もりが柔らかさが全身に感じられる
グルエラを蕩けたような顔をして俺を見る
もうここまで来たら止まることは出来ない...いや、止まりたくない
グルエラにわかってほしい
俺は唇をそっと重ねた───