襖(ふすま)の中からこんにちは!
「うん、今日は絶好の片付け日和だな!」
あ、どもっす。高坂麻夢っていいます。よろしくお願いします。実は今日から色々あって狭いアパート(失礼すぎだろ!? アパートの大家さんに対して!!?)から少しお高めの一軒家に住むことになったんですよ。綺麗だし、広いし。でも、一番驚いたのは僕の荷物の多さ! 重っ!? 何あれ女が運ぶもんじゃねえだろ!? 一人で心の中でツッコミを入れてみる。すごく虚しい。
「にしても」
キョロキョロと辺りを見渡す。
「何でこんないい所に買い手がつかなかったんだろ?」
そう、こんなにもいい家なのに買い手は誰も居ないなんて可笑しな話だ。でも、気になってしまうのが人間の性だろう。
「ま、いい‥」
言いかけた時、襖がガタンッ!! と物凄い音を立てた。僕は咄嗟に後ろに跳んだ。
『どうする!? 開ける? いやいや、開けて変なのいたらそれこそ僕の生命が死んじゃう!』
そう思っていると襖の隙間から何かが見え隠れしてますいるのが分かった。僕は恐る恐る近くに行ってそっと襖を開けて見たら、中には黒と赤の羽を持った大きめの鳥だった。
『鷲? いや、にしては色が違う』
嘴と尻尾は赤で、頭や胴体は黒。そして、鳥の目は右が橙で左は翠のオッドアイというなんとも変わった鳥だった。うちは動物は好きだが、名前は分からない。そのため、この鳥がなんという種類で何処に住んでいるのかも分かるはずがない。その鳥は僕を見て奥の方へ奥の方へと後退りした。どうやら怯えてる様子でこちらを見てくる。ふと僕は持ってきた荷物の中に林檎があるのを思い出して、鳥に「ちょっと待ってて!」そう言って、台所に走り、林檎を取り出して、皮を剥き、摩り下ろした。俗に言う『すりリンゴ』にして、さっきの場所に行くと、ジッとしたままの鳥の元に駆け寄った。スプーンですくい、ハイッと差し出してやれば、僕とすりリンゴを交互に見やってちょんっと突くと、凄い勢いで食べた。あっという間に空になった器を見て、笑みが溢れた。ついさっきまで虚勢を張るように敵意の篭った眼差しだったのがクルクルと喉を鳴らして嬉しそうにしているんだ。忙しなくコロコロと変わるその様子がとても面白く思えた。
「美味しかった?」
僕がそう訊ねると鳥は、喉鳴らしながらスリスリと頭を僕の腕に押し付けるようにしてくる。その頭を撫でれば、もっと撫でてとでも言うように擦り合わせてくる。
「良かった!」
そう言ってグシャグシャと撫でてやると、笑っているようにも見える。
それが終了したのは夕方くらいになったのに僕が気付いた時だった