魔法ってのはいいけど
二時間目のチャイムがなる。
休み時間を伝える祝福のチャイムだ。
「ふぁぁぁ〜」
眠たそうに声を上げながらやたらとこちらをちら見する隣の席の神咲沙紀を見つめる。
まぁきっと見ているのは窓の外にいる猫だろう。
ここは周りでは珍しい全てが一階に施設が備わっているある意味特別な学校だ。
こちらも負けじと沙紀を見る。
見た目はとにかく可愛い、それに引き締まった筋肉。運動神経抜群で、家は大手玩具会社の社長の一人娘とありかなりモテている。
ちなみに僕はこの子が好きだ。
夏休み中には告白を考えている。
まだ夏休みではないけど。
今日は一学期の終業式の一日前だ。
そのせいか周りは妙に盛り上がっている。
まぁ僕も楽しみにしているのは間違いなく。
なんせ夏休み温泉ツアー(自作編)を考えており、かなり楽しみにしているのだ。
「みつるー! お前も見ろよ、これ」
そう大きく声を放つのは僕の幼馴染みの加賀仁志だ。
こいつとは小学生の時からずっといっしょで今までも何回かクラスが同じになったりと、色々思い出がある友達だ。
実に普通な顔つきで、筋肉や身長も平均的なものだ。
故に仁志は"平均太"等と実にひねりのないあだ名を付けられている。
少し加賀と話すか沙紀を見つめるか悩んだが、
すぐに思い直し加賀の元へ行く。
加賀の周りには何人かの人が集まっていた
加賀の周りにこれ程の人数がいることは珍しい。
「これ見ろよ」
そう言って僕に左手に持っているスマホを見せつける。
そこに書いてあったのは不思議な言葉であった。
「魔法? ファンタジーじゃあるまいし」
馬鹿らしいな。この世の中魔法なんて使えるわけがない。使えたとしてもそれは全て科学で説明がついてしまう科学魔法そのものだ。
「これな、今日の朝に世界で流されたらしいけど、本当に使えるらしいぞ」
「仁志、珍しいな。お前が冗談言うなんて」
少し困ったように仁志がこちらを向く。
「いや、これホントらしいぞ」
そう言って僕にスマホの画面を見るのを催促する。
渋々画面を見てみるとそこには年老いた男性が右に座っていて、左側には若い男が同じように座っていた。
彼らの周りは沢山の薬品や機械が乱雑に置かれている。
どうやらここは研究所らしい。
最初に二人は何かを話していたが、そのあとに右側の年老いた男が口を開く。
「こんにちは。私は……Sとでも名乗っておくよ。今こうやって動画をとり、全世界へ流れていることを想定した上で話す」
そして"S"は自分の右側に置いてあるアタッシュケースによく似たものを手に取り、二つのロックを解除してその中にある薬品をわずかに震えた手で掴み取る。
「これは、魔法自律品といって君たちの中に魔法を使えることができる元を与えるものだ」
そして若い男が初めて口を開く。
「これを今ここで割って空気中に放り込む。
そうすることで時間はかかるが世界中へと空気を伝って君たちの元へ辿り着くだろう」
「ただ魔法の使い方はあえて公表しない。そして私たちは今からこの世を去る」
「最後に、例え魔法を使えるようになっても自由に操れるのはわずか十人となるように細工した。それの名をエンヴィリーとする」
年老いた男がおもむろに手に持っていた薬品を意図的に落とす。
それは淡い青の液体で床に落ちた瞬間に液体では無くなっていた。
そこで動画は終わっていた。
「なぁ仁志。お前、これ信じてんの? 」
平均的な顔が僕の顔をみる。
「いや、それがほんとに魔法使えるようになってんだよ、まだ試したことないけどな」
はぁ。昔から仁志はオカルトやUFOなどをこよなく愛してきた。
その愛着ぶりは平均を大きく上回っているだろう。
故に仁志は"オカルト平均太"などという趣味丸出しなあだ名を付けられていた時があった。
「お前がオカルト好きなのは知ってるけど、これは流石にないだろ。おれ、席戻るよ」
無駄な時間を使ったな。
これなら沙紀を見てれば良かった……。なんて考えが脳裏にはしる。
(何考えてんだよ)
そう自分に言い席につく。
「ちょ、みつるー! もういっこあんだよ。
みにこいって! さっきのはなんつーかあれで、こっちが本番みたいな感じなんだよ! 」
相変わらずの語彙力だな、平均太よ。
まぁ気になるといえば気になる。
さっきの動画は今若者に人気のMeTubeという誰でも動画を上げ、それを世界の人々が視聴できるアプリだ。
その中でも気になったのがさっきの年寄りと若い男性が意味のわからないことを主張して薬品を落とした動画に約十億の再生回数がついていたことだ。
このMeTubeでは、かなり多い方だろう。
少しだけ疑問におもったので僕は仁志の本番なる動画を見に行くことを決めた。
──ってか、本番ってなんだよ。
仁志の周りにいた集団にわずかに穴が開く。
僕が来るためだろう。
やけに周りが催促するので小走りで仁志の元へ向かう。
「これ、いくぞ」
そう言いながら仁志は真ん中にある二等辺三角形の頂点が右に倒れたボタンを押す。
僕は目を疑った。
画面の中の男は何故か裸でやけに太っている中年男性であった。
その中年男性は謎の掛け声と共に手を突き出すと、よく分からない文字が綴られている円状のどこか不気味なものが身長の割には小さい手の周りを囲む。
と、同時に窓が一瞬にして吹き飛ぶ。
これは魔法か?
一瞬考えたがCGでこんな事いくらでも出来るだろうとすぐに打ち消した。
窓ガラスが割れたのを見つめる。
そこで終わっていた。
これもまた再生回数が十億を超えていた。
「みたろ? これほんとに使えるらしいんだ」
そう言って仁志は手を真っ直ぐに持ち上げ先程の中年男性と同じ言葉を言った。
「エルクトラム!!」
……。
教室のありとあらゆる会話が一瞬止まった。
そしてそれが笑い声に変わるにはわずか一秒ほどだったであろう。
「なにやってんだよひと……」
言葉に詰まった。
目の前で不思議な事が立て続けに起こった。
まず仁志上げた手の周りに不思議な文字が綴られている円状のものが現れた。それは先程見た中年男性の手の周りに現れたそれそのものだった。
そして目の前にある机が五十センチほど浮いた。
「は? なんだよこれ」
仁志が声を上げる。
周りの声は笑い声から驚きの声へと変わっていく。
一瞬なにか細工をしてあるとまで考えた。だが仁志の驚いた顔を見るとそれが本当に起こっている事実を悟らんとすることを意味しているようで、自分が今見ていることを否定する理由にはならないと考える。
そして机は宙に浮いたまま三時間目を伝えるチャイムがなる。
時間かかったあああああ!
これだけのことを書くのにここまで時間がかかるとは思いませんでした。
舐めてました……。
今回はどうだったでしょうか……。文字数が多い分誤字脱字のオンパレードでしょ、あまり確認はしないので許してください。
あ、感想とかぜひ書いてください!良い点とかより自分は悪い点を指摘してほしいです!では、次の魔ランで!!