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殺意ってのはいいけど。

今回は少し重いので、なぞなぞとか頭に入らないと思うのでパスです!


ではお楽しみください!

あれは、僕が10の時の事だった。


「お父さん、温泉楽しみだね」


無邪気な笑顔で、それでいて控えめな声を上げる。


白い軽自動車の車内での会話だ。


「あぁ」


お父さんの返事は深刻そうな思い入れがあった。

でも、僕はまだ幼く、あまりその意味が分かりはしなかった。


その僕よりさらに幼い隣で眠っているのは僕の妹──奈那だ。


奈那の閉じている目を見つめる。


可愛いっ!

僕は奈那が小さい時から奈那の事を可愛がっていた。

最初は両親によく妹の世話を押し付けられていたのだが、そのうち何かに目覚めてしまい、過保護状態になったのだ。


かくして僕らは目的地の温泉、三鶴の咲かせ岩に付いた。

駐車場に、ちいさな自動車をおき、扉を開けて外に出る。


「奈那、起きて。着いたよ」


「むなにゅゃあ〜」


僕は妹を抱いて、外に出た。


ふと両親を見ると降りてきたのは母さんだけだった。


殺伐としたコンクリートに、数字が並べられた駐車場での出来事はそこで終わった。


これ以上は思い出せないのだ。


だが、その時から両親は僕らの前から姿を消した。


──────────────────


仁志の葬式でそんな事を思い出す。


──なんで今、こんなこと思い出すんだ。


多分、僕は必死に仁志の思い出を無くそうとしている。

仁志との思い出を振り返り悲しくなるのをやめようとしてる。

だから、僕が持っている記憶の中で、一番悲しかった事を、辛かったことを、仁志が全く関係ないことを思い出していた。


妹も何回か面識があり、仁志の実家に泊まりに行ったりしていたので、葬式に参加することになった。


隣で妹は暗い顔をしている。


──仁志が、ひとしがいてくれたから、僕は……。


自然と涙が溢れてきた。抑えようとしても抑えきれなかった。


さっきまで、違う思い出で蓋をしていたのが一気にはずれた。


一緒に泊まりに行った時のことを思い出した。

一緒に海に行った時のことを思い出した。

一緒に勉強をした時の事を思い出した。

一緒に永遠と駄弁っていた時のことを思い出した。

一昨日一緒に、同じマンションへ帰った時のことを思い出した。


──なんで、お前告白どーすんだよ。死んだら意味ねーじゃねーかよ。



気づいたら、声を出して。大声で泣いていた。

両親に捨てられた時にも泣かなかった。

なのに今、とてつもなく悲しくなった。

ずっと泣いた。仁志が燃え尽きるまで、ずっと泣いた、


涙が少し黒を帯びた大理石にポツリと落ちる。

涙で視界が歪む。


僕はそのまま、動かなかった。悲しくて立てなかった。何も出来なかった自分が憎くて仕方がなかった。


──絶対殺してやる。仁志を、こんな姿にした奴を、僕が。殺してやる。


誰よりも狂気に満ちた顔で泣き笑う。

この時僕は何かが壊れた。

僕は絶対仁志を殺した奴を許さない。


殺す。そう心に決めた瞬間火葬が終わる音がした。


──────────────────


結局奈那が言ったことは出来なかった。

一度仁志に魔法をかけたのだが生き返ることは無かった。


仁志死因は一昨日、魔法を世界が知ることになった日に現れた通り魔によって心臓が大きく縮小する魔法をかけられた事だった。


ランダム仕様の魔法だ。通り魔が、奈那みたいに魔法を操れるなら、仁志を殺すことは容易いだろう。


ちなみにまだこの通り魔は捕まっていない。


通り魔は仁志を初め、計七人もの人を死に追いやった。


僕がこいつを殺すなら、まずこいつの標的の規則性を見つける必要がある。



暗い小部屋に一つライトがノートを照らす。


手始めに書く。


真っ黒いシャープペンシルのノックを二回叩く。そして、


《殺す》



まず、仁志や他の人物の特徴で似ているところを考える。


仁志が亡くなってから、僕は学校に行っていない。

僕が学校に行き始める時は、仁志を殺した通り魔を殺してからだ。



多分顔で選んでいるわけではない。

顔だと二番目に殺されたこの顔の整っている男性や、四番目に殺された、かなり可愛い部類に入るであろう女と、仁志の顔が釣り合うわけはない。何とも酷い考えだ。


次に性別も、関係はないと考える。


なら、殺された場所か?


というか、仁志はマンションで殺されたのに対し、ほかの人は全員外で殺されていた。


──どういう事だ……何か関係はあるのか。


いや、最後の人は小さなアパートの一室で殺されていたはず。あまり関係はないと考える。


殺された場所で範囲を見てみる。

ここが初めとするなら、全て三キロ満たない範囲で殺されている。


──だとすれば、まだこの近くにいるのか?


あれから警察はここ周辺を捜索しているのだが、まだ捕まえることが出来ていない。


たった、三キロの範囲の中で、人一人も捕まえることが出来ないのか。

逆にそっちの方がおかしくないか?

今の時代、監視カメラがほとんど事件の解決に役立っていたりする。

けど、人の証言も、監視カメラで人物像を捉えたり、何故か一切通り魔の姿が分からないのだ。


じゃあ何故殺された全員が同一犯だと警察は断定したのか。


それは死因が全て、心臓の縮小によるものだからだ。それに、体外からの薬品や、刃物で傷つけられたりした痕跡が残っていないのだ。


だから警察は魔法によるものだと仮説を立てている……ここまでが、一般的に公開されている情報だ。




あれから一時間近くたった。

だが、なんの共通点も分からなかった。


結局自分には、何も出来ないのだ。


でも、直ぐに諦めたりなんて出来ない。


────────────────


さぁさぁさぁ。次は誰をころしちゃおーかなぁあぁぁぁ。


警察も、他の奴らもだれも俺を見ることは出来ない。


それはそう、あの動画が出て、すぐの事だ。


──────────────


パソコンとにらめっこしながら唸る姿そこにあった。


部屋はゴミだらけで、小さな部屋だった。キッチンやトイレはなく、何とも殺伐とした部屋だが、その男にはパソコンさえあれば良い。


「…………また、か。もうこれが最後だったのに」


その男は失望した目で僅かに残ったカップラーメンの汁を飲み干す。


その男は、小説家になりたかった。

六歳の時、初めて読んだ小説に魅了され、いつか自分も小説を書きたいと夢を見るようになった。


そしてその思いを胸に、高校三年の時、かねてから貯めていたバイトの給料や親の仕送りでパソコンを買った。当時ではかなり最先端のもので高価なものだ。


その時に一度だけ、新人賞に応募したが、一次審査で落ちた。その時は何も思わなかった。これからが始まりだと思っていた。


それからずっと小説を書き続けた。


そんな彼に惹かれた一人の女がいた。

その女は彼の好みの女であった。


そして彼は、小説を使い、彼女のためにプロポーズの言葉を募った小説を書き手渡した。


そして彼たちは結婚することになった。

子供も一人授かった。


幸せな気持ちでいっぱいだった。

だが、彼は小説を書き続け、新人賞に落ちて、その繰り返しの中である種のストレスが彼女たちへと向けられた。


彼は子供の虐待と、妻への暴力を働き、二年のあいだ刑務所に入ることとなった。


彼は刑務所を出たあとも小説を書き続けた。

それくらい彼は小説家になりたかった。


だが、彼はなれなかった。

全て一次審査で落ちた。


そして彼は今、最後と決めた小説の新人賞に落ちた報告のメールを見た。見てしまった。


彼は死ぬつもりだった。この小説で、新人賞で二次審査までいかなければ死ぬつもりだった。

彼は家族を失い、希望も失い、何もかもを失った。


「もう、終わりだな。 ごめんな、静海、美智子」


最愛の妻と子の名前と共にカッターで手首の動脈を切り自殺しようとした。


そこにあるメッセージが届く。

小説仲間からだ。


そこにあったのは魔法とかかれた動画だった。


なんの感情もなくその動画を見た。


そして彼はその言葉を口にした。


僅かな希望とともに。


「えるくとらむ。 馬鹿らしいな」


しかしその魔法は本物で、彼に殺意を植え付けた。

その魔法の効力はただただ殺意を植え付ける最悪の魔法であった。


彼はもう一度口にする。殺意の隙間に僅かにかつての家族が見えたような気がした。


しかし、それは殺意の引き立てでしか無かったことを彼は知らない。


「エルクトラム! 」


そして彼は透明の体を手に入れた。


もう一度彼は魔法を唱える。


「エルクトラム! 」


その声と、魔方陣がカッターへ向けられる。


そのカッターが、僅かに動き、銃らしきものに変わった。


その銃が、心臓を縮小させるものと知るのには少しあとになる。


そして彼は、隣の部屋の住人を殺すことにした。

とめどない殺意と共に。

おつかれい!


こんかいは通り魔がどんな人かとか、書きましたけどこういうのって最後らへんに書いた方がいいのかな?

良ければ感想お願いします!

では、次の魔ランで!

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