衝撃の真実
モグモグモグモグモグモグ。
うん、おいしい、このご飯おいしいなぁ、うん。
モグモグモグモグモグモグ。
ああおいしい、おいしいなぁ、おいしいとしか考えられないよ、いや、考えちゃいけないよ。
モグモグモグモグモグモ……。
「無心で食べているな。美味しいか?」
ああっ、やめて!
顔を覗き込んでこないで!
近い、近いから!!
うぅ、このキラキラしいイケメンの事を必死に意識外に追いやってたのに……。
「……おいひいれす」
「そうか、それは良かった。……お嬢さん、良ければ、その、君の名を知りたいのだが……聞いてもいいだろうか?」
「あっ……! ご、ごめんなさい! 私、七村灯……じゃなくてっ、アカリ・ナナムラといいます!」
「アカリ・ナナムラ嬢……この辺りでは珍しい名前だな。髪や目の色といい、異国の出身かな?」
「あ、いえ……あの、私、神殿の、送界の間を通って来た、異世界人なんです。まだ、こちらに来てそんなに経ってないんですけど……」
「っ……異世界、人? ……それでは……」
「あ、兄上……!!」
「? ……あの?」
何だろう?
私が異世界人だと告げたら、二人揃って驚愕したような顔をしてる、けど……送界の間で初めに会った神官さんは、稀にだけどある事だって言ってたから、そこまで驚く事でもないと思うんだけどなぁ……?
「そうか……そうだったか。……だが、再び機会は与えられた。俺は幸運だな。……アカリ嬢、この世界に来てくれた事に感謝する。会えて嬉しい。ありがとう」
「えっ? ……あ、あの……っ!?」
な、何で、手を握るの!?
それと、顔!!
さっきより近いんだけど!?
な、何これ何これっ、どどどどうしたらいいの私!?
「ふ。……赤いな。可愛い。だが……リロアーク達が邪魔だし、場所も悪いな。残念だ」
「へっ……!? な、何が……ですか……!?」
「ふ……知りたいか?」
「ひぇっ!?」
「ごほんっ!! ……殿下、手順はしかと踏まれますよう」
「兄上ぇ……」
「……心配するな、わかっている。親交も深めず先走る程愚かではない。…………それとも、俺がそんな男だとでも?」
「っ、いえ。ご無礼致しました」
「も、申し訳ありません、兄上!」
…………………………。
ご、ご飯……ご飯食べよう、ひたすら食べよう、うん、そうしよう。
モグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグ。
「美味しいか、アカリ嬢?」
「はひ、ほほひいれふ」
「そうか。だが……どうやら弟が来たようだぞ? やっとここから出れそうだ」
「はひ?」
ロアンシルさんの言葉を不思議に思って顔を上げると同時、外からバタバタと慌てたように駆けてくる足音が響いてくる。
その音は段々近くなり、やがて、牢の前に二人の少年が現れた。
そのうちの一人は何故か直ぐ様牢の前に膝をつき、頭を下げる。
「申し訳ありません! 助けてくれた貴女をこんな目に合わせていながらそれを知らず、今までぐーすか寝ていたなんて……!! こんな、恩を仇で返すような真似、本当に申し訳ありませんっ!!」
「?」
え~と?
突然来たこの少年は、何を言っているんだろうか?
『助けてくれた』とか言ってるけど、私が助けたのは動物であって少年などではないし。
という事は、つまり。
「人違い?」
「え?」
「レヴァロア。その姿では、アカリさんにはわからないのではないか?」
「あっ……!! すみません!!」
「……へ? ……え、ええぇぇっ!?」
ロアンシルさんの言葉を聞いた少年は何故かまた謝ると、その姿をみるみるうちに変え、一匹の動物になった。
そう、あの、私が助けた空色の動物に。
うん……わかった。
漸く全部、理解しました。
あの空色の動物はこの少年で、ロアンシルさんとリロアーク君は正真正銘この少年のお兄さんで、それで…………そう、王子様、あの、私を犯人扱いした令嬢や騎士達は王子様と言っていたから…………つまりこの人達は皆、王族、なんですね…………。
「ああ…………私、死んだわ、これ」
不敬罪で、斬首、だ。
そう結論が出た私は、次の瞬間、意識を手放したのだった。