リナリア・アシュター
お待たせしました!
誤字・脱字があるかも
アルミラージュの”アル”を仲間に加え、森で野宿をし、一日が経った。
「きゅ〜」
「すっかり定位置だな。アル」
「きゅッ」
一刀が試しに頭の上に乗せたところ。アルは気に入ったのか頭の上でぐてーっと乗っている。
「今は大丈夫だが、夏になってからは蒸れそうだな・・・ちょっと降ろして」
「・・・(ひしッ)
「アル。少し降りて・・・」
「・・・(ひしッ)」
絶対に降りない! と言っているかのように一刀の頭の上にしがみついているアル。
一刀はそんなアルに根負けして、降ろすのを止める。
「はぁ、分かったって。乗ってても良いけどな。夏に入って暑くなってきたら降りて貰うぞ」
「きゅー」
「・・・ホントに分かっているのか・・・?」
こんな会話? を続けている一刀達。すると、今までぐてーっとなっていたアルが耳をパタパタさせ、起き上がる。
「どした? また魔物か?」
「・・・きゅ」
アルミラージュは特別聴覚が良いのか、野宿中の寝込みを襲おうとしてきた魔物に気づいたのはアルだった。一刀はアルの聴覚の良さに頼りしる。
そんなアルが何かを聴き取り、一刀は戦闘態勢に入る。なるべく一刀も耳をすませ、音を聴き取ろうとする。すると。
(・・・ん? これは人の足音か・・・?)
「タッタッタッタッ!」と音がこちらに近いくる。一刀は戦闘態勢を解き、足音の正体を待つとすぐに人影が近づいてきた。
「・・・ぁ! はぁ、はぁ」
美人だった。年は十代半ばと思しき青髪美少女。帽子を深く被っており、服装は戦闘時にも着れるバトルドレスと思わしきモノだ。
「⁉︎ お、お願いしますわ! 助けてくださいですのッ!」
と、一刀達に気づき、地面にへたり込みながらも必死に助けを乞う美少女。しかし一刀は。
(どうしよかな・・・。ぶっちゃけ面倒事は嫌だし、放っておこうか・・・)
こいつ本当に主人公か? と言いたくなるような考え事をする一刀。青髪美少女は心配そうな顔で一刀を見つめる。そこへ。
『あの女何処に行きやがったぁ!』
『兄貴! あっちに逃げましたぜ!』
『へへ! あの女の体で遊ぶのが楽しみだ!』
と、明らかに品の無い男共の叫び声が青髪美少女が逃げてきた方向から聞こえてくる。
「「・・・・・・・・・」」
しばらく見つめ合う一刀と青髪美少女。
「・・・・・・(タッ)」
「ち、ちょっと待ってくださいですのッ⁉︎ どうしていきなり踵を返すんですのッ⁉︎ 助けてくださいお願いしますわ!」
「すまないが俺の許容範囲を越えているので助けることは出来ない。本当にすまないが後は一人で頑張ってくれ」
「むぅ! こんな美少女が助けを乞うてますのに、どうして断れるんですの⁉︎」
「よし、自分で自分のことを美少女と言い張れる元気があるならもう大丈夫だ。後は任せた」
「何をですの⁉︎」
ギャーワギャーワと言い争っている一刀達の元に明らかに盗賊っぽい見た目をした三人組の男共が走って来た。
「見つけたぜぇ! お? 何だ彼氏かいお嬢ちゃんよぉ」
「か、彼氏⁉︎」
「いいえ違います」
「ほぉ、だったら通りすがりの男に助けを求めたのか。良い判断だけど、見た所ヒョロッヒョロだなぁ。ん?」
ニヤニヤしながら一刀を見ている盗賊は一刀の上で警戒しているアルに気がついた。
「おいおい、このにいちゃんアルミラージュを頭に乗せてんぜ。もしかして魔物を仲間にする個人技能持ちなんじゃあねぇか! だったら話は別だ。お嬢ちゃんを素直に渡したら見逃してやるつもりだったが、取っ捕まえて奴隷屋に売間渡してやるよ!。来ている服も見たこと無い高そうだしな!」
品定めをするように見つめ続けられた一刀は頭に青筋を浮かべイラついている。
(はぁ・・・。結局面倒事に巻き込まれるのか・・・)
「な、何をしてますの⁉︎ は、早く逃げないと奴らに!」
「おら、お前ら! とっととひっ捕らえてあのお嬢ちゃんで愉しむとしようじゃあねぇか!」
「「あいさぁ!」」
いかにも親分子分の関係をしている盗賊達が一斉に一刀達に突っ込む。青髪美少女は一刀にしがみつきながら「もうダメッ!」と目をギュッと瞑っていた。そこへ。
『バンッ!』 「ふぐおぁぁ⁉︎」
奇怪な音と共に親分と思わしき盗賊の頭が吹き飛ぶ。
「「・・・は?」」
その子分達は何が起きたのか分からず、倒れた頭の無い親分の死体を見つめる。
「・・・? な、何ですの・・・?」
青髪美少女も何が起きたのか分からず、一刀にしがみついたままポカンと口を開けていた。
「ふぅ、俺に手を出さずにいたら死なずにいたのにな」
と、まるで銃口に息を吹きかけるかのように手銃を放った指にする一刀。
(ふむ、初めて人を殺しちまったが、特に何も思わないな。ここが異世界だからか、それとも相手がクズみたいな野郎だったからか・・・)
一刀は考え事をしながら、撃ち殺した死体を見る。
「あ、兄貴ぃ⁉︎ い、今のはお前がやりやがったのか⁉︎」
「そうだけど?」
「く、ふ、ふざけんじゃあねえ⁉︎ よ、よくも兄貴を⁉︎」
「いきなり襲って来といて、親分殺されてふざけるな、か。全くふざけてんのはどっちだろうな・・・」
「く、クソがぁ! 兄貴の仇だあ⁉︎」
「え、突っ込んで来るの?」
ナイフを構え一刀に突撃する子分A。
『バンッ!』 「ひぃぎゃあ⁉︎」
無慈悲とも思える一刀からの発砲に散る子分A。頭は吹き飛び、まるでザクロのように地面に崩れ落ちた。
「・・・ぅッ」
青髪美少女は爆散頭を直視してしまったからか、吐き気を必死に抑え、ザクロから目を背ける。
「さて、あとは・・・」
一刀は手銃の構えを何が起こったのか分からずに放心している子分Bへと向ける。
「お前だけだな」
「・・・ひぃ⁉︎ た、頼む! 命だけは助けてくれ! お、俺はあいつらに利用されていただけなんだ頼むッ!」
よほど一刀が怖かったのか、頭を地につけ必死に命乞いをする子分B。
「・・・・・・」
「か、金も払う! あ、アジトに今まで貯め込んでいた金が有るんだ! そ、それをやるから、いや、差し上げますから命だけは・・・ッ!!!」
「ふむ・・・」
少し考える一刀。
「・・・良いだろう。その貯め込んでいる全財産を渡したら命だけは助けてやるよ。もし、嘘だったら・・・分かっているだろうな?」
「ひぃ⁉︎ は、はい⁉︎ 必ず全てお渡しします!」
「よし、アジトとやらに案内してもらおうか」
「あ、ありがとうございますッ!!」
もうどっちが悪役か分からない状況になっている一刀達。子分Bはアジトへと一刀を案内しようする。
「・・・おい、あんた」
「・・・・・・」
「あんただよ! いつまでしがみついているんだ?」
「・・・ぇ? は! 申し訳ありませんですの!・・・ひゃ⁉︎」
青髪美少女は一刀にしがみつくのを止め、立ち上がろうとするが腰が抜けているのか力が入らず、立ち上がれない。
「あ、あれ? 何でですの・・・⁉︎」
「はぁ・・・腰抜かしたのかよ・・・」
「うぅ・・・」
「ちっ・・・。動くなよ」
「え?・・・き、きゃあ!」
動けない涙目の美少女を置いていく事が出来ず。お姫様抱っこをする一刀。
「な、何をしていますの⁉︎」
「やかましい。あのまま置いていってほしかったのか? 腰が抜けて動けない状況で」
「ぅッ・・・そ、それは・・・」
「それにせっかく助けてやったんだ。礼ぐらいしてもらわないとな・・・(ニヤリ)」
「⁉︎ や、やっぱり降ろして下さいですの!」
そのまま青髪美少女を抱き上げたまま。子分Bが案内するアジトに辿りつく。
「・・・なんじゃこりゃ」
そこには7.8人の死体が転がっており、中には盗賊ではない格好の死体もあった。
「そ、そのお嬢ちゃん達の仕業っす・・・。俺達は平和に暮らしていただけなのに、いきなり襲って来て・・・うぅッ!」
子分Bが涙目ぐみ、腕を顔に当て 泣く。それを見た一刀はジト目で青髪美少女を見る。
「う、嘘ですわ! そいつらギルドから討伐依頼が出ていた盗賊達ですの! ちょうどこの依頼に行く方達が居たので、付いて行きましたら。さっきの大男が強過ぎて、他の方達を殺されてしまって・・・必死に逃げていましたら貴方に会えたんですの!」
「と、言っていますが?」
「ちっ、バレたか」
「しばくぞ? 早く金持ってこい!」
「へ、へいぃ!」
子分Bは人がギリギリ住めるかのような建物へと入って行った。
「そろそろ動けるだろ。降ろすぞ」
「あ、はいですの・・・」
一刀はゆっくりと青髪美少女を降ろす。
「申し遅れましたわ。私、リナリア・アシュターと申しますの。この度は助けていただきありがとうございましたわ」
リナリアと名乗った美少女は頭を下げお礼をした。礼儀はちゃんとあるようだ。
「まぁ、成り行きだったしな。どういたしまして、か」
「あ、あの、お名前をお伺いしても?」
「ああ、俺はカズト。カズト・タケダだ。宜しくな」
「カズト・・・ですの」
リナリアはうっとりと頬を染め、一刀を見つめる。そこへ
「旦那ぁ! 持って来ました!」
ジャラジャラと音をさせた袋を持って来た子分B。
「こ、これで命は・・・」
「ああ、約束通り助けてやる。しかしだ・・・」
一刀は指を子分Bに向け、言い放つ。
「次、俺達を狙ってみろ。命乞いは役に立たないと思いな」
「へ、へいぃ! しかと心に刻みましたぁ!」
こうして盗賊のアジトを出た一刀達。
「カズトはこれからどうしますの?」
「俺か? 出来るなら近くの街に向かいたいな」
「な、なら! 一緒に行くのはどうですの? 街の方向が分からなければ案内だって出来ますし!」
「ふむ、それなら頼もうかな。正直、街までのガイドが一番助かるし」
一刀の了承にぱぁっと明るくなるリナリア。だが、一刀の頭の上にいるアルが気になり質問する。
「そういえば、カズトはどうしてアルミラージュを頭の上に乗せれますの? もしかして、あの大男が言っていた通り、魔物を使役出来る個人技能ですの⁈」
「いや、そんな個人技能持ってねぇよ。こいつの名前は”アル”。昨日仲間になったばっかりなんだ。なぁアル」
一刀がアルのアゴを撫でると「きゅ〜」と鳴き、気持ち良さそうに目を細める。
「か、可愛いですの・・・! か、カズト。私も撫でても・・・?」
「アルが良いなら大丈夫だろ」
「きゅッ(ぷいっ)」
「・・・ッ⁉︎ まだ信頼が足りないですのね・・・」
次回の投稿は出来れば年末までには出したいです