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宇宙エレベーター②

8.宇宙エレベーター②

やがて地球は、無数の星の輝きの中に消えて行きました。

「おや、何だか暑くなってきたぞ。どうしたんだ」

ヒロが呻くように言いました。

「本当だ、暑くてたまんないや」

けんすけが悲鳴をあげます。

「そうだね、こりゃたまらなく暑いや。こいつは、もしかしたら・・」

りょうたがそう言ったのは、宇宙エレベーターの壁が暑い熱を放ちだしたのに気付いたからでした。

三人の額から汗が滴り落ちだしました。

「こらー、説明員、何とか言えよ。こらー」

ヒロが怒って声を張り上げます。

「コホン、何でしょうか?何かご用でしょうか。ああ、それから、忘れていましたが、この次から、私を呼ぶときは、ツアーコンダクターと呼んでください。何ですか、今休憩時間で、お茶とお菓子を楽しんでいるのです。用事を早く行ってくださいな」

いつものように、どこからか、声がします。

「何なのだ、この暑さは。体が焼けてしまいそうだ」

ヒロがイライラして叫びました。

「コホン、ああ大変だ・・・。大丈夫です、落ち着いて下さい」

コンダクターは急に慌てたような声になりました。

「エレベーターの壁が異常な熱を帯びているよ。その原因は何だい」

りょうたが冷静に言います。

「コホン、皆さん、大変失礼いたしました。今、宇宙エレベーターはちょうど太陽のそばを通過しています。耐熱装置を始動させるのをすっかり忘れていました。早速準備を致しますので、もう少しお待ちください」

コンダクターはあくまで冷静に眠たくなるような言葉使いです。しかし、言葉じりに少し不安げな響きがありました。

その上、ますます熱くなってきましたものですから、けんすけが、泣きそうな声をあげて言います。

「コンダクターのおねえさん、ますます、暑くなってくるよ、どうしてなの」

「コホン、宇宙エレベーターは現在、太陽にもっとも近づいています。おまけに、太陽の強い引力で引っ張られているのです。暑いのはとうぜんです。もう少しの我慢して下さいな」

あくまでもコンダクターの声は他人事のように冷静です。どうやら声は遥か遠くから無線通信で送られてくるようです。

「暑い、暑くて死にそうだよ。このままだと僕らはどうなるの?」

けんすけが泣きそうな声を出しました。

「コホン、そうねえ、焼き鳥になるかも・・。あ、いけない、つまらないことを喋ってしまったわ・・・」

「こら、何とかしないか」

ヒロがもうぷりぷりと怒ってエレベーターの壁をどんどんと殴りつけました。

壁は熱で真赤に焼けていつ様です。

「我慢できないほど、暑くなっています。何とか手を打たなくてはいけないのではないですか。あなたが出来なければ、別の人に言ってやってもらって下さい。それでなければいつまでもこの宇宙エレベーターの壁をガンガン叩き続けますよ、壊れるまで」

りょうたが怒っているということが分かるほどに声を大にして、また力をいれて言い続けました。

「コホン、分かりましたよ。今すぐ何とかしますよ。だから静かにしてください」

コンダクターがやや困ったようなこわねで答えました。

同時に、大きな氷の塊が天井からドスンと落ちて来て暑さにじゅうじゅうという音を立てました。氷の塊は、一辺が一メートルほどの立方体でした。三人は大喜びで氷の塊にしがみ付きました。

「ああ、冷たくて気持ちが良いや」

けんすけは嬉しくて、氷の塊をぺろぺろとなめました。

「ほんとに気持ちい良い」

ヒロも嬉しくて氷の塊に頬ずりをしました。

「そうだ、これで一息だ」

りょうたも氷の塊を抱き寄せました。

氷の塊から白い湯気がじゅうじゅうと立ち上って宇宙エレベーターの内部は湯気で見えなくなってしまいました。

こうして三人は、個体が解けて液体に変わるときに溶解熱を奪い、液体が気化するときに気化熱を奪うので温度が下がることを学んだのでした。

「こらあ、コンダクター。宇宙を旅する人達が快適に過ごせるように、もっと努力をしろ」と、三人はソプラノとテノールとバスの声で合唱し、声のかぎり張り上げて叫んだのでした。

こうして、宇宙エレベーターの中の三人は天の川に届くまでまだまだいろいろな危険や出来事に遭遇するのでした。


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