ヒューバートという男:3
少し短文です。
「本日のレース、すばらしかったですわ!わたくし、ヒューバート様なら実力で優勝できると分かっていましたのよ。まだ、お祝いをお伝えしておりませんでしたでしょう?」
令嬢はしなだれかかるようにヒューバートの腕に手をかけ、大きく開いた襟元から零れそうな胸を押し付ける。
ヒューバートはそれが目に入るのも嫌そうに鐙に足をかけなおす。
「八百長も賭けも台無しになって親父たちは大損したようだな。お前も余計なことをしなければ何の問題もなく儲けていただろうに、残念だったな。」
辛辣な言葉にひるむ令嬢を冷たい目で見下ろしながらヒューバートは続ける
「役立たずで能無しの馬乗りと思っていたが、金食い虫の父よりは利用できそうだと思い直したのか。」
令嬢の顔が引きつる。
「そんな事…。わたくし、見直しましたのよ?あの馬で優勝できるなんて」
ヒューバートの瞳がその言葉にギラリと光った。
「調子が悪いと知っていたのか。お前は。」
「俺の体が欲しいのか、金が欲しいのかは知らんが、俺は先ほど父から勘当された身なのでな。手負いの馬と共に何処へでも行くがいいと言われたぞ。」
一度怯んだ令嬢だったが必死に食らいつく。
「何を、仰っていますの…ヒューバート様の、子爵家はどうなさるのです」
「は。両親、それに兄。姉もいる。俺なんかに頼まずに金の事ならそっちに頼めばいい」
「わたくしが貴方にした出資は…馬や、世話係は…」
「アレを世話と呼ぶか?馬は一頭は手負いで俺のものだと父から託った。もう一頭は相当な暴れ馬で見放され、仕方なく男爵家に引き取って頂いた。」
ヒューの事だ。そしてヒューバートは自嘲めいて笑う
「人の事を言えた義理ではないが、これ以上物のような扱いを受けるのは俺もコイツも御免なんでな。」
縋る令嬢を無視してヒューバートは鞍に跨った。
白馬の首元を優しく叩いてヒューバートはヴァレリーを見た。
「…そういうわけだ。じゃあな。」
暫くお互いに見つめあっていたが、ヒューバートは視線を断ち切るように白馬を走らせた。
「追いかけましょう。ヒュー、動ける?」
鞍を抱えるヴァレリーにヒューはひひんと嘶いた




