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エリザベス

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狂気の原因を探る為、私は深淵に身を投げた。


闇の中に踏み込んでこそ、闇を知ることが出来る。そう思ったのだ。


結果として、私は闇に飲まれることになる。


闇に抗えるほどの精神を、私は持ち合わせていなかったのだ。


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「あら、ジェシカじゃない。久しぶりね」


部屋の前に現れたのは、先生の養子、ジェシカ。


たまに来て、愚痴をこぼして帰る子。


「エリザベスはカマキリ!」


今日の彼女の一言目。普段は、聞いてエリザベス!が一番多いかしら。


「え、えぇ。見ての通り、私のモデルは蟷螂よ」


私の足は四本。というか、下半身そのものが変化しているんだけどね。本当に、下半身はそのまま蟷螂。


あとは腕。肘の辺りから、硬くて鋭いトゲがギザギザ。指とかはほとんど残ってないの。腕全体が、まるで蟷螂。


「カマキリって強そう!カッコいいよエリザベス!」


「そうかしら…まぁ、ありがと。ところで、何かご用かしら?」


また実験されなかった不満かしら。見たところ、何も変化無いみたいだし。


「今ね、みんなのモデルを覚えてるんだけど、実際に見て覚えた方がいいだろうってゴードンが!」


ゴードン…あぁ、ファーストの鳥系のお爺さんだったかしら。まだご存命なのね。


「なるほどね。それで、私は何かした方が良いのかしら?」


「私といつもみたいにお話してくれるだけでいいよ!」


私は普段、聞いてるだけだけどね。


「そうねぇ、何か話題は?」


「あっ、じゃあ質問とかしてもいい?エリザベスも"ダイニキジッケンタイ"だよね?」


アクセントが変。可愛い。


「私はセカンドって呼んでるけどね、と言っても。あんまりまとめて話題にあがることないけど」


というか、私達はあまりお互いの話をしないのよね。まぁ、全員が個人の部屋と銘打たれた独房で暮らしてるのだし、お話する相手もこの子ぐらいしかいないしね。


「エリザベスの実験前のお話聞かせて!」


「へぇ…長くなるわよ?」


私は自分語りが大好き。長すぎて誰も聞いてくれないけど。


こんな機会久しぶりだわ。


「うん!聞きたい!」


うふふ、可愛いわねホント。


「それじゃ、まずは私が産まれた頃の話。私はとある王国の、富豪の家庭に産まれた一人娘だったの」


「フゴウって?」

あぁそうよね。


この子は"お金"という概念を知らないのよね。


「裕福な…そうね、なんて言えば良いかしら…とってもお家が大きくて、キレイな服を着て、美味しいご飯が毎日出てきて…」


ダメだわ、伝わる気がしないわね。


彼女はここから出たことが無いんじゃなかったかしら…


「うーん…分かんないよ」


そうよねぇ。


「まぁ、気にしなくて良いわよ。とにかく…毎日とっても楽しかったのよ!」


まぁ間違ってはいないわよね。


「自分で言うのも少し恥ずかしいけど、私はその辺りでは一番の美少女だったのよ」


「エリザベスキレイだもんね!」


「ふふ、ありがと。だけど、そんな美少女の幸せな毎日も、長くは続かなかったわ。あれは私が八歳の頃…」



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「…こうして私は蟷螂人間になりましたとさ。そして、今に至るのよ」


「面白かったよ!絵本みたい!」


振り返ってみたら本当に、我ながら数奇な人生ね。


幼少ながらに私は、普通の人と結婚して、普通の子供を授かって、普通に年老いて朽ちていく、と思っていたけれど、あの頃の私には想像もつかないような今に辿り着いたわね。



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