ゴードン
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「聞こえなかったのか?承諾だ。交渉成立」
国のお偉いさんだかが来た。三人組。
内容は簡単。私には実験データの提供。連中からは資金提供。
これを蹴る訳がない。
実験続けるためには金が掛かる。
幸いにも材料は腐るほど居やがるしな。
細かい条件には目を通してないが、問題無い。
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「最初がビリーで、次がゴードン。マリリン、スティーブ、マリア!これが第一期!」
お父さんはただパンを食べている。
「ルーシー、エリック、えっと…アーロン、エドワード。エリザベス。第二期でしょ?」
お父さんはただスープを啜っている。
「第三期がジャックにアリサ、ジョーとカート、それからマイク!ほら!全部覚えたよ!」
「モデルは?」
「ルーシーがチーター!」
「あとは?」
「…えっとぉ…」
「出直してこい」
お父さんは食器を下げて今日は研究室に入ってしまった。
「もうっ!」
蹴りつけた研究室の扉は、ガツンと音を立てた。
「お嬢ちゃん、何か用かね」
「ゴードン聞いて!」
「今年もダメだったようだな」
「そうなの!いつになったら実験してくれるのかな…」
ゴードンは私の方を見ることなく、椅子に座って読書をしている。
「あ、それでね!ゴードンに聞きたいことがあるの!」
「この老いぼれに答えられることならば」
「全員のモデルを覚えるにはどうしたらいいのかな!」
自分で言っていて言葉足らずだと思ったけれど、ゴードンはそれだけで理解してくれた。
「今、誰ならば分かるのかね」
「ルーシーがチーター!」
バカの一つ覚え。我ながらそう思う。
「これは思ったより大変そうだな。ふむ、パターンは分かるか?」
「それはスティーブに教えてもらった!トリとか海洋生物とかでしょ?」
トリ、海洋生物、ネコ科、コンチュウ、大型。正しくは違うけれど、これでいいと教えてもらったのだ。
「左様。ふむ、パターンが分かるのならば、然程難しくあるまい。どれ」
ゴードンは本を机に置いて、立ち上がって私の前に来た。
鉄格子を挟んで見合うのは誰と会う時も一緒だけれど、ゴードンは少し違う。
目の前にいる私を透かして何かを見ている。そんな感覚すらある。
「では問おう。儂のモデルはなんだね」
「えっと…トリ?」
ゴードンは大きく声をあげて笑った。
「トリは区分だ。自分でさっき挙げていただろう?儂はタカだ。ほとんど特徴は無いがな」
「タカ…タカってどんなトリなの?」
私は、モデルの生き物を見たことがない。だから、名前を聞いても正直ピンと来ないのだ。
「そうか…お嬢ちゃんは"動物"を知らないのだな。よし、儂が全モデルの動物について教えてやろう」
「ほんと!?」