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03話:まずは身支度から

洋服箪笥を画像検索すると怖いのがひっかかる

 どんな暗い夜もきっと明ける

 カーテンの向こうから聞こえる鳥の声に目が覚めた。朝日が部屋を照らしだして少し眩しい

 制服のまま寝てしまった

 この制服目当てに勉強を頑張ったのに、ただの一度も学校の門をくぐることなくしわくちゃになった制服

 また泣きそうになって、あわてて目をこすった

 つけ慣れていない腕時計が顔をこすって痛い


 時計をみれば時刻は6時を指していた。今までなら7時まで寝てたのにずいぶんと早起きだ

 かといってもう一度、寝る気にはならずに起きることにした

 キッチンまで歩いて行き、流しで顔を洗おうとして気が付いた。タオルってあるのかな?

 流しにタオルかけはあるけど、そこにはなにもかかっていない

 タオルかけがあるなら、なにか布はあるはず。そう思って辺りを探してみる。最悪なければ持っているハンカチで拭けばいいだけだ


 棚の中・・・ない

 台の下・・・鍋とかフライパンとか調理用具がたくさん。でも布はなさそう

 洋服タンスの中・・・これは服?

 二つ並んだタンスの片方の中、ハンガーにたくさんかかっているうちの一つを手に取ると広げてみた。濃紺色のワンピースはサイズが大きくて、私が着たらだぼだぼになりそうだ

 小さいサイズを探して取り出してみたが、今度は背中に大きなスリップが入っていて、これでは背中がむき出しになってしまう

 よく見比べてみれば、サイズが男性向け?と思えるほど大きすぎるものや、逆に子供向けの小さすぎるもの、スカートの後が花嫁さんみたいに長すぎてひきずってしまいそうなもの、袖だけが太いもの、基本の形や色は揃いだけど、変な形の服がいっぱいだった

 きっとこれがここの制服なのだろう

 よくわからないが、それでも自分にあった服を探しだすと、ほかは仕舞ってそれだけ横に避けておく

 次にタンスの下の引き出しを開けてみると、今度はエプロンがたくさん入っていた。こちらは服ほど種類はなく、すぐにサイズがみつかったので、これも避けておいた

 もう一つのタンスはからっぽで、結局タオルは小さなチェストの中にあった。他にも下着とかいっぱい入ってたけど、こちらはサイズを探すのが面倒なので後回し


 顔を洗ってさっぱりとすると、気分もちょっと晴れてきた

 次はなにをしようかなって考えてたら、お腹がすいているのに気が付いた。キッチンに鍋はあっても食材はなかった。これってどうすればいいのかな

 考えてても朝食が出てくるわけでもないし、とりあえず服を着替えることにした。しわくちゃになった高校の制服を一生懸命のばしてから、からっぽのタンスのほうにしまう。ここもちょっと埃っぽい

 そしてみつけた服を着ようとするけど、ひな人形の香りっていうのかな? しばらく使われていない服の香りがした。うーん、このまま着たくないなぁ

 匂いが薄れないかと、両手につかんでバサバサと振ってみる


 そうしていると、きいっって小さな音が後ろでした


 私の後ろには、壁とドアがあるだけ

 そう、廊下に続くドアが


 「起きたか。人間は食事を・・・」


 「きゃあああああ!!」


 これ以上ないってくらいの悲鳴が口から出た。きっと穴に落ちていた時よりも大きいはずだ

 顔が真っ赤になっているのが自分でもわかるくらい熱い

 下着姿が少しでも隠れるように左手でしっかりとワンピースを抱えこんで、もう片手でその辺にあったものを手当たり次第に魔王サマに向って投げつける


 「変態っ! 覗き魔っ! 出てって!」


 「わかった」


 男は平坦な声で答えると、言われたとおりに出ていった。意外と素直な人なのかもしれない

 でも変態だっ!

 私はぷりぷりと怒りながら、急いで服を着た

 今度はナフタリン臭くたって気にならなかった。そしてエプロンをつければ出来上がり

 よく漫画でみるようなメイドさんの一丁あがりだ

 メイド服を制服として用意しておくなんてさすがは変態魔王サマだ。花の女子高校生に首輪をつけるだけのことはある。しねばいいのに


 備え付けの鏡でおかしなところはないかチェックしてから、扉を開ける。メイドさんの定番のドレスヘッドも探したら、チェストの中にちゃんとあったので着けてみた。けっこう可愛い

 ・・・・・・本当はこのまま部屋に鍵をかけて引きこもっていたいのだが、魔王サマの言っていた「食事」の一言につられたのだ

 うぅ、飽食の時代に生まれて、空腹を知らないこの身が憎い


 「着替え終わりました~」


 勢いでフライパンまで投げてしまったバツの悪さに、自然と声が小さくなる。

 扉をほんの少しだけ開けて首だけを出して、廊下を覗くと、昨日と同じ格好で佇んでいる魔王サマがいた

 相変わらずカッコイイなって、変態相手なのに見惚れてしまった


 「それで、なにかご用でしたか? 食事がどうとか言ってましたけど」

 「ああ、人間は食事を定期的に摂取するのだろう」

 「定期的って・・・・・・いちおー、朝昼晩の3回食べますけど」


 本当は時々朝は抜いてしまうし、間食についつい手が伸びてしまうが、基本は3回で間違っていない


 「3回か。前にいた人間は朝7時と昼の14時のみだったが、お前はいつ食べるのだ?」


 前にいた人ってどんな人だったんだろう?

 てか、いつって、いつ食べるのが普通なんだろう? なんとなくいつもの平均的な時間を言ってみる


 「私は、いつもは朝は7時で、昼は12時。夜は8時くらいに食べてました」

 「わかった。その時間に食堂に用意しておこう」


 食堂あるんだ。キッチンが部屋にあるから、ここで自分で作って食べるのかと思っていたが違っていたようで安心した。家庭科は7だけど、料理とか作れる自信は正直いってないのだ

 あと用意しておくって、もしかして魔王サマの手料理? まあ普通に考えるとコックさんがいるのかな。これだけ広そうなお城だから、きっといっぱい雇われてる人いるよね

 先に歩く魔王サマを追いかけて長い廊下を歩いていく。昨日通った時は、薄暗くて怖かったのに、今日は明るい光に照らされて、結構イイ感じかも♪

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