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 月は不気味なほど奇麗だった。その不気味さに魅了されるわけもないので俺は眠りにつこうとした。しかし、中々寝付けなかったので最近のことを思い返す。

 色々と起こりすぎだ。この少女の周りを取り巻いた問題が多すぎる。

 この少女はこれからどうするのだろうか。化け猫の問題が解決しても帰る家はこの子にあるのだろうか。世話焼きで厄介な奴であることはなんとなく理解した。が、考え出すとなぜか眠気がやってきた。

 月の光が割られたガラスに反射して姫乃の顔を照らしていた。とても奇麗だった。

 俺はそれから眠りに落ちた。


 目が覚め、携帯で時間を確認すると午前2時だった。なんとなく姫乃が寝ているはずである場所を確認した。しかしそこに―――

 「いない……?」

 そこに姫乃がいなかった。どこにいった。

 「どこだ!」

 声を荒げるが、だれも反応しない。その声は粒子にもなりきれず、俺の耳に帰ってきた。周りを見渡すがやはり誰もいない。

 姫乃を探すために、ヒーローごっこを継続するために俺は廃墟ビルを出た。外に出ると月光は気味が悪かった。

 走った。無意識にただ走った。そして着いた。

 着いた場所はあの猫と出逢った路地裏だった。暗い路である。無意識に正解を探した結果がここだった。

 その時、俺の後ろの方でぐるる、と鳴き声が聞こえた。嬉しすぎて悪寒がした。

 逢いたかったよ、と嘘をつくのは憚られた。そこまで余裕に満ちていない。死ぬかもしれない。まだ死にたくなかったけど。

 猫はこちらを探るっているようだった。そんなに探られても照れるからやめてほしいなとは特に思わない。

 振り返ると猫はやはり化け猫だった。

 月の光は化け猫を不気味に照らしていた。気味が悪い。君が、姫野が悪い―――戯言だ。どう考えてもやはり俺が悪い。

 これからどうするか悩む。サマエルがこの状況に気付いてくれることに賭けるしかないのか。俺が化け猫を倒すなどは無理だし、食い止めるのも無理だ。約十時間も食い止めようとすれば、確実に死ぬ。どうにも出来ないのだろう。俺は何も出来ないのか。

 瞬間化け猫はこちらに走ってきた。そしてその尖った爪で俺の顔を引き裂こうとする。が、化け猫はそういった戦闘に不向きなのか慣れていないのかは不明だが俺の顔の目前で空振りした。

 しかし、それだけでは猫も満足できなかったらしく、俺に愛の表現として激しくぶつかってきた。その愛の大きさは計り知れないほど重く、テレビで見るお相撲さんを彷彿とした。冗談で現実を逃避しているだけだ。

 でも逃避も出来なさそうだ。体当たりは思った以上に痛い。

 体中を痛みが全速力で駆け抜ける。そんなに頑張って運動会にでも出場する気か何かかと問いたくなった。

 痛い、痛い、。、。、。痛い。

 「あがっ……!」

 どうもヒーローごっこは終わりそうだった。

 死ぬ、死んじゃえ、死んだら、死んで、

 死ね。

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