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 四月十四日、月曜日は生憎の雨である。朝、起きると空がどす黒い雲に包まれ、寒冷な雫が俺を痛めつけていた。昨日は晴れていたのになと小さい声で言った。

 「あ、起きたし」

 声のしたほうを見ると姫乃が傘の柄を右手で握りながら、そう呟いていた。

 「お前、傘持ってんのかよ」

 「こう見えても準備はいいほうだし」

 そう言って、姫乃は傘を俺に差し出した。

 「お前も入るし」

 相合傘という形になった。俺はそこに少しばかり恥ずかしさを覚えた。俺は姫乃に連れられてある廃墟となったビルに着いた。サマエルのいる廃倉庫とは違った雰囲気を感じた。そこには割られた硝子やら何やらが散らばっていた。

 「ここは?」

 「私も知らないし。ただここは誰も来ないから安全だし」

 この場の雰囲気から安全という言葉は合ってないような気がした。

 「お腹減ったし」

 「そういや、お前食べ物はいつもどうしてんだ」

 「持ってきてくれる」

 「え?」

 誰が、と言い終える前にビルの扉のほうから大きな声が聞こえた。

 「姫乃ちゃ~ん!」

 俺は扉のほうを見た。そこには一人の男が立っていた。男は顎髭を整えており、三十代前半のように見えた。その男はとても笑顔であった。

 「あれがご飯持って来てくれる」

 姫乃にあれ呼ばわりされた男はそのことをあまり気にしていなかった。

 「さて、はい今日の弁当って―――」

 男は俺に気付いたようであった。さっきまで気付いていなかったことに驚く。

 「君、誰?」

 その男は途端に笑みをなくし、冷徹な表情を俺に向けた。少し、怖いと感じてしまった。

 「知り合いだし」

 俺が何も言えないでいると、姫乃が横から助け舟を出してくれた。

 「そうか」と男は短く言った。

 それからその男と話した。

 そこから知れたのは男は船崎大輔ということ。近くの会社で事務員をしていること。姫乃と出会ったのはごく最近だと言うこと。犯罪は犯す気がないということ。

 結果、姫乃が化け物であるとは知らないらしかったのでそのことについては黙っていた。

 「じゃあ仕事だから」

 そう言い残して船崎は去っていった。

 その日の午後からは雨がやみ、空に太陽が見えていた。湿気が強かった。

 昼食も夕食も船崎がやはり持ってきた。迷惑じゃないのかと聞くと楽しみでやっているからと答えた。犯罪者にぎりぎり踏み止まっている感じがした。

 火曜日も同じように過ぎていった。朝は雨が降っていなかったので湿気がなく、過ごしやすかった。船崎は月曜日と同じ風に朝食、昼食、夕食を持ってきた。そこまでは正常であり、なんとなく安心していた。これでもう終わりだと思った。

 夜を迎えた。

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