4月7日 入学式
催眠術を使っているとしか思えない校長先生の心温まる話を聞いた後、遅刻した理由を聞かれたので差し障りのないように答えた。そして自分のクラスが1―3ということを確認してのんびりと廊下を歩いていた。
「おぉ、隼じゃねぇか!」
突然、後ろの方から小学校時代から中学校時代にかけてよく聞いていた大きな声が聞こえた。
「高村か?」
案の定、高村宏保だった。高村とは家が近かったため、小学校の時から一緒に遊んでいた。ただ、高村は中学2年のときに親の都合というもので引越しをしてしまった。
「久しぶりやな。こんなところで何しとんねん?」
「教室に帰るところだよ。」
「俺も一緒や。教室に帰るとこや。そういやお前何組なん?」
高村はふと思い出したかのように質問をする。
「3組だよ」
そう答えると高村は嬉しそうな顔になった。
「そうか!ほんなら俺とおんなじクラスやないか」
「そういやお前は何をしてたんだ?」
なんとなく気になったため試しに聞いてみた。すると俺には高村の目が少し泳いだように見えた。
「いや、特に何もしてへんで」
そこでその話題を切った。
その後、高村と1年3組の教室に向かった。
「はい、これで今日は終わりです。そういえば最近なんか通り魔がこの辺りの出没しているらしいからみんな気をつけてね」
俺たちの担任をすることになった平良園は29歳の独身である。しかし透き通った声をしており、生徒からの評判はいいらしい。
「さようなら」
みんなが揃って一種の儀式のように言う。
「隼!一緒に帰ろうぜ」
高村は例のごとくあの大きな声で俺に呼びかけてきた。
「あぁ」
俺は短く答え、高村のいる方へ向かった。そして廊下に出る。
「そういやお前に1歳違いの姉がいたよな。この学校に通ってるのか?」
「せやで、ねぇーちゃんはこの学校に通っとる。それがどうかした……あ!そうか」
すると高村はニターっという書き方でしか表現するしかないようなそんな嫌な笑みを浮かべた。
「紹介したろか」
やっぱりそういう勘違いしてたか。
「ちげぇよ」
「違うんか。おもんない」
「もしお前の言うとおりだったらどうしたんだよ」
高村は少しの時間悩んだ。
「まぁ、応援したやろ」
「そりゃどうも」
そんな他愛もない話をしながら駅へと向かった。
霜月高校の目の前に駅はあるため朝は諸事情により走ったがおそらく普通は歩いたところでそう時間はかからない距離であろう。
「じゃあ、俺の家こっちやから」
高村の今の家知らねぇな、とか思いながら駅の前で別れた。朝のように慌ただしいわけでもないのでのんびりと電車に乗った。
あの姫乃って子、大丈夫かな。
不意に朝の出来事が蘇ってくる。あーゆうのを『不良』と呼ぶのだろうか。いや、なんかが違う気がする。結局あの子はなんだったのだろうか。
電車が自分が降りるべき場所に着いたため、その思考をやめる。どうにかなっただろう、とそう思うしか特にできなかった。そんな結論に至ったのとほぼ同時のタイミングで一人の女性が目の前にいたことに気がついた。
綺麗な人だな。
率直にそう思った。艶がある髪をしており、その髪は黒く長く、また目も大きい。少し外国人の血が混ざっているように見えた。
「君……。面白い運命を背負っているわね」
その女性はいきなり俺に話しかけてきた。
「え?あの誰ですか……」
「まぁ、いいわ。君とはまた会いそうだからね」
そう言うと女性は不敵な笑みを浮かべた。
「知ってる?化物って意外と君の近くにたくさんいるのよ。君はおそらくまだ知ることはできないのだろうけれど」
女性は俺には到底意味がわからないであろう言葉を残し、去っていった。
なんだったんだ今の……。まさか逆ナン!?ってあるわけねぇか。あ、自分で考えて悲しくなってしまった……。
彼女が言った化物という単語がなぜか引っかかったため、それを何度も何度も頭の中で反復させているうちに家に着いた。
可笑しなサブタイトルをつけている気がします。時間があるならばできるだけ感想を書いて頂けたら嬉しいです。