昇格
「みっともないですね」
突然、そんな声が聞こえた。そちらをどうにか振り向くとサマエルがいた。
「どうして……」
激痛により、感覚が麻痺している。喋るのがやっとである。
サマエルが登場したことにより、化け猫が逃げると予想していたのだが今度は逃げなかった。
「へえ、そうですか。じゃあ今、移しちゃいましょうか」
サマエルはそんなことを言い、俺の方を見て笑った。そして何かを空中に投げた。
「これでいいでしょう」
途端、猫がうめき出した。
「ふぎゃああああfssgdfdxzvgあああああああああああああああああdさあああggvdfgtfvあああああああsdfsdあああああああああああああああああああああ!」
猫は叫んでいた。
「お、おい何したんだ」
「移植です。あなたも覚悟しておいてください」
サマエルはそんなことを言って、また笑った。猫から青白い魂のようなものが飛び出た。そしてその魂みたものが俺の方にやってきた。
魂は俺に乗り移った。完全に、不手際なく。先ほどの猫の体当たりなど比にならない痛みがそこにあった。精神が喰われているようだった。精神と言う波を引き止めるようにそれはそこにいた。そこにいないが、やはりそこにいた。喰らう。
俺は死ぬだろうか、というのは今日何度も自分に問いかけてきた。それはいい、肉体的にはこれからも生きれるし頑張ろう。精神的には、俺は、死んだ。
暗い部屋だった。周りには何もない。暗く、ただ黒色で塗られているだけだ。そこに感動もなく、感涙もない。だれも喜ばないし、悲しまない。所謂、無の世界というものだった。
「これでいいのですか」
誰かが俺に問う。
「これが正しい終わり方だ」
俺はそう返事した。
「そうですか」とどこか淋しそうな返事をした。そいつの声を俺はどこかで聞いたことがあるような気がした。
目が覚めると、鉄が寂れた匂いがした。俺は廃倉庫にいた。
「あ、起きたし!」
姫乃が猫ではなく、人間としてそこにいた。
「あ~、起きた~?」
サマエルもいた。勢ぞろいである。全く嬉しくない。
「あれからどうなった!?」
俺は怒鳴るように言った。
「姫乃ちゃんは人間に戻ったよ、君は―――言う必要あるかい?」
サマエルは馬鹿にするように言った。
「そうか……サマエル、ありがとう」
「くくっ、礼を受けるようなことはしてないけどね。それにあなたはもう幸せにはなれないから」
それでもいい、誰かを救えたのならと言うとサマエルは俺を馬鹿にするわけでもなく、純粋に笑った。
「そういや、姫乃はこれからどうするんだ、家族のところに―――」
「私に家族はいないし、戸籍上はいるけどあんなの家族じゃないし。だからサマエルさんについてくことに決めた」
「えっ」
サマエルも驚いているようだった。
「うーん、まあいいや。で、あなたはこれからどうする?」
サマエルは俺にそう聞いた。
「これまで通りには出来ないから、これまでを装って生活するよ」
「そう、じゃ、また逢う時まで。困ったらまた私を頼ってもいいけど」
サマエルは歩き出した。姫乃もそれに付いて行く。
「じゃあ、ばいばいだし」
姫乃はそう言い、俺の視界から消えた。
俺はその日を境に人間から化け物へと昇格した。
最後がぐだぐだなのは許してください。




