表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リリカと優しい悪魔様  作者: 夕月 星夜


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/9

3


ユリウスと共に廊下を歩き、コンコンと小さく目的のドアを叩けば、すぐに中から返事があった。

入っていいと許しを得て、二人はそのまま部屋に入る。


シンプルな部屋には所狭しと積み上げられた本で視界が埋まり、目的の人物の姿は一切見えない。

けれどそれに戸惑う事もなく、リリカは奥へと歩いた。


「せんせー……」

「リリカ、どうしました?」


滝のように流れ落ちる金の髪、あざやかな青い瞳。

優しげな顔だちの穏やかな青年は、エディ・デヤン。それが彼の名前だった。


その顔を見た瞬間、ユリウスは引き攣った顔でその場から逃げ出そうと踵を返すが。


「おやおや」


すいっとエディが指を振った瞬間、ドアは無常にもユリウスの目前で締まり、おまけにガチャンと鍵のかかる音もした。


「いけませんねぇ……人の顔を見るなり逃げようなんて」

「せ、先生?」

「ああ、リリカは気にしなくていいんですよ。どうして彼がここにいるのかは知りませんが、ノコノコと私の前に現れたのが運のつきです。あの時の続きをはじめましょう」

「わー、まてまてまて!!」


いつの間にやら手にした杖に魔力が籠められていくのが見えて、リリカは慌ててユリウスを背にかばう。


「あ、あのあの先生!!」

「どうしました、リリカ。そこを退かないと危ないですよ?」

「か、彼を呼んだの、私なんです!!」


ピタリ。と、魔力が集うのが止まる。

次いで凍りつきそうなほどに冷たい目で、エディはユリウスを睨みつけた。


「……私の可愛い教え子に何嘘をつかせてるんですか」

「違うって、嘘じゃないって!!」

「ほ、本当なんです!! それで、先生に助けて貰いたくて!!」

「大丈夫ですよ、リリカ。使役にしようかと思ってましたが存在の欠片も残らないように跡形もなくかき消す事に今決めましたからね」

「ちが、そっちの助けてじゃないんですうううう!!」


もはや混乱の極みだ。けれどリリカが傍を離れたら、ユリウスはきっと酷い事をされてしまう。

そう思って、リリカはユリウスにぎゅっと抱き着いた。


「えっ、ちょっ!?」

「離れなさい、リリカ」

「せ、先生でも彼に酷い事したら、ダメです!!」


涙目で訴えれば、少し考え込んだ後、エディは仕方がないと言うように杖を下ろす。

それでもしがみついていれば、ユリウスにそっと手を外された。


「あー、なんだ、その。ありがとな」

「う、ううん。私、私の先生が怖い事して、ごめんなさい」

「主のせいじゃないから、気にするなって」


ぽんぽんと頭を撫でられて、リリカは「主?」と小首を傾げる。


「なんで私が主なんですか?」

「俺が主に召喚されると、必然的にそう呼ぶようになるんだが」

「わ、私、全然主なんかじゃないんで、やめて下さい!! だってそもそもあれ状況おかしいじゃないですか!!」

「なら、ご主人様がいいのか? あ、女の子だからお嬢様か」

「どっちでもないですったらーっ!!」


疲れる。全力で疲れる。ツッコミ疲れる。

ぜはぜはと肩で大きく息をしていると、そろそろいいかとエディが声をかけた。


「で、いったいどういう状況で、リリカは彼を呼び出したのですか? 私は初級精霊召喚をしてみるように言ったはずですが。どうして貴方のような悪魔が、しかも高位の悪魔が召喚されるんですか?」

「う、わかりません」

「私はまだ貴女に悪魔召喚の方法も、それを記載した魔術書の解禁もしていませんよね。なのに、何故?」

「その件で主はここに来たんだ。俺が確認しても間違ってなかったからな」

「間違ってなかった? 悪魔召喚の陣が?」

「いや、初級精霊召喚陣が」


ユリウスがそう言うと、セディの顔がなんとも言えないような複雑なものになった。


「……本当ですか?」

「使ってた魔術書通りだったし、こめられた魔力にも問題なかった」

「……だとすると、貴方は初級精霊召喚陣で召喚されたと? 魔界第15位の公爵じゃありませんでしたか? 実は精霊なんですか?」

「そんな訳ないのはお前が一番知ってるだろうが」

「ええ、そうですね。貴方は間違いなく魔族ですね。だからどういう事かさっぱり理解できないんですよ」

「まあ、普通はそうだろうな」


苦笑するユリウスの隣でリリカは小さくなっていた。

原因はわからないが、こんな厄介な状況になったのは自分のせいだ。

申し訳なさそうな顔で俯くリリカに気付き、ユリウスはまた頭を撫でる。


「そんな顔をするな、主。あの状況で主に非はない」

「でも……」

「大丈夫だ。こいつだって確認してくれるだろうし、何かおかしければ原因を解明するだろう。主はこいつの生徒なんだろう?」


その言葉に顔を上げれば、優しく微笑むエディの顔がある。


「そうですね、リリカ。確認しに行きましょう」

「先生……」

「貴女が進んで悪魔召喚をするような向こう見ずな性格でない事は、私も知っていますから」


あたたかい言葉と、頭を撫でるぬくもりにじんわりと涙を浮かべて。

リリカはこくりと小さく頷いた。




.

エディ先生はソロモン王の別名から取りました。

なので、ユリウスとの力関係がこうなります。

詳しくはまた作中で明らかになる予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=907020988&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ