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SEVENTH HEAVEN  作者: attoh
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田中 その3

●田中 その3


○コンビニ店外

マスターの運転するトラックにバイクを荷台に押し込み、扉を閉める

トラックの助手席に座る


マスター「田中ちゃん、ごめん。腹減ってるか? もしよかったらちょっと飯の残りを食ってくれないか?」

田中「いいですよ」


食べかけのパンにそのままかじりつく


マスター「珍しいな」

田中「何ですか?」

マスター「仮にも他人のおっさんの食いかけをそのまま何の躊躇いもなく食べるなんて」

田中「そんなこと気にしないから大丈夫ですよ」

マスター「いや。俺も歳だなって。飯が食えないってのもそうだけど、やっぱり子供を生むとどうしても同年代の子と比べちゃうもんだな」

田中「嫌がったりするんですか?」

マスター「俺は息子一人だからそんなことはあんまりないんだが、周りの人のこと聞くと悲惨なもんだぞ。食べたものは口にしないし、洗濯物は嫌がるし、お風呂入ったら一度全部お湯を捨ててから入るらしいし」

田中「そっちの方が変じゃないですか?」

マスター「まあ通過儀礼みたいなもんだよ。そうやって嫌がって一度離れる。だけどまた気づいた時にはくっついてる。そんなもんさ。お父さんなんてある意味可哀想な生き物だよ」

田中「理解があるんですね、マスター」

マスター「何が?」

田中「反抗期は仕方ない、って感じで」

マスター「そりゃあそうだろ。逆に従順な息子なんか嫌だよ。ただまあ、理屈じゃあそういうことだって分かってても、いざ行動されるとこっちもカッとなるな。バカ息子が! って思うけどよ」


笑いながらパンをかじる田中


マスター「俺もさんざん親に歯向かってきたからな。それを親の立場になって考えたら怒りもあるが、不安も多少あるな。反抗期は仕方ない。でも常に反抗期のままグレてしまったらどうなるんだろう、ってな」

田中「それも仕方ないですか?」

マスター「いいや。だが結局責任は親に振ってかかるからな。そうなったらぶん殴って追い出すよ」

田中「……らしくないですね」

マスター「ぶん殴るのが?」

田中「そうやって子供の不安を私に語るのが」

マスター「結局俺も不安だらけなんだよ。息子が変な方向に走らないようにって願ってやまないんだが、誰かに話さないと不安に押し潰されそうになる。……ああ、すまねえ。こんな話ばっかりして」

田中「……いえ」

マスター「行こうか。修理とあと仕事を教えてやるよ」

田中「分かりました」


パンの最後の一口をぽいっと口に入れ、カフェオレで流しこむ

トラックがコンビニから出ていく

カバンから携帯を取り出していじっている田中

お互いに黙ったままトラックは走っている

携帯をしまい無言が続く


田中「正直、マスターの気持ちは痛いほど分かりますよ。息子さんを思う気持ちとか」

マスター「そりゃ嬉しいねえ」

田中「でも私の親には当てはまらないんです」

マスター「……どういう意味で?」

田中「いつか話したいと思ってたんですけど、今話してもいいですか?」

マスター「いいよ」

田中「私の父は私が小学生になる直前に亡くなったんです。くも膜下出血でした。まだまだ若かったのに本当あっという間に死んでしまって……」

マスター「でも今もお父さん、いるんじゃないのか?」

田中「いますよ。再婚相手です。本当の父が亡くなってから、彼がやってきて再婚したんですが……ちょっと……」

マスター「ダメな奴だったか?」

田中「……結局小学生には苦しかったんですよ。今の父親が来てから母親もがらりと変わったというか。元々そうだったのかもしれないんですけど、母親も金遣いがどんどん荒くなって今はアパート暮らしで。すぐ隣に小学生が寝ているのに、頻繁にセックスしてたんですよ。それから今の父親は暴力こそ振るわないものの邪険に扱うようになって、それに追随して母親も――」

マスター「着いたぞ」


○バイクショップ

SHモータースと看板が出ているショップにトラックが入る


マスター「とりあえず。今はバイクのことだけ考えろ。また帰る時に話そう。乗せてってやるから」

田中「でも修理できたら」

マスター「いいから。とりあえず改めてここの奴らに挨拶しておけ。来月からお世話になりますって」


マスターがトラックから降りる

荷台のバイクを下ろしてショップの中に入っていく

田中もトラックから降りて、マスターの後にくっついていく

バイクを押すマスターが後ろを振り返り、田中に向かって言う


マスター「ほら、言われた通りにしないか」

田中「あ……はい! 来月からお世話になります、田中です。宜しくお願い致します」

従業員「斉藤社長。新しいメンツって田中ですか?」

マスター「そうだ、悪いことねぇだろ?」

従業員「まあ見知ってますし、そこそこできるからちょうどいいですけどね。あのバカよりかは使えますね」

マスター「そういうことだ。今度はお客様から従業員に変わるからな。みっちりしごいてやれ」

従業員「うっす。よろしく」

田中「宜しくお願いします。マスター、これからも宜しくお願いします」


手をひらひらさせて立ち去るマスター

小声になって囁く安田


従業員「なあ、田中」

田中「はい」

従業員「マスターって何だ? 斉藤社長って呼ばないのが昔から気になっててな。喫茶店かバーでもやってたのか?」

田中「昔、喫茶店やってたんですよ。そこの店が繁盛したら従業員に店を売って、元から好きだったバイクについて店を出したみたいです。本人から聞きました」

従業員「そういうことだったのか……。ありがとな、教えてくれて」

田中「いえ」

マスター「田中ちゃん。とりあえず自分のバイク直してみようか」

田中「はい!」


店の奥へと走っていく田中

工具を使ってバイクを直していく

時々従業員に聞きに行き、指示を仰いでまた直す

マスターがそれを見た後に電話をかけている

汗を流し、直していくうちにだんだんと日が暮れていく


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