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SEVENTH HEAVEN  作者: attoh
13/15

悠太 その4

●悠太 その4


○ホテル リッチモンド 鏡張りの部屋


東「じゃあ私、シャワー浴びるから。逃げたらすぐ分かるからね」


シャワールームに入る東

手が震え出す悠太

あたりを見渡す

テーブルにリモコンが置いてある

テレビをつける。ニュース番組で桜まつりの中継が放送されている

東がシャワールームから出てくる

手には携帯電話

髪の毛は一切濡れていない


東「じゃあホテルの前で二人で待ってるから。はい、よろしく。それじゃあ」


携帯を切る


東「じゃ、帰ろうか」

悠太「……え?」

東「友達が会社まで乗せていってくれるって」

悠太「会社って……」

東「SHモータース」

悠太「え……お父さんの……」

東「はい、早く外に出る」


再び手を引っ張られる悠太


悠太「あんた、お父さんの知り合いだったのか!」

東「言ったでしょう。嘘つきだって。あとで分かるって」


ホテルに金を払い、外へ出る東と悠太

するとすぐにサイドカー付きのバイクが止まる

ツバを飲み込む悠太

作業服姿の運転手

ヘルメットを取る田中


田中「絵美、こんな所で何やってるの?」

東「ああ、緊張した。中学生をラブホテルに連れていくもんじゃないね。自分が捕まるところだった」

悠太「絵美って……陽子じゃないの?」

東「東陽子なんてその場で浮かんだ適当な名前。本名な黒田絵美。これでも半年前は二十キロ以上太ってたんだからね」

悠太「え……?」

田中「絵美、ごめんな。マスターの奥さんに連れて帰るように頼まれたんだけど忙しくってつい頼んじゃって」

絵美「いいのいいの。面白かったから」


回想

家を飛び出していく悠太

電話をかける母親


田中「無茶しちゃいけないよ。何でラブホテルなんか」

絵美「大人の世界を見せたかったの」

田中「だからってそんな演技しなくても。ラブホテルなんか行ったこと無いくせに」

絵美「バレてた? 私、女優になれるかもね」

田中「悠太くん。帰ろうか。それともお父さんに会う?」


視線をそらす悠太


田中「ごめん、私も嘘ついた。お父さん、今は仕事の都合でいないから。お母さんに会いたくないのならとりあえず仕事場まで行くけど」

悠太「……分かったよ」

絵美「まあちょっとやり過ぎたかもね。ごめんね、悠太くん」

悠太「てめぇ……」

絵美「晶。悠太くんに大人の世界を見せてあげて。どうやら自分が子供扱いされるのが嫌みたいで」

田中「大人ねえ。考えてみる」

絵美「とりあえず悠太くんはサイドカーに乗って」


観念して黙って乗り込む悠太


田中「絵美はどうする?」

絵美「私は家にそのまま歩いて行くよ」

田中「そうか。じゃあまた」

絵美「またねー」


バイクをふかす田中

走り去っていく


○バイクショップ SHモータース

サイドカーつきのバイクが敷地に入っていく

エンジンを止めて、降りる二人

ヘルメットを取る田中


悠太「あの……送ってくれて、ありがとうございます」


ぎこちなく挨拶する悠太


田中「悠太くん、ちょっとこっち来て。まだ時間あるでしょ」

悠太「……はい」


黙って田中についていく悠太


従業員「田中、遅かったな」

田中「ちょっと色々あったんですよ」

従業員「よう、悠太くん」


ペコリと頭を下げる悠太


田中「悠太くんはここには来たことある?」

悠太「何年か前に来たきりで」

田中「そう。……絵美とは随分楽しそうに喋ってたのに、どうしたの」

悠太「いや……この場所でそういうことは」

田中「知ってる人もいるわけか」


コクリと頷く悠太

歩いた先に壊れかけたバイクが一台置いてある


田中「そこら辺に座ってて。ジュース買ってくるから」


そのまま走っていく田中

言われた通り悠太はその場に座る

周りを見渡す

作業服姿の従業員がバイクを直したり、お客さんと交渉をしている

皆、一心不乱に働いている


田中「はい、コーラでいい?」


コーラを渡してくる田中


悠太「どうも」


コーラを開けて飲む

バイクを直し始める田中


田中「今日大変だったでしょう」

悠太「それは、もう」

田中「あんまり子供扱いされるのが嫌なんだってね」

悠太「……背も低くて馬鹿にされるし、そのせいで子供扱いされるのが嫌で」

田中「お母さんとか友達とか?」

悠太「うん」

田中「お父さんは?」

悠太「……子供扱いはしないけど、あんまり話せなくて。たまに怒られるから怖いし」

田中「ちょっと前に言ってたよ。息子が反抗期だからつい怒っちゃうって。でもお父さんは結構心配してたな。このままずっとグレたりしないだろうかって。怒りすぎちゃうことも反省してた。反抗期なんて誰にでも来るから仕方ないのにって」

悠太「ふーん……」


コーラをぐびっと飲む悠太


田中「家族は好き? お父さんやお母さん」

悠太「うーん……嫌いじゃないけど、どうしてもムカつくし……」

田中「それが正しいんだよ、きっと。普段から子供扱いしてたり、かと思えば大人でしょ、って言われたり。どっちなんだよ! って思うでしょ」

悠太「うん。本当にそう」

田中「悠太くんはお父さんとお母さんとは違うから。段々自分の考え方が出来上がっていく時期だから。でもまだまだ不安定。大人と子供の間。でもね、これから変わっていくと思うよ。あの憎たらしいお姉ちゃんも本当太ってたからね。同じクラスの男の子が中学校通っただけで三十センチ伸びたこともあったから」


コーラを飲み切る


田中「たまにここに来なよ。お父さんとお母さんに話せないこと話してもいいから。暇つぶしになるし」

悠太「……うん。……あんたは大人だね」

田中「どうして?」

悠太「落ち着いてるし、怒らないし、子供の話を聞いてくれるし、アドバイスしてくれるし」

田中「怒るし、騒ぐときもあるけどね。ただ多分誰かに聞いて欲しかったんだろうなって感じたから話をしただけ」

マスター「ただいま」

従業員「おかえりなさい」

マスター「おお、悠太。元気か?」

悠太「……うん」

マスター「ちょっとまた大きくなったか?」


はっとする悠太


悠太「そういえば身長、少し伸びてた」

マスター「いいことじゃねえか」


ニコニコ笑うマスター

悠太はうつむくも恥ずかしそうにしている


マスター「悠太、ちょっと来てくれ。それと田中ちゃん」

田中「はい」

マスター「お客さんだ」

田中「誰ですか?」

マスター「晶って人を探してるって言ってたな。好青年だったぞ。外で待ってるから行ってこい」

田中「そうですか」

マスター「悠太、行こうか」


立ち上がる悠太

マスターは店の奥へと歩き出す

すれ違って店の外に出る田中


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